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FEATURE|monessay ─ エクスプローラーとビルケン

monessay ─ エクスプローラーとビルケン

monessay ─ エクスプローラーとビルケン

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」。ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。第二回は〈ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)〉の「チューリッヒ」。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta
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第二回 エクスプローラーとビルケン

集の仕事を始めた二十代中盤。この道に導いてくれた先輩から香港に誘われた。香港特集を担当した直後で、また行きたいから付き合えと。

日夜、打合せからの流れで未明まで飲み、帰宅したのは午前3時過ぎ。10時の飛行機まで時間はあると仮眠したのがまずかった。箱崎での待合わせの時間を大幅に過ぎ、8時になっても現れないぼくに電話してきた。こちらはまだ夢のなかである。

てた顛末とその後のドタバタを書くとスペースが足らないので、それはいずれ。ともかく日個連のタクシーを飛ばして20分前にチェックイン。なんとか間に合った。もうひとりの参加メンバーも入稿が間に合わず、翌日から合流と、どいつもこいつも状態の珍道中となった。

地では先の取材のコーディネーターが案内してくれた。この先輩が野良犬に歩み寄り、かわいいなんて喉をゴロゴロしていたら、それはダメという。衛生面? ではなく美味しくないからだそうだ。カルチャーショックな80年代なのであった。

沙咀(チムサーチョイ)のネイザンロードにロレックス専門店があった。たぶんまだあると思う。そこで〈ロレックス〉のエクスプローラー1が売っていた。当時のレートで換算すると11万円くらい。いまこのモデルの中古が100万円近くするというから隔世の感。

かし、当時20代の若者にとってその金額はさらりと乗り越えられるものではなかった。佐藤康光棋士並みの長考が必要な買い物である。

は潮州料理店で名物という太極スープというほうれん草と鶏肉のスープを楽しんだ。スターフェリーニで何度も香港島を往復したり、アンティークマーケットに行ったり。でも心のなかに引っかかりはずっとあった。

泊の滞在を終え、帰国した。ロレックス? もちろん投了である。

して東銀座での普段の仕事に戻った数日後、Mさんという先輩編集者が香港へ遊びに行くという。そして帰ってきたばかりのぼくにどこが面白いのと聞いてきた。

ったお店やコーディネーターが紹介してくれたところを説明したりした後、やはりどうしても諦めきれず先輩に頼んだ。ネイザンロードにある時計店で買ってきてくれませんか。

図を書き、だいたいこのへんとあたりをつけ、店名を書いた紙切れを渡した。

日後、先輩が出社してきた。

や全然店がわからなかった。お前が書いた店名の店はなかった。時計屋は確かに何軒か並んでるけどそんな名前の店は見当たらない。何度もあのあたりをうろうろし、もしかしてここだろうという店に入ったらたまたま売ってたから買えたという。

れは申し訳ないことをした。地図がちょっと違っていたのかもしれない。でもブツはちゃんと受け取れた。

でそんなやりとりを聞いていた副編が頭の上の電球が灯ったような顔で聞いてきた。

れ、なんていう店?

ーリックです、とぼく。

ばらく考え、そしてニヤリとしながら、それもしかしてチューリッヒじゃない? スペルはZから始まってさ。

元のワランティにも確かに“Zurich”とハンコが押されている。

、これでチューリッヒなんだ、と足元の〈ビルケンシュトック〉を見ながら、これで香港歩いたななんて思い出していた。

チューリッヒ 各 ¥14,000+TAX

蔡 俊行

フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

ベネクシー / ビルケンシュトックカスタマーサポート

電話:0120-206-450
ec.benexy.com

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