
キーンがヒップな人に支持される4つの理由。
近年、スマッシュヒットとなった「ユニーク」でオープンエア・スニーカーという新しいジャンルを築き上げ、アウトドアフィールドからタウンユースまで幅広い層に支持を集めている〈キーン〉。イノヴェイションとクラフトマンシップを兼ね備えたポートランド発のクリエイティブカンパニーは、なぜヒップな人々を魅了するのか。本社取材をもとにその人気の秘訣を探っていきます。
- Photo_Masataka Nakada
- Edit_Hiroshi Yamamoto
近年、スマッシュヒットとなった「ユニーク」でオープンエア・スニーカーという新しいジャンルを築き上げ、アウトドアフィールドからタウンユースまで幅広い層に支持を集めている〈キーン〉。イノヴェイションとクラフトマンシップを兼ね備えたポートランド発のクリエイティブカンパニーは、なぜヒップな人々を魅了するのか。本社取材をもとにその人気の秘訣を探っていきます。
2003年にカリフォルニアで設立され、2006年にはオレゴン州ポートランドに移転。2012年から現在まで利用しているのが、築100年のレンガ造りの5階建て倉庫をリノベーションしたこちらの本社です。
開放的な空間のオフィス内。柱には古い木材が使われています。
ドラム缶やクルマのパーツを再利用して作られた家具が随所に。
「ブランドを体現する建物にする」という目標のもと設計されたこちらのオフィス。見渡してみると、古い木材を使った壁や柱、クルマの廃材を再利用した家具などが点在し、いたるところから環境に対する〈キーン〉の明確な意志を感じさせてくれます。
実際、この規模の移転では24トン近い廃棄物が出るとされるところを、コンテナ1台分に抑えることに成功。快適で居心地もよく、それでいて地球に優しいオフィスを見事に実現しています。
私用の電話などに利用するプライベートルームは、古い木材で組み立てられています。
本社前の道路の一角を封鎖して行われたのが、〈キーン〉のオリジナルフェス「KEENFEST」です。世界各国の〈キーン〉のスタッフやその家族、リテーラーや近隣で働く友人・知人まで、あらゆる人々を招待して行われたこちらのイベント。
オフィスのエントランス部分にステージを設け、地元ポートランド出身のバンドによる生演奏に、フード、ドリンクの提供、販売に加え、ユニークの即興販売、イベント限定のTシャツ、キャップ、バッジなどの無料配布など、とにかく大盤振る舞い。
会場内に設置された畳2畳の大きさの世界最小のシューズ工場「ユニークボット」。その場で自分好みの配色で「ユニーク」を製作することができました。
来場者はもちろん、警備に当たるスタッフまで上機嫌にさせる開放的で居心地のいい空間、演出は〈キーン〉ならでは。こういったオープンマインドとおもてなし精神が、多くのファンを生む要因の1つと言えるでしょう。
ちなみにこちらのイベント、先ごろ東京でも開催。〈キーン〉のホスピタリティは海を渡って伝えられています。
〈キーン〉のクラフトマンシップを支えているのが、2010年にポートランドに建設された自社工場にあります。キーンの本社からほど近い場所にひっそりと佇むこちらのファクトリーでは、「アメリカン ビルド」や「リアルト」といったコレクションの生産を手がけています。
プロバイオティクス技術を採用したこの工場で驚かされるのが、シューズファクトリー特有の悪臭がしないこと。健全な職場環境で、製造プロセスの透明性を確保しながら、継承されたアメリカの職人技術をもとに、〈キーン〉のプロダクトは作られています。
耐久性のテストを担当するのは創業者の三男であるコナー・ファースト。
“フットウェア業界のジョブズ”と呼ばれることもあるローリー・ファースト・ジュニア。
また、自社工場の一角には「ユニーク」の産みの親であるデザイナーのローリー・ファースト・ジュニアが働くイノベーションラボも併設。ここで生まれた革新的なアイディアは、自社工場によってすぐさまサンプルを作ることができるため、よりスピーディな新製品の開発を実現しています。
〈キーン〉を語るうえでハズせないのが、サスティナブルな活動です。2004年にスマトラ島沖地震が発生した際には、当時のマーケティング予算全額100万ドルを災害支援に回すことに決め、救済活動にも参加。ブランド設立から僅か1年での異例の英断は、ブランドのフィロソフィーを決定づけました。
以降、「キーン・エフェクト」という名のもとに、社会への還元、市民活動の支援、環境負荷の低減する活動を実施。2018年5月現在で約18.8億円を世界中のNPO団体へ寄付しています。今では多くの企業がCSR活動には力を入れていますが、そういった活動をあくまでもポップに扉を開いているのが〈キーン〉の特性です。
なかでも印象的なのが、オフィスに設置されている電話ボックス。この電話ボックスの中に置いてある電話帳には、〈キーン〉と関わりのある非営利団体の活動内容、連絡先、電話したときに話すべきことまで明記してあります。
つまり、お客様が興味を持って、アクションを起こすまでの煩わしいプロセスを、この電話ボックス1つで完結させているんです。しかも、この電話ボックスは可動式。様々なイベント会場に設置することで、多くの人に環境保全を知るきっかけとしての役割も担っています。
最後にCSR活動の担当者であるクリス・エンローからのコメントを記載しておきましょう。
「環境保全や災害支援はとてもセンシティブな問題です。だからこそ、僕らは知るきっかけを作って問題提起するだけではなく、お客様に積極的に関わってもらうようにできるプロジェクトを心がけています。
もちろん目先の売上には繋がらないと思われるかもしれません。それでも僕たちは、物を買ってくださるお客様を増やすだけではなく、〈キーン〉というブランドのファンを増やすことを目的にこういった活動しています。その方がより多くの人の心に残り、ブランドとしても持続可能な発展に繋がると信じているんです」
なお、西日本豪雨による災害の緊急支援活動もいち早くスタート。詳しくはこちらのブログをご覧ください。
電話:03-6416-4808
keenfootwear.com