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FEATURE|ショップはかくあるべし!? 松島大介さんの家具屋BULLPENのはじめ方。

ショップはかくあるべし!? 松島大介さんの家具屋BULLPENのはじめ方。

ショップはかくあるべし!? 松島大介さんの家具屋BULLPENのはじめ方。

渋谷区西原で暮らしのそばにあるコーヒーを提案するコーヒーショップ「パドラーズコーヒー(PADDLERS COFFEE)」を共同で営む松島大介さんの新しいお店「ブルペン(BULLPEN)」はなんと家具屋さん。その新しいお店がある幡ヶ谷駅にほど近い西原商店街は、小さな商店が軒を連ねる昔ながらの商店街。人と街とのつながりを大切にしながら、朝早くからコーヒーを提供してきた松島さんにとって、生まれ育った街、10代の半分を過ごしたポートランドとともに、この街は大切な拠点になっている。近年、コーヒーだけでなく、古着、レコードやアートが楽しめる街になったこの場所の仕掛け人ともなっている松島さんのお店のつくり方は、簡単に真似できるものではないけれど、これからの時代におけるビジネスやショップをはじめる大きなヒントになるはずだ。いま注目すべきインテリアショップである「BULLPEN」について、そして松島さんがいま何を考えているのか、じっくりとお話をうかがった。

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日常の中にあるコーヒーとインテリア。

まずは人気コーヒー店である「パドラーズコーヒー」の松島さんが、いまなぜ家具屋をオープンさせたのか、二号店をインテリアショップにした理由を教えてください。

松島西原で「パドラーズコーヒー」を始めたのは4年前のことです。その前に、参宮橋の「LIFE son」というレストランでハンドドリップのコーヒーを提供するコーヒースタンドとして一年間活動をしました。そうして仲間たちを募って始めたのが「パドラーズコーヒー」でした。最初からコーヒーを淹れることも、コーヒー屋としての経験値もゼロからのスタート。それでなぜ家具屋かといえば、ブルペンに置いているような、家具や植物はもともと好きでしたし、コーヒーに関しても、それ自体特別なものというよりも、家具や音楽といった暮らしの中にあるものと同じように、気持ちのよい空間にあるもののひとつとして捉えていましたね。

コーヒーも家具も松島さんのなかでは等価なものだったと。

松島そうですね。「パドラーズコーヒー」を始めたのも、誰もが集える空間、そんな場所をつくりたいという思いがきっかけです。コーヒーに関しては「パドラーズコーヒー」を一緒に始めたバリスタの加藤が、美味しいコーヒーを淹れる知識と経験値を誰よりももっていたので、彼にまかせています。僕はクラブなど飲食とは違う領域で遊んだり、ものづくりが好きでいろいろなショップなどに顔を出したりしていました。僕の仕事としては、つくり手とのつながりをつくってきた感じです。

松島さんの広い行動範囲のなかで出合った、好きなものや人を結びつける力で、コーヒーショップとインテリアショップという現在の立ち位置を確立されたということでしょうか。

松島自分がどうとかではなく、いろんなことをやっているうちに、まわりに才能のある人たちがたくさんいることに気づいたんです。4年前に「パドラーズコーヒー」を西原につくったときにも、大工さんも水道屋さんも電気屋さんもスケートで遊んでいたときの先輩たちでした。だから僕は自分ではチームづくりをした感覚で、僕自身が手を動かしてつくったという意識はまったくないんです。僕自身、手に職というようなタイプではありませんし、いまも昔も、どちらかというと才能をもった人たちとともに、チームをつくることが好きなんです。

この7月にオープンした「ブルペン」でもそれは同じですか?

松島ここでも自分のやっていることは変わりがありません。コーヒー屋をやっていても、いまではコーヒーを淹れることも少なくなりました。最初はそれがかっこ悪いと思っていて、「影練」ではありませんが、裏で練習をしたりもしましたが(笑)、結局、コーヒーに関しては加藤に淹れてもらったほうがいいと思い、途中でコーヒーを淹れるのもやめました。

それは僕のなかでは何も変わったことではなくて、雑誌やウェブの世界でも、編集の人が編集をして、カメラマンの人が写真、ライターの人が原稿を書くのと一緒だと思うんです。それで「パドラーズコーヒー」では、自分が出会っていいなと思ったアーティストやつくり手の人にお願いして、イベントを企画するのは僕の役目です。それが自分のできることで、出合った人の作品や仕事を紹介したいという思いと、何より好きなことだからやっているんです。

愛着があることで生まれる本物の価値観。

PADDLERS COFFEを始める前はどんなことをされていたのですか?

松島コーヒー屋を始めて6年になるのですが、高校から大学までの時間をアメリカのポートランドで7年間すごしました。ポートランドは、友達の友達は、どこかで会ったことのある知り合いだったりするような、とても小さな街でした。そこで出会う人のなかには陶芸家や、木工などのつくり手たちやアーティストもいて、その人たち同士がつながっていたりするんです。

ポートランドから戻ってからは、会社勤めをしたり海外を旅したり、いろんなことを経験しました。それで東京に戻ってコーヒー屋を始めてからは、世界中で出会った彼らの作品をお店で扱わせてもらったり、ポップアップをしたりを繰り返したり。それでたまたま、いまの場所にあったお店がビルに建て替えになり、その1階が空いているという状態でこの物件で何か出来ないかと商店街の人から相談されました。

「ブルペン」を始めたきっかけは、ビルの建て替えだったのですね。

松島「パドラーズコーヒー」は西原という街にあるのですが、実は僕は西原商店街の理事のようなことをやらせてもらっていて、この物件のことは前々から気になっていました。それで最初は自分がこの場所で何かをやるというのではなく、才能のある人たちに何かをやってもらいたいと思って、それでまずはお店をやりたいと思っている友人たちに声をかけました。

そのなかの一人がいま隣でギャラリーをやっている友人でした。「ブルペン」の隣の「commune」というギャラリーはもともと代田橋にありました。敷地は2つの空間を合わせて100平米あるのですが、最初は現在の「ブルペン」の場所にはスイーツのお店が入る予定でした。ですが、場所自体の制限もあって、飲食ができなくなっちゃったんです。ちょうどその頃、「パドラーズコーヒー」のお客さんでもあり、家具屋で働いていた庄司くん(現ブルペンスタッフ)と話す機会があって、物件の話があるから、家具屋を一緒にやろうと盛り上がって実際に動き始めたのが「ブルペン」です。

それがいつ頃ですか?

松島今年の3月頃です。

お店づくりはかなり急ピッチで進められたのですね。

松島ざっくりいうとそんな流れなのですが、自分の中でもこのようなお店をやりたいとはずっと思っていました。「パドラーズコーヒー」にはイベントスペースを併設していて、定期的にポップアップみたいなことをやっていたので、面白い人がいないかなとつねにアンテナをはってたんです。新しいお店である「ブルペン」に置いてあるものは、いままで「パドラーズコーヒー」でポップアップのイベントをやってくれた人たちのものも扱っています。というのも、イベント自体は3日ほどで終わってしまうのですが、それをみてくれたお客さんからは、あのときのあれはもうないんですかとか、どこで買えるんですか、と聞かれることが何度もありました。

いま「ブルペン」で扱わせてもらっている家具の作家さんは6名くらいいるのですが、彼らはみんな職人です。オーダーではつくるのですが、普段お店に卸しているわけではないので、お客さんから言われても、どこそこで見られると言うことが出来ない人もいました。どれだけいいものづくりをしていても、自分を売り出すことを得意としてない方もいると思うんです。逆に僕はそれほど手に職があるわけではなくて、いろんな人のものを、まるで自分のことのように人に紹介するのが得意だということはわかってました。そこで、こんなにいいものづくりをしている人たちがいるのだから、僕が彼らの営業マンになろうと思ったんです。

そこにはものやつくり手たちへの愛着やリスペクトが込められているのですね。お店で扱うものを選ぶ際に松島さんが大切にしているのはどのようなことですか?

松島「パドラーズコーヒー」にも「ブルペン」にも共通しているのは、自分が愛着があるものを扱いたいということです。だからここには代理店を通して売っているものはほとんどありません。お店で扱うものは実際につくり手に会いに行って、こういうお店をやるんだけど、ぜひ扱いたいとひざを突き合わせて話してます。ですのでお店がオープンするまでの2ヶ月間は、同世代のつくり手を中心に、フランスやアメリカ、イギリス、日本全国、飛び回っていました。アナログだけど、それが一番ダイレクトですよね。僕のこれまでの人生すべてに言えることなのですが、実際に会いに行って、話して、分かることを大切にしています。

お店をやるにあたり置くものを決めたというのではなく、そこまでのストーリーがあって、いまがあるのですね。

松島もちろん選んではいるのですが、これは「ブルペン」という店名にもリンクしてきますが、問屋を通して仕入れることは、誰もがやっていることで、それは自分がやらなくてもいいかなと思っているところがありました。ブルペンとは、野球のピッチャーが登板前に投球練習をする場所のことです。余談ですが実は僕は高校まで部活で野球をやっていました。ブルペンで何をしているかというと、ピッチャーとキャッチャーがいろいろな球種を試したり、キャッチーがピッチャーにこんな球はどう? とか掛け合ったり、本番前に少しリラックスしてより良い投球のためにいろいろ試す場所なんですね。

だからこのお店でも、ただつくり手から直接買うのとは少し違って、ブルペンでのピッチャーとキャッチャーの関係のように、僕が裏方にいて、つくり手に対してこうしたほうがいいものになりそうな気がするとか、そんな話合いを経たものを店頭に置いているんです。たとえば、ちょっとこのラインを丸くして作ってみてほしいと伝えて、実際にあがってきたものに対する反響がとてもよかったりとか。そうすると、売るぼくらもさらに気持ちをこめて、お客さんにおすすめできるんですよ。

ひとつひとつに、つくり手の存在と同時に松島さんの目が行き届いていると。

松島そうです。だからこそ「ブルペン」に並んでいるものに関して、僕も庄司もひとつひとつ説明ができるんです。コーヒーのときもそうでしたが、つくり手やそのものの背景をしっかり理解したい。そういうことをインテリアでやりたかったんです。

コーヒー屋さんもそうですが、世の中には素敵なお店がたくさんあって、それぞれが素敵なことをされています。だからほかとは違う価値観がないと、わざわざこの場所に来るということをしないと思うんです。ですので、なるべく自分たちじゃなければ出来ないこと…それが自分にとってはポートランドの知り合いであったり、つくり手の人たちとの関係性でした。自分にとってのパーソナルに近いものと向き合うことで、それができると思ったんです。コーヒー屋をやっていてもそうですが、愛着があるのかないのかは、お客様にもわかるんですよね。

いまの時代はインターネットでいろんなものを手軽に買うことができますが、それとはまったく違う価値観ですね。

松島インテリアをやる以上、いずれはウェブショップをやらなければとも思ってはいるのですが、わざわざ行かなければ手に入らないものがあってもいいのかなと思っています。

仲間とともにつくるリアリティ。

空間のデザインについて教えてください。「パドラーズコーヒー」もそうですが、「ブルペン」の内装もとても個性的で素敵なのですが、同じ方が設計しているのですか?

松島実はデザイナーはいなくて、全部僕らがやっているんです。

空間のデザインも松島さんがされているのですか?

松島「パドラーズコーヒー」のときもそうですが、空間も含めほぼすべてオリジナルでつくりました。自分たちでつくるのが好きだから、僕がアイデアを考えています。「ブルペン」でも、「パドラーズコーヒー」の什器や建具をつくってもらっているMOBLEY WORKSの鰤岡さんたちと一緒に考えて、それを図面にしてもらって空間をつくりました。すべてに僕なりのサンプリングネタがあるのですが、空間的にはものすごく無理を言って、「ブルペン」では「パドラーズコーヒー」ではできなかったことにもチャレンジしています。

「パドラーズコーヒー」では当時29歳の自分にとって、少し背伸びをした空間をイメージしてつくりましたが、ここでは扱うものの単価も違いますし、時間とともにいい感じに経年変化をしていく北欧ヴィンテージのような空間づくりを目指しました。西原商店街の中にある「ELLA RECORDS」や「wineshop flow」の内装にも携わらせてもらいましたが、内装やインテリアに関して考えることが好きで、今後はそれもしっかり仕事にしたいと思っています。このお店をやったことで、そんなことも言えるようになったのかなと思っています。

すべて自分たちでされているのですね。それは初めて知りました。DIYやシェア的な文化もそうですが、松島さんがそう思うようになったことにはポートランドでの生活や、スケーターとしての背景もあると思うのですがいかがでしょうか。

松島スケーターだからというのはおこがましいのですが、生まれ育った環境は大きく影響していると思います。生まれは中野で、祖父の代から中野駅北口の商店街で時計屋をやっていて、父も長いこと商店会長をやっていました。だから、スーパーに行けばなんでも揃っているのに、豆腐は豆腐屋、肉は肉屋、そんなふうに毎日の買い物をしているような家で育ちました。そういう感覚はいまも自分の中に根付いていて、商店街に対する感覚も同様です。家に普通に近所の人がいたり、子供も大人も、男性も女性も、おじいちゃん、おばあちゃんもいつも身近な環境でしたので、家に誰がいても抵抗がありません。そういう環境で育ったこともあって、飲食を経験しなくても、人にふれて、接客をすることも自然にできたような気がしています。海外での経験も含めて、たまたまですが育った環境は関係していると思います。

そのような空気感は「パドラーズコーヒー」や「ブルペン」にいても感じます。みんながこんにちは、とお店に入ってきたり、店員さんも親しみやすい空気で居心地のよい空間をつくっていますね。

松島だから僕らのお店にも、若い人やお年寄りも関係なく来てもらいたいし、実際そんな感じです。コーヒーも、ポートランドの豆だからとか、それを知らいない人にも、美味しいコーヒーとして楽しんでもらえている環境は嬉しく思っています。「パドラーズコーヒー」に行ったお客さんが「ブルペン」に立ち寄ってくれたり、この距離感がいいと思っています。それもそうですし、この街には小学校や保育園があって、子どもたちもお母さんもたくさんいるんです。若い人も、お母さんもお年寄りもみんなコーヒーを飲んで、カレーを食べて、古着やレコード、アートを楽しめるような街になったらいいなと思っています。

「ブルペン」の隣の場所にアートギャラリーに声がけをしたのも、友人としても街づくりのことを考えてもそうですが、ポートランドにいたときに、友達とスケートをして、何もわからずにギャラリーに行っていた経験があったからです。そんなふうにアートが日常にあると、絵を買って家に飾ってみようと思うかもしれないし、子供たちにとっても日常でアートにふれる機会ってとても大切だと思うんです。「ブルペン」もですが、そんなふうに誰でもウェルカムな状態でお店をやりたいといつも思っているんです。

松島さんのオススメアイテム3選

愛知県の稲熊家具製作所のランプ

愛知を拠点に活動する稲熊家具製作所がつくるランプ。松島さんと同世代のつくり手が手がけたもの。国産の木材を材に木工の轆轤挽きの技術を使ってつくるランプは、生活に馴染みやすいようにデザインしてもらっている一点もの。(一番左のものはブルペン別注です。)

ポートランドを拠点に活動する陶芸家DINA NOの焼き物

「ブルペン」では、日本人のサイズ感に合うようにリサイズしてつくったマグカップや湯呑などを展開。松島さんがポートランドのカフェで使われているものを見て気に入って、お願いしてオリジナルでつくってもらっている。¥6,500+TAX~

Folding Table L

横浜の木工所でつくってもらっている、ヴィンテージ家具をサンプリングした「ブルペン」オリジナルの折りたたみテーブル。部屋でサイドテーブルとして使ったり、アウトドアでの使用にも適している。コンパクトに折りたたみができるので、持ち運びにも重宝するニューヴィンテージ。¥34,000+TAX

フィリップ・ワイズベッカーが描いたショップカード

ショップカードの絵は世界的なアーティストであるフィリップ・ワイズベッカーが描いた。「僕が大好きな作家さんで、『パドラーズコーヒー』にも何度か来てくださいました。それでフランスまで会いに行ってお願いして描いてもらったのは、野球のブルペンで使われている車の絵でした」

BULLPEN ブルペン

住所:東京都渋谷区西原1-18-7
電話:03-6407-0526
www.bullpen-shop.com
INSTAGRM:@bullpenshop

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