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monessay ─頭かくして尻かくさず

monessay ─頭かくして尻かくさず

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。今回は〈J&M デヴィットソン(J&M DAVIDSON)〉の「メッシュベルト」。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta
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第九回 頭かくして尻かくさず

い頃、つまりネットのない時代、得られるファッション情報のほとんどは雑誌であった。いまからは想像できないくらい情報は限られていたし、不正確だった。特に地方都市で暮らすというのもさらなるハンデであった。なのであらゆる雑誌を貪るように読んだものである。

までいうフェイクニュースや広告を疑うなんてことはなく、純粋に記事や特集などを楽しんだ。悪く言うと雑誌の言うがままに操られた世代である。

響を受けて買ったもの、真似たスタイルをあげるとキリがない。

のひとつにおしゃれは足元から、というのがある。どんないいかっこしようと足元がおろそかであればすべてが台無しというわけだ。

れはどの雑誌でも同じようなことを主張していた。確かにそれは服装の本質を突いているとは思う。

だファッション途上国であった日本のメンズのファッションシーンで、DCブランドやインポートブランドの服を買うのがやっとで靴までお金が回らないなんて人も少なくなかった。頭かくして尻かくさず。いくら高価なものを一点豪華主義的に身につけてもそれではお里が知れるというものだ。

ういうわけでハタチ前の若造であった自分もオールデンのローファーなんかを買った。某セレクトショップでバイトしていたから社販で買えたというのも大きい。他にもレッドウィング、チャーチ、フローシャイム。若造からすると綺羅星のようなブランドのシューズ群。バイト代のほとんどをそっちに使った。そうなると逆説的に着るものがおろそかになる。なので年中ジーンズにラコステのポロというスタイルになった。恥ずかしいかな、いまでも同じかっこをしている。

かしベルトには無頓着であった。

ァッション誌では靴の色とベルトの色は合わせる、なんて指導があったものだが、ベルトにかけられる金はない。当時どんなベルトをしていたかは思い出せない。きっと適当なもんだっただろう。

人が働いていた渋谷のインポートショップで5センチ幅の極太のメッシュベルトを見つけたのはいつだったろうか。ブライドルレザーで太めに編まれたベルト。圧倒的な存在感。

れが〈J&M デヴィッドソン〉との出会い。爾来、ベルトはここのものと決めている。

い頃から体型が変わらないと人からは見られるが、わずかながらも拡大しているのでさすがに昔買ったものはもはや寸詰まり。

んなわけでわりと最近、新しいお友達を増やしたところ。ナチュラルなヌメ革とブラウンの2本。

れにしてもキャッシャーで驚いた。昔買ったものの2倍以上もする。しかも半分の幅で。

米諸国はインフレなんだな、と改めて思うのであった。

蔡 俊行

フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

J & M DAVIDSON 青山店

電話:03-6427-1810
jp.jandmdavidson.com

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