monessay ─ 寿司とシュプリームとリーバイス

monessay ─ 寿司とシュプリームとリーバイス

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」。ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。第一回は〈リーバイス®(Levi’s® )〉の「501」と「TYPE II JACKET」。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta
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第一回 寿司とシュプリームとリーバイス

題の飲食店へ行くことが、このところ多くの人の関心ごとのようだ。ネットでグルメ情報が簡単に出回るせいか予約困難店が続出し、数ヶ月待ちはおろか数年待ちというのも珍しくない。特に少人数だけが座れるカウンターだけの寿司店が顕著。月の決まった日時に一斉に電話をかけ、やっと繋がったと思ったらすでに席は埋まっているなんて話もあちこちで聞く。そんな店の席はプラチナシート。接待やデートにはもってこい。そういうわけでこの循環は当分断ち切られそうにない。

くいう自分もたまにはそんなプラチナシートのご相伴にあずかる。先日札幌で行った寿司店もそういう予約困難店のひとつ。紹介してくれた人物はこの店が日本一の寿司屋で、つまりそういうことで世界一と絶賛する。

うした予約困難寿司店の多くは30代の若い人がやっていることが多い。この店の主人も例に漏れず若い。だからか情報収集の手段がどうやらネット主体。話していてそう感じた。寿司やネタはいうに及ばず、包丁や食器にまで関心が高く研究熱心である。

た若いからか旧来の仕事とは違うやり方にも抵抗はないようで、新しくクリエイティブなしつらえもいろいろしているようだ。秋には松茸とトロを組み合わせた「松トロ」を味わいに全国から予約が殺到するらしい。

らに煮切り醤油の容器は〈バカラ〉のクリスタル、日本酒の猪口には〈シュプリーム〉のボックスロゴが。江戸前ガンコ親父の寿司屋ではあり得ない組み合わせだったりする。

ぶん客は古くからのしきたりに縛られた窮屈なスタイルの寿司よりも、こうした進取の気性に富んだ食事経験を新鮮に感じるのだろう。

くいう自分もそのひとり。銀座の老舗店で凛と張った緊張の中で寿司をつまむのもいいが、また違った寿司の楽しみ方を気づかせてくれるこういうお店も好きだ。

るものの好みも変わった。昔は古着や軍ものが好きでオリジナルに固執してものを集めていた。さすがにサイズが自分に合わないものは買わなかったけど、そのオリジナルがもつ野暮ったいスタイルやシルエットなどはむしろそれが味わいだし、それこそが本物の良さだと信じて疑わなかった。デニムなんて〈リーバイス〉の501しか持ってなかったが、90年代頃の国産デニムブームの頃から国産デニムにも免疫ができ、さらに501のディテールは残し、野暮ったい形を修正したジーンズを履くようになった後、普通の501に戻れなくなった。

リジナル原理主義とでもいう偏屈で保守的な嗜好は年々薄らいできた。そして2年ほど前に新宿のリーバイスストアのテーラーショップで復刻501XXの筒部分を細く改造してもらったものがもうたまらなく良くて、クロゼットのエースで4番になった。というかほぼ毎日履いているので例えるならクローザーの方がいいか。

かしこのモデル、しかしこのモデル、ノンウォッシュ、つまりリジッドで作ったので洗濯機で洗濯できない。言わずもがな水に入れると格段に縮むのだ。そしてやはり欲が出てガンガン洗える同じモデルが欲しくなり〈リーバイス〉に作ってもらった。

1955 501® RIGID ¥30,000+TAX、カスタム工賃「テーパード」¥5,000+TAX、カスタム工賃「ウォッシュ」¥500+TAX

いでにジージャンも。いわゆるセカンドモデルの復刻でこちらは特に手は入れてない。さすがにいま上下を同時に着ようとは思わないが、季節的(いま4月)に毎日どちらかを身につけている。

TYPE II JACKET RIGID ¥48,000+TAX、カスタム工賃「ウォッシュ」¥500+TAX

ういえば10代の頃初めて買ったジーンズが〈リーバイス〉。昔もいまも服装の基礎というか出発点はずっと501。ジーンズに合うシャツ、靴、スニーカー。そんな視点でいつも買い物をしている。

れがいいかはわからないけど、迷子にならないし、服装に悩まない。

んでもそうだが基礎がしっかりしていれば、その後どう道を踏み外してもいつでも元に戻れる。寿司屋も同じ。ああ、寿司くいて。



蔡 俊行

フイナム発行人 / フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社

電話:0120-099-501
levi.jp
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