PROFILE
1974年生まれ。98年に是枝裕和の監督作「ワンダフルライフ」で映画初主演。以降映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。また映画館を応援する「MINI THEATER PARK」、アパレルブランド〈ELNEST CREATIVE ACTIVITY〉ディレクター、サステナブル・コスメブランド〈Kruhi〉のファウンダー、農業法人アーセンキッチンを立ち上げ循環型自然農でKruhiの自社の農園を育むなど、その活動は多岐にわたる。
Instagram:@el_arata_nest
フィールドワークからはじまるコラボ。
——今回、〈グリーナブル〉さんとのコラボレーションが実現しましたが、オファーをいただいた時のことを教えてください。
井浦: 最初にお話をいただいた時は、「真庭市で〈グリーナブル〉と一緒に何かできないか」という、ざっくりとした直球のオファーでした(笑)。
ぼくら〈エルネスト・クリエイティブ・アクティビティ〉(*以下、エルネスト)もいろいろな地域とのコラボレーションのお話をいただくことはあるんですけど、そう簡単に動けるわけじゃない。大きなお金が動くし、たくさんの人が関わってくることなので、やっぱり何より大切にしているのは「共感できるか」なんです。心からいいなと思える共感がないと、動けない。
そこで〈グリーナブル〉さんのコンセプト「持続可能な人の営みを、自然の中で考える。」を聞いた時に、その自然共生というテーマや、地域の課題にしっかりと向き合う姿勢が、〈エルネスト〉やぼく自身が大切にしていることとものすごく合致するものがあって。
だったらまず、自分たちらしく、旅をして、フィールドワークしながら学んで、そこから何かが自然と生まれてくるような形でやっていけたらと。そういうイメージがすっとできたんですよね。これはいい仕事ができるんじゃないか、と最初から感じていました。
——実際に蒜山を訪れてみていかがでしたか?
井浦: 岡山県はいろんな地域に行ったことがあります。真庭市蒜山も美術番組の収録で一度訪れたことがありましたが、地域の歴史や風土や自然は知らなかったので、改めて伺ってしっかりと学びたいと思いました。
フィールドワークが好きで、その土地の地形や歴史、文化、人々の暮らしを体感しながら学んでいく。旅の最初はまず博物館に寄って、真庭市がどういう経緯で人が住み、文化が広がっていったのかという歴史の流れを学びました。その中に自然と、ガマ細工の歴史も入ってくる。
実際には、2025年7月に2泊3日で訪れて、盆地の底から山の頂上まで、ありとあらゆる場所をフィールドワークしました。晴天に恵まれて、どこを見ても山々に囲まれた緑と青が飛び込んでくる。ガマ細工の作り手の方々のところに伺って直接お話を聞いて、問題を含めて本当に知らないことだらけだと思い知らされたんです。
——蒜山のガマ細工には、どんな問題意識を感じましたか?
井浦: 日本の伝統的な手仕事の現場に行くと、必ずと言っていいほど同じ2つの問題に突き当たります。原材料の不足と、後継者がいないということ。これは全国どこでも共通する課題です。
ガマ細工も天然素材を使った工芸品ですから、まさに自然との共生の中から生まれてきた仕事なんですよね。生活のために、暮らしのために必要だから生まれてきた技術。でも気候変動によって気温が上昇し、原材料が育たなくなって、じわじわと追い詰められている。
そして後継者の問題。ぼくからしてみると、こういう技術はどんなトレンドよりもかっこよくて素敵に輝いているプロダクトだと思うんですよ。なのに、意外と日本人がそこに目を向けていない。むしろ海外のハイブランドの方が日本のそういった技術に興味を持ってコラボレーションしていて、そうなると日本人がわかりやすく飛びつく、という(苦笑)。
でも、いちばん力があるのはやっぱりオリジナルなんですよね。だからこそ、このコラボレーションが少し伝わりやすい入口、窓のようなものになれたらと思っています。