「演じること」を深めるきっかけとなった作品。
―お二人が共演されたのはドラマが最初だったそうですね。
新原: 3年前のテレビドラマ『なれの果ての僕ら』ですね。作品自体が殺伐とした世界観で、ぼくらは二人で駆け引きのあるシーンが多かったんですよね。お互いがキーポイントになって、そこから二人がどんどん豹変していくような場面を、話し合いながらつくっていきました。
中村: そうだったね。でも今日久々に会ったら、2、3年ぶりなのに全然そんな感じしなくて。
新原: ぼくも、当時と全然変わってないなって思いましたね。
―その後、それぞれ印象的なお仕事はありましたか。
新原: 舞台の『インヘリタンス-継承-』という作品が、自分のなかでターニングポイントになっています。全編とおすと6時間半あるんですが、その時間をずっと役として生き抜くという重みがあって。しかも、ただセリフを覚えるのではなく、カンパニー全体で座学から入ったんですよ。2016年から18年頃のニューヨークが舞台なので、その時代を取材されていたジャーナリストの方を呼んでいただいて学んだり、LGBTQ+やエイズを扱う作品だったので専門家に正しい知識を教えていただいたりして。本当に、知識を入れた上で役を生きるという機会を与えてくれた作品でした。
―座学からというのは、なかなかない経験ですよね。
新原: 幸運な出会いでしたね。自分のなかで考えを煮詰めるより、みんなで意識を共有してとにかく役を生きるという感じで。その作品で「第32回読売演劇大賞」の杉村春子賞をいただいたんですが、顔が瓜二つの二役を演じながら、彼らの人生を全うしなければという責任感と、演出家や共演者との掛け合いの楽しさのなかで、「お芝居とはなんだろう」というものを見つめ直すことができました。映像は自分の熱量をミリ単位まで縮めてカメラのレンズのなかに収める作業だとしたら、舞台は逆に前へ前へと放出し続けなければいけない。その違いをこの作品で体感できたのが大きかったですね。
中村: 私は昨年2月に映画に出たことが転機です。それまではドラマが中心で、コメディーなど大衆向けの作品が多かったんです。それが好きだったし、そういうジャンルで活躍できる役者になりたいという気持ちがありましたし、映画自体に出られる機会もなかなかなくて。ですが、オーディションを受けて出られることになった映画が、繊細なテーマを扱った、自分がこれまで出会ったことのない役柄だったんです。準備期間が長くて、監督と相手役とコミュニケーションを取り合いながら、その会話の延長線上にお芝居があるような環境でやらせていただきました。
―ドラマとはまた全然違う現場だったんですね。
中村: 全然違いました。ドラマは撮影が進むスピードが早いので、いかに監督が求めることに素早く反応できるかということに注力していましたが、その映画の現場はとにかく丁寧で。自分はもしかしたら映画向きじゃないかもしれないと、入る前は勝手に決めつけていたんです。でもそこで、いままでの自分のお芝居の向き合い方が自分中心になってしまっていたのかもしれないということに気づいて、その現場では相手に重きを置いてお芝居ができたというか。これがもしかしたら本当の「演じること」なのかなという感覚を、はじめて掴めた気がしました。自分を決めつけすぎず、もっと幅広くやっていきたいと思えるようになった現場でしたね。