インスピレーション源は偉大なるジャズマン、マイルス・デイヴィス。
イギリスの老舗アイウェアブランド〈オリバー・ゴールドスミス〉と、ロンドンを拠点にさまざまなカルチャーとクロスオーバーしたものづくりを行うクリエイティブ集団〈アート・カムズ・ファースト〉。両者のコラボレートによって生まれたアイテムは、偉大なるジャズ奏者、マイルス・デイヴィスからインスピレーションを得ています。どこかスモーキーで渋さを感じる4つのモデルからは、2つのブランドのアイデンティティーの共存が見受けられます。
今回、このアイテムの魅力を深掘りすべく、3つのショップの要人にその魅力をたずねました。イギリスのデザインに含まれる哲学。その真髄に近づくためのヒントを3名は語ってくれました。
「コンティニュエ」では〈オリバー・ゴールドスミス〉をいつ頃から取り扱っているんですか?
根本 1926年にブランドが設立して、90年代に運営を休止しているんですが、2005年に再始動したんです。「コンティニュエ」では、そのタイミングでお取り扱いをスタートしています。当時から力を入れていて、ショップのメインブランドのひとつでもありますね。
このブランドの魅力はどんなところにあるのでしょうか?
根本 50~70年代にかけて、ヨーロッパのファッションが急速に研ぎ澄まされていった時代を駆け抜けたブランドなんですよ。新たなデザインが生み出されて、『VOGUE』の表紙にも使われるなど、当時から感度の高いセレブリティーにも愛されていて。一度ブランドが休止しながらも、自分たちの歴史を大事にする文化によって、〈オリバー・ゴールドスミス〉はセレブリティーリストや、デザインの膨大なアーカイブなど、当時の資料がしっかりと残っているんです。
それがあることによって、再始動する際に曖昧なものがなくなり、しっかりと輪郭をキャッチできますね。
根本 そうですね。新たにクリエーションを始める際に、高い精度で再スタートを切れる。その差はすごく大きいんです。
イギリスのデザインというのはやはり、他の国にはない特別なものが宿っているんですか?
根本 トラッドな部分をベースにしながらも、そこに自由な感性をプラスしている印象があります。オリジナリティのある色使いであったり、肉厚なセルフレームを使用していたり。それに対してアメリカのデザインはどちらかというと、トラッドに忠実な印象なんです。そういう意味で〈オリバー・ゴールドスミス〉は、ファッションを追求しているように思います。新しいシェイプを生み出したりとか、感性を刺激するものづくりをしているんです。
デザイン以外にも〈オリバー・ゴールドスミス〉の特徴はありますか?
根本 いま、海外のさまざまなブランドが日本の工場を使ってものづくりを行っていますが、〈オリバー・ゴールドスミス〉は“つくり(=品質)”の部分にこだわり、いち早く日本製を取り入れました。エッジの効いたデザインを日本のクオリティーで仕上げることで、より完成度の高いアイテムができあがる。そういった背景に惹かれて手に取られる方も少なくないです。
今回の〈アート・カムズ・ファースト〉とコラボレートしたアイテムの魅力は、どんなところにあると思いますか?
根本 〈オリバー・ゴールドスミス〉と〈アート・カムズ・ファースト〉は、どちらもブレない軸を持ったブランドですよね。そういったブランド同士が手を取り合うことで、アイウェアとしての迫力が増したように思います。ベースとなるモデルの素の部分を大事にしつつも、レンズの大きさを大胆に変更したり、カラーやロゴのあしらいを加えて、より個性的なアイテムへとアップデートしているんです。
魅力が片方に偏ることなく、両方のブランドの良さが出ていると。
根本 そうですね。実際に店頭でも、ファッションが好きな方はもちろん、自身のスタイルを持ったお客さまに反応がいいです。〈オリバー・ゴールドスミス〉が積み上げてきた歴史に敬意を払いつつ、〈アート・カムズ・ファースト〉も自分たちのセンスをしっかりと表現している。すごく魅力的なコラボレートだと思います。
SHOP_02 / UNITED ARROWS & SONS
アート・カムズ・ファーストのブレないパンクな姿勢に共感する。
「ユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)」ではデビューシーズンから〈アート・カムズ・ファースト〉の取り扱いをされているんですよね?
増田 そうですね。2013年の秋冬にスタートして以来、毎シーズン欠かさずセレクトしています。〈アート・カムズ・ファースト〉はサム・ランバートとシャカ・メイドーという中心人物がいて、彼らはブランドをはじめる前からヴィンテージのスーツをリメイクしたりして服作りを行っていました。サムはもともとサヴィル・ロウでテーラーとして活動していて、シャカはアートワークやファッションのスタイリングなどをやっていたんです。
ブランドとしてスタートを切ったあと、〈アート・カムズ・ファースト〉はどんなクリエーションを展開したんですか?
増田 イギリスのテーラードをものづくりの背景にしつつ、彼らが影響を受けてきた音楽や映画などのカルチャーをミックスしたクリエーションを行なっています。イギリスでは、ロックやパンクを奏でるミュージシャンたちがよく着ているみたいですね。
具体的にはどんなカルチャーに影響を受けているのでしょうか?
増田 本当に幅広くて一概には言えないです。ただ、彼らは自分たちのことを“パンクテーラー”と呼んでいて、パンクが抱く精神性をデザインを通して表現しているんです。例えば、2017年の秋冬には、1950年代のコンゴのユースカルチャーをコレクションに反映させていました。その頃のコンゴは20代の人口の割合がすごく多くて、当時の政権に対して反旗を翻していたんです。そういった政治的なトピックからも彼らはインスピレーションを得ていますね。
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“パンク”というキーワードから、ものすごくストイックな印象を受けます。
増田 考えやスタイルはブレないですね。ぼくらも彼らのそうした姿勢に共感するんです。スタンスはあくまで精神性に重きを置いているにも関わらず、どうしてもイギリスっぽさが出てしまう。それは、彼らが自分たちの信じるものに対して真摯に向き合っているからだと思うんです。しっかりとカルチャーに根ざしてメッセージを発信しているところに惹かれます。
増田 「自分たちはイギリスのブランドです」って主張しているわけではないのに、そのエッセンスを色濃く感じるブランドってなかなかないですよね。だからこそ、さまざまなイギリスの老舗ブランドや〈オリバー・ゴールドスミス〉とのコラボレートも実現できたのではないかと思います。
今回のコラボレートアイテムをご覧になられて感じることはありますか?
増田 じつは本人たちに、コラボレートするという話を前から聞いていたんです。ぼくのなかで〈オリバー・ゴールドスミス〉は「CONSUL」などのオプティカルの印象が強かったので、サングラスを作ると話を聞いたときに「どうなるんだろう?」という思いはありました。でも実際にアイテムを拝見して、〈オリバー・ゴールドスミス〉がヨーロッパで築き上げてきたファッションとの関係性を大事にしつつ、〈アート・カムズ・ファースト〉らしさも共存していて、すごくいいなと思いましたね。
増田 このイエローゴールドのサングラスなんかは、インラインには見られない色ですよね。とはいえ、一方では〈アート・カムズ・ファースト〉らしいカラーリングでもあるんです。あとはテンプルにパーツを加えたりとか、細かな部分にもこだわりを感じます。
このサングラスは、どんなファッションに合うと思いますか?
増田 スーツを着てキリッと決めるのもかっこいいと思うんですが、どのモデルにも個性があるので、シンプルな服装に合わせてもおしゃれになりますね。キャラが立つと思います。
SHOP_03 / THE CONRAN SHOP
かけることによって、気分を変えてくれる力がある。
インテリアショップでアイウェアを取り扱うというのは、珍しいですよね。そこにはどんな狙いがあるのでしょうか?
滝沢 「ザ・コンランショップ」はデザインを通してお客さまの生活を豊かにしたいという想いがあるんです。良質なデザインを届けるという意味では、アイウェアもその一助になると考えています。
〈オリバー・ゴールドスミス〉はいつ頃から取り扱っているんですか?
滝沢 5年ほど前からですね。私自身もこのブランドのアイウェアを使っていて、ずっと取り扱いたいと思っていました。クラシックなフォルムでありながらも、デザインに遊びがあって洗練されている。そこに魅力を感じます。かけることによって、気分を変えてくれる力がありますよね。かといって違和感を生むわけではなく、顔に自然となじむ感覚があるところもいいな、と。
今回の〈アート・カムズ・ファースト〉とのコラボレートアイテムをご覧になられて、感じることはありましたか?
滝沢 〈オリバー・ゴールドスミス〉の完成されたデザインに手を加えるというのは、すごくチャレンジングなことだと思うんです。その姿勢に共感しました。ただ色を変えただけの保守的なアップデートが多いなかで、今回のコラボレートではサイズを大幅に変更していたり、パーツを増やしたりなど、定番を新しいものへと生まれ変わらせている。それがすごく〈アート・カムズ・ファースト〉らしいアプローチだなと思いました。
従来の〈オリバー・ゴールドスミス〉のファンに加えて、新たなファンの獲得にも繋がりそうですね。
滝沢 そうですね。こういったエッジの効いたデザインのアイテムがラインナップに加わることで、意外性も感じられるし、お客さまも興味を示してくれるのではないかと思います。
今回店頭では、イラストレーターのツダタクミさんのイラストも同時に展示するんですよね?
滝沢 〈アート・カムズ・ファースト〉のインスタグラムを拝見したときに、ツダさんのイラストがパッと目に入ったんです。アートも一緒に提案できれば、インテリアとの関連性もありますし、お客さまにより届けやすくなると思ったんです。
〈アート・カムズ・ファースト〉と日本人イラストレーターが繋がっているところに意外性を感じました。
滝沢 我々も驚きました。福岡を拠点にされている方で、繊細な描写が魅力ですよね。写真では表現することができない世界観を描いているなぁ、と。そこにユニークさを感じますね。今回の企画に合わせて、書き下ろしでイラストを製作していただきました。
アートとしても今回のアイテムを楽しめるというのは、ユニークな発想ですね。
滝沢 そうですね。サングラスをかけることでファッションの魅力が増すように、部屋にアート作品を飾ることで、インテリアの完成度も上がる。そういう意味でアートとサングラスは似ているのかもしれません。普段アイウェアをかけない人でも、この作品を通して両ブランドの世界観を知ってもらえたらうれしいですね。
イギリスのアイデンティティーを象徴するアイウェア。
伝統への理解を深め、そこをスタート地点にしながら、さらに新しいものを生み出す。今回のコラボレートから感じたのは、そんな気概でした。常に新しいカルチャーを発信し、世界中の人々の注目を集めるイギリス。その地を拠点とする〈オリバー・ゴールドスミス〉と〈アート・カムズ・ファースト〉に通づるのは、目的や目標の方向性を真摯に見つめていること。だからこそ太くしなやかな軸が生まれ、さまざまなことを吸収しつつも、根幹だけはブレずにいられるのだと思います。最後にそんな両者によるコラボレートアイテムを全モデルご紹介しましょう。
〈OLIVER GOLDSMITH × ART COMES FIRST〉MISTINGUETT ¥37,000+TAX
〈オリバー・ゴールドスミス〉の数あるモデルのなかでも、重厚感のあるデザインが特徴的な「ミスティンゲット(MISTINGUETT)」。テンプルの部分に「ART FIRST」と書かれたシルバー925のロゴパーツをあしらい、より迫力のあるアイテムへとアップデートしています。
〈OLIVER GOLDSMITH × ART COMES FIRST〉CHARLES 53S ¥43,000+TAX
ブランドの2代目であるチャールズ・オリバー・ゴールドスミス自身も愛用していたことから「チャールズ(CHARLES)」と名付けられたモデル。もともとは49mmだったレンズの直径を53mmと大きく変更し、大胆なデザインチェンジを加えたひと品。目を惹くイエローゴールドのフレームや、グレーのカラーレンズにシルバーミラーを施した仕様も特徴的です。
〈OLIVER GOLDSMITH × ART COMES FIRST〉HEP ¥35,000+TAX
オードリー・ヘップバーンが映画「シャレード」で着用したという「ヘップ(HEP)」。先に紹介した「ミスティンゲット」と同様に〈アート・カムズ・ファースト〉のオリジナルパーツをテンプルにあしらうことで、シャープでエレガントな印象を強調しています。クリアレンズにはシルバーミラーを施しているところにも注目です。
〈OLIVER GOLDSMITH × ART COMES FIRST〉COLT ¥40,000+TAX
7月20日(金)より、「コンティニュエ」、「ユナイテッドアローズ&サンズ」、「ザ・コンランショップ」にて先行発売される「COLT」。70年代後期に発売していたモデルです。フロントバーとテンプルが捻れたデザインが特徴で、かけたときの表情に奥行きがでます。ミラーレンズをあしらったスモーキーな雰囲気も魅力です。
独自のこだわりを持つ2つのブランドが生み出した珠玉のアイウェア。手に取れば、イギリスという国のアイデンティティーが伝わってくるはずです。気になった方はお早めにショップへと足を運ぶことをおすすめします。
OLIVER GOLDSMITH
ART COMES FIRST
コンティニュエ
住所:東京都渋谷区恵比寿南2-9-2 CALM恵比寿1F
営業:12:00~21:00(水曜日定休)
電話:03-3792-8978
Instagram :@continuer_ebisu
www.continuer.jp/
ユナイテッドアローズ&サンズ
住所:東京都渋谷区神宮前3-28-1 ユナイテッドアローズ原宿本店 B1-1F
営業:12:00~20:00(土日祝 11:00~20:00)
電話:03-5413-5102
Instagram:@unitedarrowsandsons
ザ・コンランショップ 新宿本店
住所:東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー3・4F
営業:11:00~19:00(水曜定休※祝日の場合は営業)
電話:03-5322-6600
Instagram:@theconranshop.japan