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NYでアートブック三昧。

NY ART BOOK FAIR 2017 REPORT

NYでアートブック三昧。

9月22日から24日までの3日間(正確には、プレビューの21日を含めた4日間)、NYのロングアイランドに位置する、MOMA Ps 1にて“NY ART BOOK FAIR(以下、NYABF)”が開催されました。今年で12回目の開催となる“NYABF”は、写真集からzineはもちろん、さまざまなアートブックにまつわるアイテムが、世界中の35以上の国々の大小さまざまな出版社や書店によって販売される、まさにインディペンデントなアートの祭典です。早速、世界中から好事家が集まったこのイベントをレポートしていきます。

  • Photo_Shunsuke Shiga
  • Text_Maruro Yamashita
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9月22日から24日までの3日間(正確には、プレビューの21日を含めた4日間)、NYのロングアイランドに位置する、MOMA Ps 1にて“NY ART BOOK FAIR(以下、NYABF)”が開催されました。今年で12回目の開催となる“NYABF”は、写真集からzineはもちろん、さまざまなアートブックにまつわるアイテムが、世界中の35以上の国々の大小さまざまな出版社や書店によって販売される、まさにインディペンデントなアートの祭典です。早速、世界中から好事家が集まったこのイベントをレポートしていきます。

世界最大級のアートブックフェア。

昨今のユースカルチャーブームも追い風となり、これまで以上にメディアで取り上げられることも多くなってきたzineカルチャー。内容はもちろん千差万別ですが、装丁もまた然り。コピー機とホッチキスのみでつくり上げたようなプリミティブなものから、印刷所できちんと印刷から製本が行われたもの、はたまたアーティストのハンドメイドによるリミテッドなものまでが所狭しと並びます。

ユースカルチャーと結びつくzineカルチャー。

日本で言うところの同人誌的な存在として生まれたzine。その発祥とされるものには諸説がありますが、80年代にパンクやスケートボードのカルチャーと結びついたことによって、zineというメディアが若者に根付いたということは、間違いのない事実でしょう。マーク・ゴンザレスがつくっていたような、ドローイングやポエム、写真などが混在した自由なもの。その精神を受け継ぎ、他の何かから影響を受けた、アーティスト個人や小さな出版社が、日々自分たちがおもしろい、あるいは表現したいと思うものをつくり上げているというのが、現在のzineカルチャーを巡る状況だと言えます。

インディペンデントなブックストアとして、 世界中のアーティストやリトルプレスの聖地となっている、NYの「Printed Matter, Inc.」が主催する“NYABF”は、いまや世界中で開催されているアートブックフェアの中でも最も大規模なもののひとつです。開催場所である、Moma Ps 1は元々小学校だった場所を改装した美術館。趣のある元校舎内を全面的に使用した展示や、世界中の書店やパブリッシャーによるブース販売は勿論、屋外にインディペンデントなブースがひしめき合うテントゾーンと有名パブリッシャーが数多く並ぶドームゾーン、8 ball zineが取り仕切る小さなテントゾーンまで、とにかく一日で回りきるのは到底不可能な規模!

数え切れないくらいのブースがそれぞれ大量の商品を出品していたり、さまざまなワークショップが開催されていたりと、“NYABF”ビギナーの筆者にとっては、どこから手をつけたらいいのかと慌てふためいてしまうほど。そんなときは一度、心の中で整理をすべく、中庭でビールを呑みながらKNOW WAVEの面々のDJやOnyxCollectiveのライブに耳を傾けたりするのもオススメです。しゃかりきにならず自由に楽しむのが、この膨大な情報量の“NYABF”を楽しむコツなのかもしれません。

〈パワーズ〉を手掛けるエリック・エルムズ。アンドプレスという自主出版レーベルもマイペースに運営中。

ドイツを拠点に活躍するアーティスト、ステファン・マルクスのブース。zine以外にも、多数のドローイングの原画を販売していた。

ヘビータイムブックスのブースには、〈ブレインデッド〉のグラフィックも担当するアーティストであるエド・デイビスが。

LAの写真専門のパブリッシャーであるデッドビートクラブのお二人。向かって左から、クリント・ウッドサイドとダン・モニック。二人とも素晴らしい写真家。

その強烈な世界観で日本にもファンの多いハンバーガーアイズには、ボスのレイ・ポーツとアンドレアが。

世界各国のアーティストと製作した、圧倒的なクオリティのzineの数々を携え、日本から参加したコミューンのお二人。

世界のファッションシーンから注目を受けるブースの数々も。

個人的に注目していた出店者の一部をここでご紹介します。数々のブランドに携わり、現在は〈パワーズ〉を手掛けるエリック・エルムズ、過去には〈ヴァイナル アーカイブ〉ともコラボレーションし、〈コム・デ・ギャルソン〉の18S/Sのアイテムにもアートワークを提供しているアーティストのステファン・マルクス、人気ブランド〈ブレインデッド〉のアートワークも手がけるアーティストのエド・デイビスによるヘビータイム ブックス、過去にフイナムでもインタビューが掲載されている、LAのデッドビート クラブ、サンフランシスコのハンバーガーアイズ、日本から圧倒的なクオリティの高さのzineを携え出店していたコミューンなどなど。名前を挙げ出せば、枚挙にいとまがありません。写真はありませんが、コペンハーゲンのV1 ギャラリーはこの“NYABF”に向けて、バリー・マッギー、アリ・マルコポロス、マット・ダムハブなどのビッグネームなアーティストたちと数多くのzine制作しており、終始ブースも賑わっていたのが印象的でした。

このようなアートブックフェアの楽しみのひとつとして、つくり手であるアーティスト本人やパブリッシャーと直接交流が持てるということが挙げられます。アーティスト本人や出版社の方から、zineの内容について話を聞くことは、普通なかなかできません。きっとその体験は、あなたを益々このカルチャーにのめり込ませることになるはず。

自分にとってはスペシャルな何かでも、隣の誰かにとってはまったく価値を持たないものかもしれないもの。エリック・エルムズが今年来日した際に話していた、「zineていうのはパッションなんだ」という言葉を、4日間毎日“NYABF”の会場に身を置いてみて、何度も思い出しました。世間で価値がある、可愛い、かっこいいとされているものを追うだけではなく、自分が好きなものに対してピュアに反応することの大切さみたいなものを考えさせられつつ、世界中から集まったアート好きな人たちの情熱を一身に浴びた4日間でした。

THE NY ART BOOK FAIR

Session:September 22-24, 2017
Place:MoMA PS1
22-25 Jackson Avenue on 46th Avenue, Long Island City, NY
nyartbookfair.com
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