遠藤慎也
インテリアスタイリスト。大学卒業後に入学した専門学校在学中にアシスタントとして働き、6年後に独立。メンズやウィメンズ、テイストなどを限定することなく、さまざまなスタイルのインテリアを創出する。雑誌、ウェブ、広告などで活躍中。趣味は釣りやアウトドア。
空間に、ひとの“残り香”をこしらえる。
遠藤さんがいまの道に進みはじめたのは、大学を卒業してからだと伺いました。
遠藤もともと趣味レベルでやっていたDIYや模様替えを、掘ってみたくなったのがきっかけです。大学を卒業して専門学校を探しているとき、僕が高校生の頃流行っていたインテリア系の雑誌で活躍していた窪川勝哉が講師を務める学校を見つけたんです。のちに師匠となるのですが、そもそも男性のインテリアスタイリストって圧倒的に少ないんです。僕は男性的でラグジュアリーな空間をつくりたかったので、どうしても窪川さんに学びたかった。結局、ほとんど学校には行かず、とにかく窪川さんに現場に連れていってもらい、アシスタントばかりして、6年が経ってました。それで独立です。
遠藤うちの師匠は、一枚の画を本当に綺麗につくり込むのが上手いんです。もちろん僕も、うちの師匠のそのやり方しか見ていないのですが、独立してからはそこに自分のエッセンスを加えることを心がけています。
遠藤空間のなかに“人間臭さ”を加える、というか。すべて綺麗に仕上げるというより、その部屋にどんな人がいるかを想像して、その人のキャラクターや生活が見えるように、散りばめる。たとえばクッションに、ひとが座ったときにできるような“へこみ”をつくる。たとえばテーブルの上に紙くずを置く。もちろん全部“嘘”なんですけど、その空間に「少し前まで誰かいた」かのように想像させるのが、楽しいんです。
ミニマムな機能をもつ、ミニマルなモノがいい。
今日は〈コモノ〉をつけていただきましたが、普段、腕時計はつけますか?
遠藤はい、スマートフォンではなく時計で時間を確認していますね。
いまやスマートフォンでも事足りると思うのですが、どうして腕時計をするのでしょう?
遠藤多機能なものってたしかに素晴らしいと思うのですが、僕はどちらかというと、本来の働きしか備わってないものに惹かれるんです。これしかできません、というようなものが好き。だから時間を知るための究極の形は、やはり時計だと思うんです。
左:KOM-W2271(遠藤さん着用) ¥10,800+TAX、右:KOM-W1947 ¥12,800+TAX
インテリアスタイリストである遠藤さんから見て、〈コモノ〉の印象はいかがですか?
遠藤日本の一級建築士の会社で「マウントフジアーキテクツスタジオ」という人たちがいるんですが、彼らの建築にも似た組み合わせの妙をこの時計に感じました。シンプルな中に異素材を組み合わせることで、トータルとして新しい見え方になっていると思います。エッジが立っているフェイスには男性的な印象を受ける一方で、ちょっと目のあるレザーが柔らかな雰囲気も醸し出してますよね。
サングラス:KOM-S2555 ¥12,800+TAX
遠藤さん自身、今日のコーディネートにも革製品をいくつか取り入れていらっしゃいますが、革という素材には特別な想いがあるのでしょうか?
遠藤革そのものというより、「異素材の組み合わせのなかでの革」が好きなのかもしれません。レザーブランドの中でも、革の使い方がユニークなブランドに惹かれます。インテリア業界でも、いま異素材を組み合わせていく潮流があって、ディープグリーンやディープブルーといった色も去年あたりから注目されている。〈コモノ〉のもつそういった特徴には、なにかインテリアとも通じるものがあるような気がします。
時計で自分を追い込み、ときに解放する。
遠藤さんが“時間”との向き合い方を意識するのは、どんなときでしょうか?
遠藤仕事のときは、時間に追われるようにしています。モノを見るのが好きな僕は何時間でも同じ店にいられます。でも、たとえば「この日までに○軒リサーチしないといけない」といった場合、時間を常に意識して自分を追い込むようにしなければならない。そのために時計をつけている、と言ってもいい。反対に、それを解放したいがため、休みにはキャンプに行くことが多いんです。そういうときには、時計だけでなく、スマホの充電が切れていても気にならなかったりします。東京で動いているとどうしても仕事モードになってしまうので、それを一切できない状況をつくる。仕事とプライベートでは、時間に対する接し方がまるで違います。
情報が偏らないよう、ショップは常にまんべんなくチェック。
仕事でもプライベートでもさまざまなショップにリサーチに行かれると思いますが、どのような店によく行きますか?
遠藤インテリアや雑貨などどんな店でも、特に制限は設けないようにして、まんべんなく足を運んでいます。ただ、やはり知り合いのいる店や、スタッフと仲のいい店には自然と足が向かってしまう。それこそ家具屋であれば、買い付けに行ったときの話や、近頃の流れを聞いたりします。家具ってそう頻繁に買えるものじゃないので、買い物しないのを、会話で誤魔化す作戦でもある(笑)。
「ノートワークス(NOTEWORKS)」は、まさにそんな場所ということですよね。
遠藤そうですね。仕事で知り合って、いまではすごく仲良くさせてもらっています。実はいま、引っ越しに伴ってまとめた私物を店内に置かせてもらっていて、「遠藤商店」と称したガレッジセールをおこなっているんです(2018年5月20日まで)。念のために言うと、取材を引き受けたのはその宣伝のためじゃないですよ?(笑)
「葉花(はばな)」は、遠藤さんにとってどんな店ですか?
遠藤可愛らしいものもありますが、ワイルドフラワーと呼ばれるような荒々しい花や植物も多く置いてあって、男性でも入りやすいし、おすすめです。やはり僕は男性誌に携わることが多いので、こういったお店は重宝しますね。
スタイリングの良し悪しは、センスの良し悪しにあらず。
遠藤そこは、あえて好きなテイストは決めないようにしています。僕のやっている仕事って、センスじゃなく、どれだけモノを知っているかがキーです。クライアントのイメージを上回るものを提案し続けるためには、自分の好きなスタイルの押し付けではなく、いくつも選択肢を提示して一緒に考えていく必要がある。そのためには、ベースとして、どれだけモノを知っているかが重要です。ただ、方々で「キャンプ好きなんです」という話をしているのもあって、アウトドアリビングなど、自分の得意な依頼が自然と集まってきたりもします。
普段の生活でも、いわば職業病のように意識してしまうことってありますか?
遠藤映画を観ていると、インテリアばかりに集中してしまい話が全く入ってこない(笑)。「この飾り方かっこいいな」とか、「そこに、その色合わせるんだ」とか、背景ばかりに気を取られて…。もちろん、それが仕事に活きたりもしますが。
「ノートワークス」で開催されていた遠藤さんの私物販売スペース。
最近引っ越しをなさったということですが、ご自身の生活空間でさえ、やはり仕事の延長にあるのでしょうか?
遠藤実家に住んでいる頃から、自分の部屋は、仕事以外で唯一さまざまなことを試せる実験部屋のような場所でした。板を立てたり、柱を組んだりといった大掛かりなことから、撮影に使ったものを引っ張り出して飾ってみたり、普段使わないタイプのグラスを使ってみたり。気に入らないときは、2日で模様替えしてしまうこともあります。
たとえば僕たち素人でも、部屋を雰囲気よく見せられる簡単な方法はありますか? 模様替えをしようとしたとき、まずどこに手を加えればよいのでしょう?
遠藤よく言われるのは、面積の大きなものを変えるのが効果的ということ。ただ、床や壁を一新するっていうのはなかなか難しいと思うので、ラグやカーテンといった“生地もの”、つまり面で見えるものを変えてみる。たとえばソファーに布を掛けるだけでも、部屋の雰囲気はガラリと変わりますよ。ソファーに布を掛けるだけでもいいと思います。
撮影協力
NOTEWORKS
住所:東京都世田谷区若林2-31-12 サンクレスト若林 103
電話:03-6450-7392
www.noteworks.jp
葉花
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-14-14
電話:03-3466-0242
www.habana.jp
KOMONO TOKYO
SHIPS JET BLUE 渋谷店