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古着の新しい解釈によって生まれたハイブリッドなデニムセットアップ。

N.HOOLYWOOD × SEVEN BY SEVEN

古着の新しい解釈によって生まれたハイブリッドなデニムセットアップ。

日本のファッションシーンの先頭を走り続ける〈N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)〉と、ブランド創設からわずか4年ながら確かな存在感を示す〈セブンバイセブン(SEVEN BY SEVEN)〉。両者の取り組みにより、なんとも新しいハイブリッドなセットアップのデニムが誕生しました。どちらのブランドにも“古着”というキーワードが見え隠れしているわけですが、今回のアイテムも、そんな古き良き時代の服をベースにデザインされています。とはいえ一筋縄ではいかないのが両ブランドのクリエーション。ということで、その奥深き世界を〈N.ハリウッド〉の尾花大輔さんと、〈セブンバイセブン〉の川上淳也さんに語ってもらいました。意外性のあるコラボレート、その根源にあるものとは?

  • Photo_Shinji Serizawa
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta
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左:〈N.ハリウッド〉デザイナー尾花大輔さん、右:〈セブンバイセブン〉デザイナー川上淳也さん

お互いが感じるアメリカ、そして古着。

〈N.ハリウッド〉と〈セブンバイセブン〉がコラボレートをしたという話を聞いて、意外だなと思いました。おふたりでメディアに出ることもなかなかなかったと思うんですが、そもそもどんな繋がりがあるんですか?

尾花もともと彼の先輩にあたる人物がぼくの親友で、その繋がりですね。なので、結構前から知ってはいました。とはいえ、淳也くんとはもう10年くらい会ってなかったんです。そうしたらある日、うちのデザイナーアシスタントが「渋谷におもしろいお店ができたんで行ってみませんか?」って言うもんだからそこに足を運んでみたら、彼がいたんですよ。

渋谷にある「7×7(セブンバイセブン) 」ですね。

川上そのとき、かなり久しぶりにお会いしましたよね。ぼくは雑誌などで一方的に尾花さんを拝見していましたけど。たまたまの再会でしたが、来てくれたからにはなにか爪痕を残したいな、とそのとき思いました(笑)。

おふたりとも“古着”がご自身のルーツにあると思うんですが、尾花さんは川上さんのクリエーションを見て、どんなことを感じましたか?

尾花彼は古着に対して人とは違う角度で接していて、それに正直に向き合っているのがよくわかるんです。すっぱい古着というのかな? もしくはすっぱい目線を持っているというか。昨今のデザイナーにはそういう角度で古着を見つめている人っていないなぁ、と。ぼくと淳也くんは世代が違うし、感じているものもおのずと変わってくるんだけど、なんかいいなぁと思ったんです。

あと、古着への理解の仕方に共感できる部分が多いんだけど、提出の方法は自分と違うところもすごくいいなと思って。例えばリメイクのやり方なんかがそうです。自分も古着のリメイクをやっていたからよくわかるんですが、いまは足し算をしすぎている子が多いし、引き算をしていたとしても手抜きに見えちゃうこともあって。でも彼の作る服はそうじゃなくて、世の中に向けてきちんとした服を提出しているように感じたんです。

川上さんは、いま尾花さんが仰った“すっぱい”感じというのは意識していたんですか?

川上そうですね。ぼくはずっとサンフランシスコにいて、古着の買い付けをやっていたんですが、そのときに人とは違う角度でやりたいというのは思っていました。リメイクに関しても、古着をいじるというよりは古着を材料にして新しいものを作るという感覚なんです。要するに新品を一から作っているつもりなので、それがよかったのかなと思います。

サンフランシスコにはいつ頃行ったんですか?

川上90年代末からです。高校を卒業してすぐに行きました。語学学校に通いながらだったんですけど、たまたま近くにドネーションされた古着が集まる場所を見つけて、そこに出入りするようになったんです。

尾花ボロ屋とはまたちがうの?

川上ボロ屋ではないんですよ。本当に寄付された古着が集まっているんです。

尾花一般の人も入れたの?

川上入れました。でも、そこにいるのはメキシカンだったり、ホームレスの人たちとかで、あまり安全とは言えない場所でした。ジャンキーみたいな人も多かったですし。ただ、いろんな古着が目方で格安で売っていたので、いいものを安く仕入れることができたんです。それをぼくらがディーラーに売って、おそらく彼らがローズボールで日本人に売ってたんだと思います。だから本当に古着の末端にいた感じでした。

尾花話を聞いていると本当に独特だね。カリフォルニアでもそのシステムでやっているのは、おそらくその場所だけなんじゃないかな。

川上そうかもしれません。中で喧嘩してるやつらもたくさんいたし、警察もしょっちゅう来たし、話しかけたやつがジャンキーで目の焦点が合ってないなんてこともよくありました(笑)。でもすごくセンスがよくて、かっこよかった。そういう現地の人を見ることができたのは大きいですね。

尾花ストリートで見れたというのは大きいよね。

サンフランシスコ時代におふたりの交流はあったんですか?

川上ないですね。でも、尾花さんの活躍のお話は聞いてました。年に1回くらいは日本に帰っていたんですが、尾花さんのお店は他の古着屋とは全然違う印象でした。ぼくがサンフランシスコで見ておもしろいと思っていたものが、そこにはあったんです。「ミスターハリウッド( Mister hollywood)」をスタートさせてからもずっと足を運んでいました。他になかったですよね、ああいうお店。

尾花そりゃそうだよ、自分でもどういう方向に持っていけばいいのかわからないまま始めたから。自分が見たものを全部並べてたからね。

川上でも、すごいかっこよかったですよ。ぼくにはまとまって見えていましたし。

尾花自分が経験したことを全部出したかったんだよね。自分が「ヴォイス(VOICE)」という古着屋に勤めていたときに、ロサンゼルスのダウンタウン、それこそ映画のロケ地にも使われるような場所に寮があったんだけど、そのリビングをイメージしてお店を作って。ギャラリースペースもあって、服を床に陳列したりとか。それはやっぱり、アメリカのセレクトショップのセレクトやVMDに刺激を受けているかな。なにもルールがなかったから。

川上2000年代初頭のロサンゼルスはおもしろかったですよね。

尾花いまみたいにインスタントに情報が入らない時代だったからこそ足繁く通って。見たものを吸収しながら、俺だったらこうするかな? とか考えたりして、とにかくまぁ刺激を受けてましたね。若かったから、見たものをすぐ実践するまっすぐな気持ちもあったし。

川上それがすごくおもしろかったし、かっこよかったです。

単なるレプリカではないハイブリッド感のあるクリエーション。

そろそろアイテムの話に移りたいと思います。前回〈ループウィラー(LOOPWHEELER)〉とコラボレートした際の動画で尾花さんは、しかるべき理由がないとコラボレートしないというお話をされていました。今回の場合、その理由というのはどこにあったのでしょうか?

尾花やはり、自分がこれまで歩いて来た道筋にあるもの、例えばヴィンテージであったりミリタリーであったり、そういった軸をベースにやらないと、こちらとしても理由が浮かばないし、お客さんも「なんで?」となると思うんです。90年代の裏原ブームのときは、近いブランド同士のコラボレートがたくさんあって、そこには一緒に遊んでいる仲間同士っていう確固たる理由があった。でも、それがいまの時代に通用するかといえば、そうじゃないと思うし、ぼく自身、遊びで生まれたパッションからモノを作るというタイプでもないんです。

さっき話したことと重なっちゃうんですけど、今回コラボレーションができた理由は淳也くんが古着を深く掘り下げて、ディグってセレクトするっていうことをしていた人物だからなんです。あと、ひとつの素材として古着を捉えるっていうリメイクのアプローチにも共感できたし、近い価値観を持っている人間だなと感じたのが大きな理由ですね。

〈N.HOOLYWOOD × SEVEN BY SEVEN〉ブルゾン ¥45,000+TAX、パンツ ¥35,000+TAX

〈N.HOOLYWOOD × SEVEN BY SEVEN〉ブルゾン ¥40,000+TAX、パンツ ¥30,000+TAX

それでできあがったのがこのセットアップということですね。今回のアイテムはどんなところから着想を得ているんですか?

尾花もともとこのパンツを作りたいなと思っていたんです。それが始まりですね。

どういったパンツなんでしょうか?

尾花誰もが知っているジーンズの王道ブランドの、王道的なヴィンテージアイテムがありますよね。今回のパンツはそのヴィンテージの生地を、当時と近いレシピで岡山の職人と作ったものなんです。

シルエットも独特ですね。

尾花シルエットは、90年代後半から2000年代にかけて、そのヴィンテージにインスパイアされてつくられた品番があって、それを参考にしています。だから、年代的にもディテール的にも、ハイブリットなアイテムになっているんです。ただ、ぼくのなかでパンツだけで終わるのではなくて、どうしても上下でやりたかったんですよ。そして、ブルゾンも単なるレプリカにはしたくなかった。

パンツがハイブリッドなだけに、ブルゾンもそういった感覚のあるものにしたかったということですね。

尾花そうですね。それで、〈セブンバイセブン〉の展示会にお邪魔したときに、彼がデザインしたアイテムのなかにその王道ブランドからインスパイアを得てデザインされたファーストのGジャンがあったんです。いわゆるレプリカではなくて、しっかりとファッション感の漂うアイテムに仕上がっていて、これはいいなぁと。しかも話を聞いたら、毎シーズン作っているということで、ますます魅力的に感じて。こうやって定番で作り続けているものってそんなにないでしょう?

川上そうですね。

尾花ということは、彼のなかのコアにこれがあるということで。シルエットも独特だし、しっかりとハイブリッド感があったから、ぼくの中で点と点が繋がったんです。それで淳也くんに「やらない?」って話を持ちかけました。

川上すごく光栄でした。そして仕上がりを見て、さすがだなと思いました。作り込みがすごいんです。尾花さんが仰ったように単なるレプリカではないし、若い人から年配の方までいろんな人が着られるアイテムだと思います。

尾花岡山のデニム工場の人には「尾花さんにしては珍しい注文ですね」って言われました(笑)。糸の詰め方からして、もうゴリゴリに当時のヴィンテージを再現しているので。古着が好きな人ならわかると思うんですけど、生地しかり、ステッチの色やピッチも変えてます。そして手打ちのリベットもそうですし。あと、これは工場の人に大反対されたんですけど赤耳も。デッドストックのデニムを見ると、赤耳ってピンク色しているんです。肉眼で認識できるかできないかくらいの淡いピンクの線が入っているのわかりますか? やる前は「消えますよ? やります?」って言われましたけど(笑)、結果的にすごい微妙な差が出て大成功だった。

尾花あと、ジャケットのフラップポケットの裏側も生地を変えているんです。サードの初期までは、なぜかここだけ別の生地を使っていて、それを再現しています。

川上ワンウォッシュは生地の違いがよりわかりやすいですね。

尾花あと、ポイントといえばこのボタンかな。普通ならここにもブランド名を入れたりするんだけど、1990年代、2000年代のデザイナーズブランドみたいなムードを出すために、あえてプレーンなボタンにしてみたり。

川上ぼくもそこがおもしろいなぁと思いました。このパンツのディテールやシルエットを見て、持ってくるネタがさすがだなと。コテコテのヴィンテージやレプリカは履きたくないけど、このパンツはいま履きたいなって正直に感じたんです。

あと、やっぱりステッチの細かさとか生地の再現性に〈N.ハリウッド〉が持つ背景の強さがすごく出ていて。ぼくはデザインが活きたものよりも、モノとしての強さが出るほうが好きなんです。そのほうがシンプルなので。だから、仕上がりを見た瞬間にすごいなぁと感じたんです。

尾花最近、大きなメゾンが若手のデザイナーを抜擢することが多くなっているじゃないですか。今回のコラボレートもそれに近いものがあるのかもしれない。小さいメゾンだからこそ、際立ったアイデアで勝負するしかなくなるし、それがインディペンデントのおもしろさにも繋がると思うんですけど、ブランドのキャパによってはそれを実現できないところもあるので。そこでぼくらができることは、彼らのインディペンデントなアイデアと向き合って、自分の培ってきたものを掛け合わせることで、おもしろいことを生み出すことだと思うんです。

川上今回のアイテムは、ヴィンテージをそのままやっているわけではないじゃないですか。そこがいいですよね。尾花さんがこれを形にするっていうのがぼくにとっては新鮮でした。

古着屋からはじまるセルフスタイリングやリアリティー。

あらためて今回のコラボレートを振り返っていかがでしたか?

尾花この制作を通して淳也くんのことを知れたのはよかったですね。久しぶりに再会したとはいえ、その前に深い関わりがあったかといえば、そういうわけでもないので。ようやく彼のことを知れたというか。自分がやってきたことと、彼がいまやっていることのあいだに似通う部分があったのはうれしかったです。いろいろ話しているうちに刺激を受ける部分もありましたし。それに、彼に対して教えてあげられることもあったような気がするので。

川上本当に勉強になりました。

尾花作る前から着地点ははっきりしていたので、その分、彼の考えを知れたことのほうが大きな意味があったかもしれない。最後の仕上がりで、そういう部分が絶対にスパイスとして出てくるじゃないですか。ただ単にモノについて語るだけではそういうマジックみたいなものは起こらないから。

川上ぼくは単純にうれしかったですね、尾花さんと一緒にやれて。うちのお客さんもすごく喜んでくれると思います。それに、〈N.ハリウッド〉というブランドの見方も少し変わるんじゃないかな? という気もするんです。やっぱり尾花さんと古着というのは切っても切れない関係にあるし、そういう部分をアピールすことで、コレクションラインもより映えて見えると思うんです。

尾花たしかに、若い子たちはぼくがバリバリの古着屋出身者ということを知らない人もいそうだよね。

川上でも、尾花さんは古着を着てても、古着っぽく見えないですよ。それがいいなと思って。

尾花いわゆるトラディショナルな着方ではないからね。一歩間違えればボロボロな服を着た変な人みたいに思われちゃうかもしれない。だから自分の年齢と、着こなし方をちゃんと照らし合わせて、考えないといけないんだけど、それは簡単なことではないんだよね。だからこそ、それを考えるのが楽しいんだけど。

川上ぼくもそういうのが好きですね。この前、一緒に町田の古着屋さんに行ったじゃないですか。あのときもいろんなものにトライされているのを見て、いいなぁって思いました。ひとつのアイテムを手にとって、そう着るんだ? っていうのを見ているのが楽しかったです。

尾花すべてはそこから始まっているからね。しっかりと服に袖を通して、大きなサイズの服から生まれるシワの出方とか、そういうのがデザインになっていくから。ぼくらはそういうセルフスタイリングやリアリティーがスタート地点にあるからね。

川上尾花さんのその姿勢を通して、ぼくもいろいろトライするようになりました。ただ着るだけじゃなくて、そこからさらにかっこいい着方ができるほうが絶対にいい。そういうのをもっといろんな人に楽しんでほしいですよね。

ミスターハリウッド

セブンバイセブン

電話:03-6427-8435
seven-by-seven.com

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