服を通じて、世界とコミュニケーション。
洋服屋のディレクションや、服のプロデュースは、今回が初めてなのでしょうか?
そうなんです。周りのみんなには言っていたんですけど、20年前くらいからやりたいと思っていて。本当に洋服が大好きで、文化服装学院へ行っていたんですけど、でも縫ったりするのが苦手だったのでアドバタイジング科という広告の方に行っていたんです。でもあるときから、欲しいけどそれがない、ということに気付いて、欲しいなと思う服の絵型を描き始めたんです。でも、それを何かにするでもなく、時は流れてしまって(笑)。そうしたら〈エム(M)〉の森くんが、「キャップやらない?」と誘ってくれまして。キャップだったら気持ち的にそんなにヘヴィーじゃないというか、ちょうどこういうキャップを作りたいなとも思っていたので、作ってみたんです。そうしたらの宮下くん(タカヒロミヤシタザソロイスト. )が展示会でワンラック貸してくれるというので、キャップだけの展示会もなんだなと思って、同じワードを使ったTシャツを作って。2回目の展示会では、この20年くらい描き溜めてきたデザインを落とし込んだアイテムを出しました。それが〈パラダイス(Paradise!)〉です。
何かにインスピレーションを受けてデザインされていたんですか?
映画が好きなんですけど、なかでもラス・メイヤーというカルト映画の監督の作品が大好きで。セクシーな服が出てくるんですけど、セクシーな服って日本にあまりない気がするのと。やっぱり日本人って、女の子は女の子らしいフレアのスカートとか好きな人が多いと思うんです。胸がガッと開いたものを日本人ってあまり着ないじゃないですか。私は割とエッジの効いたものが好きなので、そういうのを作ってみたいなと思っています。今回はカットソーが多いんですが、これから徐々に増やしていけたらいいですね。
「スリー(ThReY)」をディレクションされましたが、他の店と違う魅力は何でしょうか?
〈パラダイス〉のキャップは、英語で気になるワードを入れているんですが、海外に行ってもそれが共通言語となって『イェイ!』ってなることを意識をしています。「カスバ」もそうですけど、“インターナショナルに”という思いが常にあるので、海外の人たちがキャップやTシャツを見て『Yeah! Awesome!!』と言ってくれたりするんです。そういう感じで、コミュニケーションとれていけたら良いなって。海外の人たちが日本へ来てショッピングをしてくれたときに、売っているものは洋物なんだけど内装が和物だったりとか、そういうギャップを与えられるという意味では、他のお店と違うかもしれませんね。
昔からジャパニーズモダンのインテリアが好きで、とくにホテルオークラのロビーが好きだったんです。あの感じを、それこそカフェとかでいつかやってみたいなと思っていたこともあって。小津安二郎の世界じゃないですけど、あの時代のあの空気感をお店でも表現したいなと思いました。
キャップやTシャツは、人とのコミュニケーションツールだなと思うことがあります。キャップを作るようになった経緯というのは?
私は渋谷ラジオをやっていて、いつも告知用に記念写真を撮るんですけど、〈パラダイス〉をはじめる前はずっと好きなブランドのキャップを被っていたんですよ。そうしたら、「令子さん、最近キャップ被ってるよね、だったらキャップ作ってみない?」という話になって、キャップであれば洋服よりライトだし、自分も被りたいと思ったんです。それで、家で映画を観ている時に、“ Awesome” って言葉が本当によく使われていたので、なんかその感じがいいなと思って、吹き出しにてデザインしました。難しい言葉よりも、直感的に伝わる言葉を大切にしたくて。
今回、令子さんの人脈と信頼で、名立たるブランドとコラボレーションをされていますが、各々どんな内容のものに仕上がったのでしょうか?
はい! お陰さまで、生きていて良かった(笑)。ノブちゃん(ヒステリック・グラマー 北村信彦)は年がひとつ上なんですけど、かれこれ30年以上の付き合いで、この店をやることになって「コラボとかやってくれる?」と話したら、カスバのドアのところにある店のロゴを使ってTシャツを作ってくれました。私、チャイニーズの文字が好きなんですが、ノブちゃんもこのロゴをすごく気に入ってくれているようで、「アイデアが超浮かぶ」と言ってくれたんです。
実は、実家が150年くらいやっている下駄屋なんですよ。
〈アンダーカバー〉のTシャツもパンクな感じで良いですね。
ジョニオ(高橋盾)から「タトゥーの写真送って」と言われたから、最初は単に私のタトゥーの写真をTシャツにプリントするのかな、と思っていたら、まさかの想像もしていない、このベイビーに細かく私と同じタトゥーを入れるという。足にもちゃんと入っているんです(笑)。パンクドール。さすがジョニオ! だなって思いました。
〈タカヒロミヤシタザソロイスト. 〉とのコラボレーションTシャツはどんな内容に仕上がりましたか?
“SHE IS THE SOLOIST TOO.”って、本来は”HE”なんですけど、そこを”SHE”にしていただきました。〈パラダイス〉の展示会のきっかけを作ってもらったのも宮下くんだし、昨日(オープン前日)も「令子さん、お店いよいよ明日オープンだね! どんな店になっているのか楽しみにしてるよ」とLINEをくれました。
〈ベドウィン&ザ ・ハートブレーカーズ〉のTシャツ、この裸の女性は令子さんですね…(笑)!
私ね、かなりの枚数の写真をべべタン(渡辺真史)に送ったんですけど、なんでこれなんだろう?って(笑)。「令子ちゃん、これがいい!」と言うのは、私を知らなくても、なんかこの人パンチあるなっていう写真を使いたかったらしいんですよ。それでこの写真になりました(笑)。ちょうど胸が見えないですけど、私が店で裸になっている写真ですね(笑)
スタイリストの野口強さんとのコラボレーションアイテムは、どのような内容なのでしょうか?
写真は「カスバ」の看板なんです。うち(カスバ)の階段を降りたところに、「メンバーズオンリー」って、私が手作りで書いた看板があるんですけど、この写真とる人は珍しい。強くんはさすがですね。
令子さんがディレクションするということで、ワールドワイドなお店になりそうな予感がします。
「カスバ」で昔バイトしていたスタイリストさんがいるんですけど、今はロサンゼルスに住んでいて、息子さんが16歳。それでこの間、夏休みに息子を連れて日本に来たんですけど、そのときに、「ロスで令子さんの話になったんだよ!」って。16歳だし、なんで私の話になったんだろうと思ったら、ロサンゼルスの「シュプリーム(Supreme)」へ行ったら、スタッフが “Awesome!”のキャップをかぶっていたみたいで、「そのキャップ、母の友達がつくってるキャップなんだよ!」っていう話になったみたいで。それを聞いて純粋に嬉しかったし、もうこうなったら世界の全員にかぶらせてやろう! と思いましたね(笑)。国籍も年齢も問わず、みんなが着れるって本当に素敵なことだなあと。
自分にとっては、新境地なのでドキドキですけど、喜びも同時にありますね。この先の希望じゃないですけど、色々な国や年齢の人たちに来てもらいたいなと思います。まずは、「いいじゃん!」みたいなことから店を見に来てもらって、それが少しずつでも広がってくれたら嬉しいですし、このお店がコミュニケーションの場になれば良いですね。
この先にやってみたいコラボレーションはありますか?
実はすでに次を考えています。海外のファッションデザイナーは、日本へ市場調査的に来ることも多いので、この店も立ち寄る場所のひとつにしてもらえたら嬉しいですね。ルーズソックスも、原宿のゴスロリ的なスタイルも、海外にはない日本独特のファッションだと思うので。
「スリー」に世界中の人たちが来てくれて、洋服を見てテンションを上げてくれて、洋服でコミュニケーションをとれるということを願って、これからもお店のディレクションと洋服を作っていけたらと思っています。是非、楽しみにしていてください!
ThReY
住所:東京都渋谷区猿楽町2-7
電話:03-5728-6600
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