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FEATURE|monessay ─迷う理由が金額なら買え、買う理由が値段なら買うな

monessay ─迷う理由が金額なら買え、買う理由が値段なら買うな

monessay ─迷う理由が金額なら買え、買う理由が値段なら買うな

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。今回は〈アークテリクス(ARC’TERYX)〉の「V80 ローリング ダッフル」。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta
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第十一回 迷う理由が金額なら買え、買う理由が値段なら買うな

の中を見回してみるとものが多い。あふれている。これはべつにうちに限った話ではない。家庭によってはテレビが複数台あったり、ラジオが何台もあったりするのは当たり前。スニーカーや靴は収納場所の許容量を超えて溢れているし、服もクロゼットにぎちぎちにかかっている。机の上や本棚もまるでカオス。いつか捨てよう整理しようと思ってもそれはいつも先送りにされ、年末の大掃除を生き抜いたそれらは次の年末が来るまで相変わらずひっそりとそこに鎮座したままである。

って帰ったらひとつ処分する。これがなかなかできないのだ。

う、新しく買うものってすでに持っているものの上乗せという場合が多い。

あるコンサルの人に「豊かさ」って何かと問われて答えられなかったことがある。ものに不自由しないってことかと思ったら、彼の定義ではものを複数持って、選択しながら使えることだという。

で例えると通勤する靴、運動する靴、お出かけに使う靴などを持つことが豊かということらしい。なるほどと思ったもんだ。

ういう意味ではいまの日本人は豊かすぎる。

じジャンル、カテゴリーの製品は家にダブってゴロゴロ転がっている。

代日本人にはやはり「捨てる技術」というものが必要なのかもしれない。そういうコンサルの人もいそうである。すでに同名の書籍はベストセラーだ。

ういうわけで、ちょっとやそっとのことでは我々消費者の財布のヒモは緩まない。もちろんぼく自身もそうだ。よほどのことがないと買い物をしようという気にならない。

や、このトロリーケースを見るまでは。

の欄は主に小牟田フイナムWEB編集長から振られたブツを真ん中において、落語で言うところのお題話のようなコラムを書こうというつもりなので、あまりものを褒めるというのはこの欄の求めるところではないのだが、これはちょっと久々に心を打った。

には30年くらい前に買ったリモアが複数、アンディアモ、パタゴニアなどのトロリーケースが様々なサイズである。ここ近年はこのパタゴニアが活躍していて、ほかはほとんど使ってない。つまりここでもものはダブって処分を待っているのである。

のにやられてしまった。

は昨年の今頃の展示会で発表されたときからいいなと思っていた。プレスプレゼンテーションが終わった会場でも、ひときわ人の輪ができていたのがこのトロリー。

直、いらない。パタゴニアあるもん。でもやっぱり買うかな。そうなるとパタゴニア処分しなくちゃならないけど、こんな使い込んだものメルカリでも売れなそうだから捨てることになるのか。そうなるとちょっと考えもんだな、などと迷ってる。

う理由が金額なら買え、買う理由が値段なら買うな、なんて箴言もあるようだが、迷う理由も買う理由もそれじゃない場合どうすりゃいいんだ?

も、ちょっと様子見で。

手すると最近の海外出張は大判のリュックで行くことも多いしね。

蔡 俊行

フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

アークテリクス

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