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メディアアート視点で考察する「ナイキ エア」の可能性。

Turning Imagination Into Reality with yang02

メディアアート視点で考察する「ナイキ エア」の可能性。

東京を代表するクリエイターやアーティストが、想像力を掻き立て、「エア」の解釈と新たな表現に挑む「ATELIAIR」がエア マックス デイに向けた大きなプロジェクトとしてスタートしているのはご存知でしょうか? さまざまなワークショップやイベントを通して、コンシューマーが「エア」の新たな可能性の一端に触れることができるという画期的な場所で、「エア」をテーマとした作品を製作する、美術家であるyang02(やんツー)さん。時には最先端のテクノロジーを用い、時にはそのテクノロジー自体に疑問符を与えながら、イマジネーションをカタチにし続ける彼に、自身の創作活動と「ナイキ エア」について話を伺いました。

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本来の意味でのメディアアートを考えている。

ー先ずはyang02さんのこれまでのキャリアについて教えて頂けますか。

yang02:1984年生まれで、2009年に多摩美の大学院を卒業して、そこから今年で9年になるんですが、卒業してからそのままアーティストとして活動し始めました。大学ではメディアアートを学んでいたので、そのフィールドで紹介されることが多いですね。

そういう類の展示に呼ばれたり。ちょうど昨日発表があったんですけど、文化庁メディア芸術祭のアート部門で優秀賞を頂きました。

ーそうなんですね! おめでとうございます。ちなみに、メディアアートというのは、具体的には普通のアートと何が違うんですか?

yang02:ざっくり言うと、テクノロジーを使ったアートです。もう少し詳しく話すると、アートという概念は西洋から輸入されてきたものという前提で、メディアアートも同じく西洋から輸入されてきたフォーマットです。

ファインアートで従来使われて来た、メディウム、例えば絵の具だったり鉛筆だったり、木とか石とか、そういうものではなくて、新しいメディアを使った芸術表現というのが本来の意味だったと思います。

既存の枠を壊すという意味でのメディアアートというものが生まれて、既に誕生してから20、30年くらい経っていて、最近では日本でかなり盛り上がって来ています。けど、今日本で盛り上がっているものは、すごくエンターテイメントの要素が強いものが多いと思います。

僕はそういう日本で共通で認識されているメディアアートとはちょっと違う捉え方というか、本来の意味でのメディアアートを考えているので、新しいメディアを使って、それに対して批判的な姿勢で、それ自体に言及するようなものを製作しています。

ーそれ自体に言及するようなものというのはyang02さんが、その都度で使用するフォーマットやメディアに対して、なぜ自分はこういうものを使って製作しようとするのか? と自問自答しながら作品を製作し、その自問自答自体を作品に反映させるということですか?

yang02:そうです、まさにその通りです。

自分の根っこは、グラフィティとかストリートアートにある。

ーもともとyang02さんが影響を受けたものや、アートに興味を持つきっかけとなったものはなんですか?

yang02:高校の時のグラフィティとの出会いが最初です。僕は出身が神奈川県の茅ヶ崎なんですけど、たくさんグラフィティがあったんです。数でいうと東京ほどではないんですけど、いいスポットが沢山あって、プロダクションピースっていう、グラフィティライターのクルーがみんなで時間をかけて描く、クオリティの高いミューラルが当時は沢山ありました。

お金も無い高校生から大学1、2年の頃とかって、美術館という少し権威的で偉そうに映る存在はどうしても抵抗したくなったり。懐疑的に感じてしまう。それよりも、タダで、しかも外で見れる、もっとかっこいいものがあるじゃん! という感じでしたね。

なのでグラフィティへの興味から美大に入って、そこからアートにも関心を持ちはじめた感じです。今でも自分の根っこは、グラフィティとかストリートアートにあると思ってます。

ーその時代なら、桜木町のウォール(※JRの高架下沿いにグラフィティが描かれた壁が延々と続いており、当時ちょっとした観光スポットに)もありましたもんね。

yang02:そうです。実はあそこが無くなる時のイベントにも参加していて。コンポジションていうNPOの団体が運営していたもので、そこの人と仲よかったんで、参加させてもらったりして。それくらいどっぷり、なんなら大学4年くらいまではメディアアートもあんまりちゃんとやっていない、不真面目な学生だったんです(笑)。

メディアアートにのめり込んだのは大学院からですね。それまではやっぱり、グラフィティが好きで、写真を撮りに行っては、自分のサイトにアップしてっていうくらいの感じでした。

ーそんなに好きだったんですね!ではKaze Magazine(※99年に創刊された、日本のストリートアートを中心に紹介するインディーズマガジン)とかも…。

yang02:もちろん、もちろん。愛読して、インタビューとかも読んでましたね(笑)。

ーなるほど。その頃は、新しい何かを使って作品をつくったりということもされていなかったんですよね?

yang02:あんまりですね。課題で出すくらいで、意欲的な学生ではなかったので。けど、学科でそういうテクニカルなことを教わる授業があったりして、なんとなく教わってはいて。

大学院に進んだ時にちょうど、グラフィティリサーチラボっていう、テクノロジーを使ってグラフィティライターたちのための新しいツールを開発して、その表現の可能性を拡張しようみたいな集団が2006年に出て来て、それがすごい画期的で当時めちゃくちゃバズったんです。

例えばレーザータグといって、レーザーを使ってビルにタグを打てるみたいなシステムとか、単純にLEDにボタン電池と強力な磁石を取り付けて、それを投げて光でボムするとか、テクノロジーを使って、ストリートをハッキングしていくみたいな人たちで、すごいセンセーショナルで影響を受けたんです。

単純ですが、自分もそのようなことをやってみたいと思い、大学からはテクノロジーを使ったストリートアートみたいなテーマで研究に取り組んでいました。

グラフィティとは様式美である。

ーちなみに、不真面目な学生だったとおっしゃられていましたが、それでもメディアアートを専攻するかたちで大学院にも進まれたのはなぜだったんですか?

yang02:卒業制作は腰を据えて真面目に取り組んだんですが、その作品が教授から評判がよくて一応いい評価をもらえて手応えを感じたんです。同時にテクノロジーが少し扱えるようになってきたという手応えもあって。

技術が身につくことによってアイディアが数珠つなぎに生まれてくる感覚があったり。そこでこのまま卒業するのも勿体ないなって思って、大学院に進みました。

ーテクノロジーによってできることが拡がったり、拡張されていくことにより、アイデアが膨らんでいく感覚というのは、現在yang02さんが製作を行う上で、ベースとなるような面白さの感情なんでしょうか?

yang02:それが、最近では逆に、テクノロジー自体を批判的に考えるようになってしまっています。作品をつくるたびに新しい技術が身につき、高度なテクノロジーを扱えるようにはなっていくんですが、逆に今度はテクノロジーを使わないとつくれないのかと疑問が生まれるようになって来て。

電気が使えないと表現できないというのは、それはそれで想像力が貧しい。なので、最近は、あえて1からテクノロジーを使ってロボットをつくるようなアプローチではなくて、例えば扇風機などの動く家電や動くおもちゃなど既存のものをそのまま使って、その既製品がもともと持っている動きをそのまま用いたドローイングマシーンの制作を行っています。

つまりメディアアート的な常套手段は一切使わずに、いわば専門知識を持ってなくても、誰しもがつくれるものです。この先は、最先端のテクノロジーを使う作品群と、そうではなくプリミティブなアプローチによるテクノロジー批判、メディアアート批判みたいな考え方であまりテクノロジーを使わないやり方、両方やっていこうと思っています。

ーyang02さんの作品は、完成形を具体的にイメージせずに描かれた作品が多いのかと思いますが、アットランダムに描くことの意味や狙いを教えていただけますか?

yang02:グラフィティをずっと追って見ていて、気付いてしまったのが、これは様式美だということだったんですね。スタイルウォーズ、スタイルが無いとストリートでは死ぬみたいなことが言われている割には、皆それぞれそれらしいスタイル、模倣であることが多い。

例えばバブルっていう泡みたいな装飾だったり、クラックというヒビ割れだったりとか、文字もAからZまで崩し方があって、この崩し方がナウいみたいなのもある。Sは今だったらこう崩すのが洒落ているのか、とか(笑)。

そういう様式美だということに気付いてしまって、そういった表現の内部にある構造が椹木野衣という批評家の『シミュレーショニズム』という本に、DJサンプリング/カットアップ/リミックスという手法になぞられて分析的に詳しく書いているんですけど、要はそういうことだったんですね。

分かりやすく言うと、パクリの応酬じゃないかと。それを踏まえて考えると、タグってもはや普通の人は読めないものなのだから、読める文字というところに本質はなくて、勢いよく描かれるストロークのダイナミズムに本質があるんじゃ無いかと考えて、ああいうランダムに動くドローイング装置をつくったんですね。

二重振り子を利用したドローイングマシーンの場合だと、本当に街に描かれているようなタグに見えちゃったりして。

ー自然と文字として捉えようとするってことですね。

yang02:そうなんですよ。だから、作品は作者が意図的につくったものでなくても、鑑賞者がそう見てしまったら作品になってしまうという構造があって、そこに自分はアプローチしようとしていたんだなと、あとになって自分でも分かったんですけど。

だから、ランダムなもののなかから規則性とかを見出してしまう人間の習性自体が、鑑賞するっていう行為だったりするんですよね。

僕たちの世代は〈ナイキ〉には特別な想い入れがある。

ー今回〈ナイキ〉から”ATELIAIR”への参加のオファーを受けた際の率直な感想は?

yang02:〈ナイキ〉といったら、僕ら世代は特別な思いが誰しもあると思うんで。ちょっとヤンチャな人だったらやっぱり。僕、バスケ部だったんですけど、やっぱり〈ナイキ〉のバッシュを履いて、ジョーダンを見てって感じで、どうしてもあのロゴを見るだけで胸がときめく、あの頃を思い出すみたいな効果があると思うんですよね。

なので、ついに来たかっていう(笑)。やっぱり嬉しいですよね。憧れていた〈ナイキ〉と仕事ができるというのは。正直、久々に〈ナイキ〉のスニーカーを履いたんですけど、ものすごい軽くて、履き心地がよくなってますよね。

テクノロジーの進化が、きちんと形になっているんだなと実感しました。

ーこの”ATELIAIR”で製作して頂いている、「エア」をテーマにした作品はどのようなものなのでしょうか?

yang02:2015年に、ドローンを使った作品をつくっていて、本当はそういうのができればよかったんですけど、エアなんで(笑)。今回提出するやつは、バネで飛び跳ねるような動きのドローイングマシーンで、重力に逆らうような感じのものなんで、そこがエアというテーマに合っているかなと。スプレーで描くやつなんですけど。

もう1つは、ペンでゆっくりドローイングしていくやつで。2つのドローイングマシーンを用意しています。

ー今回のエア マックス デイのテーマが、“想像にカタチを”(Turning imagination into reality )なんですが、yang02さんの作品は、実際にカタチにするまで、正確なイメージを思い描けないのがおもしろいですね。

yang02:そうですね。実際、つくるプロセスの中でも予期せぬエラーみたいなものがあったりするので、そういうのを採用していくんですね。そうすると、最初のアイデアからどんどん変化していくんです。だから実際にアイデアを形にしていくことは僕にとってとても重要なことなんです。

yang02(やんツー)

1984年生まれ。神奈川県茅ヶ崎市出身、美術家、大学講師。
yang02.com

ATELIAIR (アトリエア)
参加クリエイター: ALEXANDER JULIAN, BIEN, HOUXO QUE, KENICHI ASANO, KOTA IGUCHI, MAGMA, MAITO OTAKE, MEGURU YAMAGUCHI, YANG02, YUDAI NISHI etc.
日程:3月17日(土) – 3月25日(日)
時間:17日(土)12:00〜20:00 18日(日)〜25日(日) 11:00〜20:00
場所:東京都渋谷区神宮前6-19-21
入場料:無料
INSTAGRAM:@ateliair_tokyo
CLASSROOM (クラスルーム)
日程:3月21日(水) – 3月24日(土)
場所:東京都渋谷区神宮前6-19-21
参加料:無料(エントリー制)
TYO ON AIR (東京 オン エア)
日程:3月25日(日)
時間:11:00 – 20:30
場所:東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ 本館B3F スペース オー
入場料:無料(事前登録制)
※各プログラム詳細、参加登録、エントリー方法については、下記特設ページをご覧ください。
nike.jp/sportswear/air-max
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