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広島発! 噂の「ザ・トランクマーケット」が盛り上がっているワケ。

The Trunk Market at The Fukuromachi Park HIROSHIMA

広島発! 噂の「ザ・トランクマーケット」が盛り上がっているワケ。

地方創生という言葉があらゆる業界で議題に上がる昨今。ことファッション業界においては、中国地方の大都市、広島で開催されているマーケットイベント「ザ・トランクマーケット(The Trunk Market)」の話を本当によく耳にします。そこまで大規模な会場ではないにもかかわらず、2日間で20,000人を超える動員があるようで、聞こえてくるのはとにかくポジティブな評判ばかり。というわけで、11月11日、12日で開催されたイベントに潜入、発案者であり「The Trunk Market」企画室室長の中本健吾さんにお話を伺ってきました。

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「The Trunk Market」企画室室長:中本健吾さん

ー改めてですが「ザ・トランクマーケット」について色々と聞かせてください。年に2回の開催で今回で9回目ということは4、5年前からスタートしているわけですね。

中本:第一回は2013年の11月です。

ー始めたきっかけを教えてください。

中本:近年、WEBや商業施設の台頭で路面が衰退し、ファッションストリートにもファッション業態以外のお店が目立つ様になり、本来持っている路面文化が失われつつありました。私が若い頃の様なワクワクする路面文化に戻したいという思いからの発想でした。

〈ビズビム〉が表参道のみで展開している「F.I.L. Indigo Camping Trailer」。

〈ロッキー マウンテン フェザーベッド〉は一風変わったドーム型のブース。

ー公園から発信していくというのはどんな思いからなんですか?

中本:袋町公園は街の中心に位置し人も集まりやすく緑も多い気持ちの良い場所なんです。72年前、原爆投下によってここ袋町は爆心地から半径1キロ圏内で最も被害を受けた地域の一つで、多くの尊い命が奪われました。公園内には原爆死没者慰霊碑があり、ここから発信することは、改めて平和な時代に感謝するという点においても意味があると思います。

ー袋町公園の周辺は、元々ファッションに関するお店が多いエリアなんですか?

中本:公園周りにはファッション系のお店はほとんどありませんでした。公園の東側には並木通りというストリートがあり、ファッション系の直営店が軒を連ね、そこを中心として路地に入るとローカリズムなお店が並ぶといった感じでした。近年はその形がどんどん崩れ始め、何かしないといけないと思ったんです。

ーそしてこのイベントが生まれたわけですね。

中本:はい。まず地域の商店組合にお声がけさせて頂き賛同者を集いました。みなさん共感して下さり、声を掛けてわずか2ヶ月で第一回を開催する事ができました。それぞれのプロが役割分担をして全てボランティアで行う画期的なフォーマットが生まれたんです。経費を使わないことによって出店料が抑えられ、県外からもスムーズに出店できることも武器となりました。

公園の目の前にあるカフェ「Park South Sandwich」は中本さんがプロデュース。

ー出店のリーシングは中本さんがされるのですか?

中本:はい。近いところからお声がけをさせて頂き、次第に紹介とか推薦も増えてきました。「今度、こういう面白い人がいるから送り込むね」 という風に、ご紹介いただいたり。私はアパレルだけでなく日用品、道具、家具などの仕事をしている関係からいろいろなジャンルの方々を誘致できました。

ー「トランクマーケット」には物販以外にも、飲食ブースも数多く出店していますね。

中本:はい。マーケットには食は欠かせませんから。食もこだわりのお店に声を掛けさせて頂きました。ミシュランの星を取ったお店、会員しか行けない店、予約の取れない店、本当に看板のないお店に出店して頂きお客様にハシゴして頂く。ワクワクしますよね!

—どの飲食ブースも大盛況ですね。

中本:はい。飲食店さんにとっては、ここに出店することってとてもリスキーだと思うんです。設備の調わない環境で粗相でもあったら店の看板に傷が付くわけですし。でも、みなさん街のために一肌脱いでくれてるんです。本当に頭が下がります。

ーそれだけで人を呼べますよね。

中本:そうなんです。第一回の時、当時「ハニカム」の編集長だった鈴木哲也さんが取材に来られたんです。そのときに「これはユニークでハイエンドな蚤の市だね」と。その言い回しがすごく気に入って、いまではイべントのキャッチコピーにしています。

ーハイエンドで蚤の市、とは真逆のイメージですね。

中本:というのも、出店してくださるみなさんには、とにかく「在庫処分市はやめてください」とお伝えしています。在庫をただ並べるだけだったら、ワクワクしてもらえませんよね。このイベントの為だけに作っモノだったり、自慢のモノを発表するお披露目の場にしてくださいとお願いしているんです。それがどこにも存在しないユニークでハイエンドなマーケットになるんです。

ーたしかに安いものを売りさばくというイメージは「トランクマーケット」にはありませんね。

子連れが多いのもこのイベントの特徴。

中本:あと面白いのが、ライバル関係にあるお店が一堂に会したことですね。出店を口説く際にお話したんですが、「ジャイアント馬場とアントニオ猪木が同じリングに立ったら、東京ドームが一杯になるじゃないですか、だからこの2日間くらい仲良くしましょうよ」って(笑)。

ーたしかに(笑)。

中本:そんな風に各々力があるお店が出店しているので、確信犯ですよね。しかしそれだけじゃないなって最近気づいたんです。本番の前日に、県外からいらっしゃる出店者さんに挨拶に行かせて頂くんですけど、みなさんとにかく楽しそうなんですよ。修学旅行みたいな(笑)。当日も笑顔で設営されています。それってすごく大事なことで、迎える側がこんな空気を作っていれば、お客様もきっと足を運びたくなるはずなんです。

大人気イラストレーター、たなかみさきさんのブースも。

全国各地から集めたクリスマスツリーを並べる、広島の「叢 - Qusamura」。

簡易ステージにてライブも。

—年2回開催というのも、いいペースのような気がします。

中本:夏の顔と冬の顔ってあると思うんです。アイスクリーム屋さんとおでん屋さん、Tシャツ売るところダウン売るところみたいな。一番強いもので勝負して頂きたくて年2回の開催にしています。会場の公園は秋だと紅葉があるし、春だと新緑の季節です。イメージも全然違いますよ。

ー5月と11月に開催されるのは?

中本:そうですね。5月はゴールデンウィーク後の閑散期で梅雨の前。10月はイベントが多いので11月が閑散期で本格的な寒さの前。ここで集客があれば目立つと思いました。それとファッション関係の人が動きやすいところでもあります。

ー海外でのコレクションとかありますしね。

中本:そうなんです。5月と11月ってファッション関係者にとっては1番隙間なんですよね。だから「中本さんのせいで一番落ち着く時期が潰れたわぁ」ってよく言われます(笑)。

ー「トランクマーケット」のことは以前から知ってはいたんですが、回を追うごとに「あれ、良いらしいよ」「あれ知ってる?」みたいなのを色んなところから聞くようになってきて、これは1回見ないとダメだなと。9回目にしてようやく来ることができました。

中本:こうしてメディアで取り上げていただけるのは、本当にありがたいです。

ー出店のラインナップを見ていると、地元広島と県外のバランスがいいですね。

中本:そこは意識しています。近い将来の街の縮図を、このイベントで描いています。全国の強いお店と広島のお店が切磋琢磨することによって魅力的な街になるはずです。

中本さんのお店「ref.」は、試薬瓶と植物を有機的に掛けあわせた「グラスコンテナ」を出品。新作は「グラスコンテナ シリンダー」。

ートランクマーケットに出店されたきっかけで、メーカーさんが路面にリアルショップを出店されてますよね?

中本:広島の路面に魅力を感じて頂き現在までに6店舗出店して頂きました。スムーズに出店できるように物件から、パートナーの紹介とお手伝いさせて頂いています。うちの社員からは「なんでライバルをいっぱい誘致するんですか?」って言われるんですけど「いやいや、オリンピックで世界記録が出るときは8レーン全てに速いランナーが並ぶでしょ、その中に俺たちが残っていこうよ」って言ってます。私どもも負けない様に弊社のブランドを持って東京で展示会を行って、筋肉をつけています。

ー中本さんはずっと広島なんですか?

中本:若い時に広島の路面で刺激を受け東京に行きたくて上京しました。そこから戻ってきて地元のアパレルに入って今に至ります。起業してからちょうど25年ですね。昔はこんなに地元のこと考えてなかったですよ。我が道を行くというか。

ー広島の街をどうしたいですか?

中本:昔のようにカルチャーを感じられるような街に戻したいと思っています。ファッションに関して言えば、今はオシャレをしても行く場所がないと思うんです。「ザ トランクマーケット」にはみなさんお洒落をして来られます。そうやって着飾って出かけることって大事だと思うんです。自分もこんな風になりたいとか、あんな仕事をしてみたいとか、感じるものが絶対あると思うんです。それを感じた若い世代が東京や海外に出てクリエイティブな世界で活躍して欲しいんです。例えばプロ野球やメジャーリーグで広島出身者が活躍するみたいな土壌を作りたい。地元で活躍する人もいれば、黒田(元カープ)のように広島のために戻ってくれる人もいてそれでなお優勝する、みたいな街にしたいです。

ーそのベースをトランクマーケットから作りたいわけですね。

中本:はい。「ザ トランクマーケット」を始めてから「中本さんは新しいことやってますね」ってよく言われるんですけど、全然違います。やってることはものすごくアナログだし、昔に戻しているだけです。デジタルに勝るものはアナログだと信じています。

ー東京でバリバリ働いているクリエイターも、40代になってくると自分が育った街に対して何ができるか、という気持ちになるみたいですね。

中本:絶対そういうのってあると思います。広島をいいモデルケースにしたいですね。今までって東京の次が広島ってならないしゃないじゃないですか。それを僕は広島を東京の次にクリエイティブな街にしたいんです。東京は絶対王者“ジャイアンツ“で、広島はカープと同じでお金はないけど知恵と汗をかいて優勝を目指すみたいな街が良いと思うんです。それに今追い風も吹いています。オバマ前大統領が一昨年、現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島 を訪問し再度広島をアピールしてくれました。昨今のカープ人気もあります。

ーあらためて広島に注目が集まったわけですね。

中本:観光で広島を訪れた方が、世界遺産だけでなくショッピングでも楽しめる街なんだと思って頂きたいです。

ー最後に今後の「トランクマーケット」について聞かせてください。

中本:次回は5月19日(土)、20日(日)で決まっています。10回目の節目の開催となり街中を巻き込んで並木通りを歩行者天国にしたり、百貨店の屋上を使ってナイトマルシェができないかと企画中です。イベント自体は年2回で計4日間ですが、4日間のみワクワクするのではなく、365日ワクワクする街を作って、世界から沢山の方々に広島を訪れて頂きたいです。

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