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168キロ走った先に何が見えたのか? フイナム ランニング クラブ♡のUTMF参戦記。

ULTRA-TRAIL Mt. FUJI 2018

168キロ走った先に何が見えたのか? フイナム ランニング クラブ♡のUTMF参戦記。

国内最大規模のトレイルランニングレース「UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)」が4月27〜29日の3日間にわたって開催されました。距離は100マイル(約168キロ)、累積標高差は約8,000メートル、制限時間は46時間。ランニングに興味の無い人から見たら酔狂なことこのうえないこの大会に、フイナム ランニング クラブ♡のメンバーが参戦。壮絶を極めたレースの模様をレポートします。

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富士山麓を約168キロ走る超人レース。

日本初の本格的100マイルレースとして2012年にスタートしたUTMF。開催が見送られた2017年をのぞくと1年に1回開催され、今回で6回目。2016年9月以来約1年半ぶりの開催となります。

種目は総距離100マイルのUTMFと、総距離約92キロのSTY(Shizuoka to Yamanashi)の2種目。UTMFはこれまで山梨県の河口湖をスタートして富士山麓を一周し、再び河口湖に戻ってくるラウンドコースで行われ、それがこの大会を特徴づけていましたが、今回はコースの確保ができず、静岡県の富士山こどもの国をスタートして河口湖でフィニッシュするワンウェイコースで開催されました。

ちなみに「100マイル」という距離はトレイルランニングのロングディスタンスレース、通称「ウルトラトレイル」における世界的な基準値にもなっています。欧米では数多くの100マイルレースが開催され、トレイルランナーから人気を博しています。

猛者たちが集結! スタート地点は熱気ムンムン。

レースのスタートは、STYが4月27日12時、UTMF が同日15時。会場の富士山こどもの国には午前中からランナーや応援の人たちが続々と集結し、異様な熱気に包まれます。

なお、UTMFは誰でも出られるわけではなく、過去3年のあいだにエントリー資格レースに出場・完走し、規定の「ポイント」を獲得しなければ、エントリーすることができません。そのような条件を設けているのは、100マイルレースが二昼夜に渡って山岳地帯を走り続ける過酷な競技であり、その厳しさを自ら克服して制限時間内に完走する能力があるかどうかを判断するため。

さらにその先には「抽選」が待っています。規定のポイントを獲得してエントリーしても、募集定員に対して応募数が上回るからです。つまり、UTMFは出るだけでもすごいことであり、そのスタート地点に立っているのは経験と実力と運を兼ね備えた猛者たちばかりなのです。

こちらが今回参加したフイナム ランニング クラブ♡のメンバーたち。部長を務めるライターの榎本一生(写真中央)および副部長を務めるフイナム副編集長の山本博史(写真右から2番目)を含む計5名がUTMFにランナーとして出場したほか、多くのメンバーが応援に駆けつけてくれました。

15時、号砲の合図とともに、レーススタート! 二昼夜にもおよぶ長い長〜い旅が始まりました。

変化に富んだコースレイアウト。二昼夜にわたって走り続けます。

UTMFは総距離約168キロの超ロングコース。すべてが険しい登山道というわけではなく、ゆるやかなトレイルもあれば急峻な岩場もあり、林道やロードもあるバラエティに富んだコースになっています。

富士山麓のトレイル、そして木漏れ日が美しいロードを疾走する山本。

新緑のトレイルを気持ちよく駆け抜ける榎本。

ヘッドランプを装着して夜のトレイルを走る榎本。UTMFは多くの選手が40時間以上かけてゴールまでたどりつくため、必然的に夜を徹して走ることを余儀なくされます。闇に包まれる夜間を走るにはヘッドランプが欠かせません。

絶景の連続。あらゆる角度から富士山を堪能!

3日間を通して好天に恵まれた今回のUTMF。コース上のあらゆるポイントから富士山を拝むことができました。

富士山は一年を通じて我々の目を楽しませてくれますが、山頂付近に残雪を冠した姿はまた格別。この時期だからこそ堪能できる美しさです。

補給、休憩、応援……長距離レースに欠かせない「エイドステーション」の存在。

UTMFはコース上の10箇所に「エイドステーション」が設けられ、ランナーは水や食料を補給したり休憩をとったりすることができます。

エイドステーションのなかには応援者やサポーターが入れるところもあり、フイナム ランニング クラブ♡からも多くのメンバーが応援に駆けつけてくれました。レースが長時間におよぶなか、仲間の応援はとても心強いもの。ひとりで走っているわけではないと強く実感させられます。

地元の名物料理が用意されているエイドステーションも。50キロ地点のA2麓では名物の富士宮焼きそばが振る舞われ、ランナーの胃袋を満たしていました。

ところで、「二昼夜も走り続けて、その間まったく寝ないの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、エイドステーションには休憩所が設けられている箇所もあり、多くのランナーはそこで仮眠をとります。

エイドステーションの休憩所でひと眠りする山本。寝すぎてしまうと制限時間に間に合わなくなる可能性もあるので、眠りにつく前にスマートホンのアラームをセット。30分から1時間ほど仮眠をとり、レースに復帰します。

感動のゴールシーン! タイムは45時間7分18秒!!

4月27日13時のスタートから二晩超えて、3日目の4月29日のお昼過ぎ。フィニッシュ地点の河口湖に、山本が姿を現しました!

沿道やフィニッシュゲート付近で待ち受けていた多くの観客、そしてフイナム ランニング クラブ♡のメンバーとハイタッチを交わし、満面の笑顔でフィニッシュゲートを通過! タイムは45時間7分18秒! 168kmという途方もない距離を走り切り、栄光の“100マイラー”の称号を手にしました。

ゴールで待ち受けていた榎本と握手を交わす山本。なお、榎本は序盤で胃腸をやられて激しく嘔吐し、その後も吐き気が収まらず、そのうえ強烈な睡魔に見舞われて大幅にペースダウン。117km地点の関門に間に合わず、あえなくリタイアと相成りました。

今回のUTMFの完走率は72.8%。厳しい条件をクリアしてこのレースにのぞんだうちの約7割が完走を果たしましたが、約3割が途中で涙を呑みました。

100マイルレースの魅力とは? フイナム ランニング クラブ♡の考察。

またいつかこの舞台に立ちたい(かも)。

「いやぁ、完敗でした。まったく歯が立たなかった。それなりにトレーニングを積み、事前に一部コースの試走もしてのぞんだつもりだったけど、結果的には完全に準備不足、実力不足。気力も体力も走力もなにもかもが足りていませんでした。ただ、途中リタイアだったとはいえ、UTMFという大会の素晴らしさ、そして100マイルレースの魅力の片鱗を感じることはできたかなと。来年どうするかは現時点では未定ですが、またいつかこの舞台に立ちたい。あるいは、自分がランナーとして走らなくても、この舞台に挑戦する仲間がいるなら応援に駆けつけたい。どんなかたちであれ、この大会には今後もずっと関わっていけたらと思います」(フイナム ランニング クラブ♡部長・榎本一生)

僕なんかが100マイルを完走できてしまった理由。

「正直、僕なんかが完走しちゃいました、という感じですね。実際、昨年末までは月間走行距離は平均100キロ未満でしたし、試走もまったくしていない。2月、3月にロードのレースを入れて、徐々に長距離にカラダを慣らせてはいきましたけど、トレイルでも最長70キロ程度しか走っていない僕にとって、100マイルはおろか100キロだって未知数。準備も走力も劣る僕が完走できた理由? それは自分でもわかりません(笑)。あえて言うならば、40時間近く山で遊んでいられることにわくわくしていたから、かもしれません。レース中も楽しむことを忘れずにいましたし、あまり推奨はできませんが前日もきっちり深酒しましたから(笑)。いま振り返っても、とにかく楽しい2日間(前後を入れれば4日間)でした。そういった場を提供してくれた、UTMFに携わったすべてのみなさまに感謝ですね」(フイナム ランニング クラブ♡副部長・山本博史)

NHK WORLD JAPANではUTMF2018の英語版番組が公開中。気になる方は下記URLでチェックしてみてください。

NHK WORLD JAPAN「ULTRA-TRAIL Mt.FUJI 2018」

www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/vod/ultratrail/3004496/
※2019年6月4日まで視聴可能

ULTRA-TRAIL Mt. FUJI

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