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謹厳実直なものづくり。エドウインのジーンズファクトリーで働く人たち。

The Pride of Japanese Jeans.

謹厳実直なものづくり。エドウインのジーンズファクトリーで働く人たち。

東北地方をジーンズの生産拠点としている〈エドウイン〉。各地にある工場は、地域雇用を基本としており、地元の人たちが日々、懸命にジーンズ作りにいそしんでいます。前回、製造工程をレポートした秋田県の裁断・縫製工場「秋田ホーセ」と洗い加工工場「ジーンズM.C.D.」でも、秋田に生まれ育った熟練のスタッフが多く勤務。今回は、そんな〈エドウイン〉のものづくりの現場で活躍する人々にクローズアップ。彼らの地元愛、ジーンズ愛をお伝えします。

  • Photo_Toyoaki Masuda
  • Text_Tetsu Takasuka
  • Edit_Yosuke Ishii
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秋田ホーセで働く人たち。

「秋田ホーセ」がある五城目町は、500年前からつづく伝統の朝市で知られます。毎月、2、5、7、0の付く日に開かれる市では、生活用品から野菜に山菜やキノコといった山の幸までがずらりと並び、大きな賑わいを見せます。また、市内には清流が流れており、きれいな水を使った稲作も盛ん。郊外には田んぼが広がるのどかな風景を目にすることができます。

「秋田ホーセ」の近くには、豊かな水を使って美味しい日本酒や焼酎を作る老舗の蔵元「福禄寿酒造」があります。実は3年前、〈エドウイン〉と福禄寿酒造は地域活性化のためにコラボレート。人気の純米酒「一白水成」のロゴを染め抜いたセルビッジデニム製の前掛けを作成しました。このように、〈エドウイン〉そして「秋田ホーセ」は五城目町の地域にしっかりと根付いているのです。

そんな五城目町の中心部に「秋田ホーセ」は工場を構えています。以前、紳士服の縫製工場だった建物をジーンズの裁断・縫製工場として生まれ変わらせました。〈エドウイン〉の自社工場の中でも最も歴史の長い工場のひとつで、〈エドウイン〉を代表するフラッグシップモデルなどを手がけています。ここでも、製造に携わるのは主に地元で生まれ育った人。中には、親子二代で勤めているという人もいます。

EDWIN EANS FACTORY FILE 01 _工場長

親子二代で紡ぐジーンズ愛。

「秋田ホーセ」の工場長を務める五十嵐夕佳さんも親子二代で〈エドウイン〉のジーンズ製造に携わるスタッフの一人です。

「実家が工場のすぐ近くで、母は20年間縫製の仕事をしていたんです。子供の頃に〈エドウイン〉のジーンズを買ってもらったのを覚えていますね。高校生の頃からジーンズが大好きになってよく穿いていました。穿き続けるうちに風合いが変わっていき、色褪せてもカッコいいジーンズには特別な魅力を感じていました」

五十嵐さんは母が定年退職したことをきっかけに、9年前に「秋田ホーセ」に就職。1年前に工場長に抜擢されました。柔らかな物腰と品質に対する妥協のない姿勢で、総勢60名のスタッフをまとめあげています。

「最初はCADで裁断の型紙を作る作業から始めました。ジーンズにどんなパーツが使われているのかすべて把握できたことが、後で役に立ちました。工場長とはいえ、裁断や縫製それぞれの工程で熟達したスタッフの方がいらっしゃるので、私はまだまだ教えてもらう立場です。周りの人に助けていただきながら、みんなで工場を盛り上げていきたいと思っています」

ジーンズ作りにおいて大切にしているのはとにかく品質だと五十嵐さんは語ります。

「スタッフのみなさんには、自分が欲しいと思えるようなジーンズ作りをするように伝えています。自分が少しでも納得がいかないものを、お客様に気に入っていただけるはずがありません。常にお客様の目線に立って、より良いものを作れるようにみんなで努力しています」

「秋田ホーセ」での一日の生産目標は約1300本。これだけの数をできるだけ不良が出ないようにスムーズに生産しなくてはならないのですから、操業中は片時も気が抜けません。しかし、大変な分、やりがいがもひとしおだと五十嵐さん。

「ひとつのモデルにつき、数百〜数千本単位のオーダーがあります。ひとつのオーダーの生産が完了し、“これで終わりです!”という声を聞いた時の達成感は格別です。それでまた次のオーダーに取り組むモチベーションが湧いてくるんです」

ジーンズ作りに情熱を傾ける五十嵐さん。エドウインのジーンズは20本ほども所有しているのだとか。

「仕事をする時は必ずエドウインのジーンズをはいています。新しいモデルのサンプルを作るところから商品として出荷されるところまで全部見ていると自然と愛着が湧いてくるんです。だから、お店に並んでいるのを見るとついつい手にしちゃって。商品タグに記されている工場ナンバーは必ず確認しますね(笑)」

「豊かな自然があり、食べ物もお酒も美味しいところが秋田の魅力」と語る五十嵐さん。これからはジーンズもまた秋田の新たな名産として知られていくことでしょう。

五十嵐夕佳 / 秋田ホーセ 工場長

2009年に秋田ホーセに入社し、CADによる裁断パターンの作成を担当。昨年より工場長に就任。〈エドウイン〉の魅力について、「メイド・イン・ジャパンであることと縫製の技術の高さ」と語る。

EDWIN JEANS FACTORY FILE 02_裁断スタッフ

30年間培ってきた裁断の技。

金子和仁さんは、秋田ホーセに勤めて30年。裁断の工程一筋のベテランスタッフです。

「高校生の頃にこの工場で少しアルバイトをしていたことがあったんです。その時は裁断した生地を運ぶ作業を任されていましたね。その後、一度、県外に出て別の仕事に就き、Uターンして秋田ホーセに就職しました。ちょうど工場が拡張し、新しい建物ができた年のことでした」

完成したばかりのピカピカの建物が印象的だったと語る金子さん。いまではコンピュータと機械により、裁断の工程はオートメーション化されていますが、当時はすべて手作業で裁断していたといいます。

「最初は全然上手く切れなかったので練習を繰り返しましたね。いまの裁断機では生地を30回ほど折って裁断しますが、手作業の時はさらに多い40折や50折で生地を切っていました。今でも足りないパーツを切り出す時などには手作業で裁断することもあります。昔、身につけた技術が役立っているんです」

裁断の工程が自動化されたからといって、機械まかせにしておいていいというわけではありません。

「生地によって裁断の仕方を微調整する必要があるんです。例えば、冬物の生地だと裏地がついていたりして、2層3層になっているものがある。そうすると普通のデニム生地と同じようには切れません。また、ストレッチ素材など、切った後に縮んでしまう生地もある。そういう時は、機械を動かすスピードを遅くしたり、一度に切る生地の枚数を減らすなど、生地に応じたセッティングを考える必要があります。1ミリや2ミリだけでもパターンからズレてしまうと、その後の工程が進められなくなる。ですから、新しい生地が工場に来た時は、最適なセッティングになるように機械を微調整して失敗を最小限に食い止めるように努力しています。それができるのも、工場で長年にわたって蓄積してきた裁断のノウハウがあるからなんです」

〈エドウイン〉のジーンズの中でも、秋田ホーセが手がける最もスタンダードでシンプルではきやすいインターナショナルベーシックシリーズが好きだという金子さん。いつかは自分で1本のジーンズを作ってみたいと話します。

「人手が足りない時はたまに縫製を手伝うことがあるのですが、あまりやったことのない作業は楽しいものです。いずれ縫製の技術も身につけて、自分で裁断して縫製したジーンズをはいてみたいですね」

金子さんのように技術の習得に意欲旺盛なスタッフの方々が、秋田ホーセのものづくりを支えつづけているのです。

金子和仁 / 裁断スタッフ

1988年に秋田ホーセに入社後、裁断の工程を主に担当。手裁断で培ってきた技術と経験をもとに、裁断機を駆使して正確に生地を切り出す。「食べ物も美味しくて、やっぱり地元が落ち着きます。大変なのは雪かきくらいですね」

ジーンズM.C.Dで働く人たち。

〈エドウイン〉のジーンズの洗い加工を行なっているのが、「ジーンズM.C.D」。秋田市の中心部から北西に車で15分ほどの土崎港周辺にあります。男鹿半島の付け根に当たる土崎港は旧くから海運で栄え、現在は多くの工場が立ち並んでいます。また、このエリアは風力発電に適していることから、巨大な風車が設置されており、独特の景観を生み出しています。

洗い加工を行う「ジーンズM.C.D」では、大量の水を使います。そのため、近くに川が流れ、海に近いうえ、「秋田ホーセ」からもほど近いこの場所が理想的な立地だったのです。

〈エドウイン〉が「ジーンズM.C.D」を設立したのは平成元年のこと。Manufacturing=ジーンズの製造、Cleaning=ジーンズの特殊洗い加工、Development=ジーンズの新商品開発、それぞれの頭文字をとって名付けられたこの施設は、ジーンズ作りの最後の仕上げを担っており、ここから商品の形になったジーンズが全国に送られていきます。ジーンズの表情を決める繊細な洗い加工、そしてユーザーの元に完璧な形で商品を届けるための検品作業など、重要な工程が行われていますが、ここでもやはり地元愛とジーンズ愛にあふれるスタッフの方々が腕をふるっていました。

EDWIN JEANS FACTORY FILE 03_M.C.D.スタッフ

ジーンズに熱を込める若きクラフツマンたち。

「ジーンズM.C.D」では、ベテランから若手まで幅広い年代のスタッフが働いています。今回はその中でも、これからのジーンズ作りを支えていく若きクラフツマンたちに話を聞きました。集まっていただいたのは、主にサンプルの洗い加工を手がける企画係の鈴木健さん(勤続14年 / 写真左)と小助川裕さん(勤続11年 / 写真右)、そしてシェービング加工などを担当する前工程係の大友富美子さん(勤続12年 / 写真中右)、最終の仕上げや検品を行う仕上げ係の鎌田綾香さん(勤続5年 / 写真中左)。4人とも秋田に生まれ育ちました。

「元々、ものづくりに携わる仕事がしたいと思っていたのですが、ジーンズを加工するという作業に強く惹かれて入社を決めました。元々、ジーンズが好きだったので、その味わい深い表情を作り出す仕事に興味を持ったんです」(小助川さん)

「ブラッド・ピットさんのCMで〈エドウイン〉のことは昔から知っていましたが、実は秋田に工場があることは知りませんでした。その後、地元・秋田で世界に知られるブランドの商品を作っていることを知り、ここで仕事をしてみたいと思うようになりました」(大友さん)

みなさんやはり、元々、ジーンズに興味があって入社を決めたようです。

鈴木さんが担当しているサンプル加工の工程。サンプル用のミキシングマシンを使ってジーンズを洗い、オーダーされた通りの色落ち具合になるように調整を繰り返します。

「一度、洗いをかけて乾燥させた後にシェービング加工をするなど、理想的な表情を出すために色々な方法を試します。時には自分でジーンズをはき込んでみることもあります。自分が考えた加工方法を使ったジーンズが商品になった時はとてもやりがいを感じますね」

4人の中で一番若手の鎌田さんは、加工が終わったジーンズを整え、商品として出荷できる形に仕上げる作業を担当しています。

「乾燥してシワが入ったジーンズに機械でスチームを当てて伸ばしたり、残った糸を切ってアイロンをかけたりしながら、不良がないかどうかチェックしています。お客様に確かな品質のジーンズをお届けするため、見逃しのないように常に集中しています」

仕事中は真剣そのものの4人ですが、取材中はみなさん笑顔がこぼれ、和気藹々とした雰囲気。部署は違えど、工場で毎日顔を合わせるので、お互い気心の知れた仲なのです。

「各工程は個人作業ですが、すべての工程がつながっているので、前の工程のことも後の工程のことも考えながら作業に取り組んでいます。自分の工程で失敗したり、手間取ったりすると全体に影響するので気が抜けません」(鈴木さん)

「先輩方に恵まれていて、何でも相談に乗ってくれます。わからないことや判断に迷うことがあれば、すぐに先輩に聞きにいきます。風通しのいい雰囲気なので、とても仕事がしやすいですね」(鎌田さん)

「私は入社したての頃、鈴木さんからシェービングのやり方を教えてもらいました。みんなで中心部に飲みに行くこともありますよ。でも、その時は仕事の話は一切しません(笑)」(大友さん)

小助川さんは、試験用のミキシングマシンで加工したサンプルの色落ちを本番で再現できるようにする工程を担当。同じ条件に設定しても、試験用と本番用の機械では色味にブレが生じることがあるのです。

「本番でも忠実に色落ちを再現できるように、少しの色の違いにも妥協せず、何度も繰り返して試験を行います。難しい加工や初めてトライする加工に成功した時の達成感は格別ですね」

大友さんは、普段はシェービング加工を担当していますが、状況に応じて仕上げの工程を担当することも。ジーンズにフラッシャーや下げ札をつけ、同時に検品も行います。

「製造現場のプロだということを意識して、長時間の作業でも集中力を切らさないように気をつけています。また、お客様の立場に立って、細かいところまでチェックするように心がけています」

後輩に指導する鈴木さん。自分の知識と経験を伝えることで、新たな戦力が育っていきます。

乾燥が終わったジーンズをパンツトッパーという機械にかけ、スチームを当ててシワを伸ばします。鎌田さんは、この工程と仕上げの両方を一日にこなします。

ウォッシュ加工が終わったジーンズを入念にチェックする小助川さん。ベルトループなどのパーツにダメージを与えていないかどうか、細かいところまで気を配ります。

真剣な表情で下げ札をつける大友さん。「自分が手がけたジーンズがお店に並んでいたり、街中ではいている人を見かけた時はテンションが上がります!」

作り手側として毎日触れている〈エドウイン〉のジーンズですが、皆さんそれぞれ何本も愛用しているそうです。どこに魅力を感じているのか聞いてみました。

「バリエーションがとても豊富なので、自分の好みに合ったジーンズが見つかりますし、幅広い年齢層の人にはいていただけます。」(小助川さん)

「同じシリーズでも時代に合わせて細部を変えているので、古さを感じさせないところが魅力です。たまに自分のジーンズを加工して、雰囲気を変えてはいてみたりもしています(笑)」(鈴木さん)

仕事にプライドを持ち、ジーンズに愛を持つ4人の若きクラフツマン。彼らのようなスタッフが、これからの日本のジーンズシーン、そして秋田のものづくりを盛り上げていってくれることでしょう。

鈴木 健 / 第一生産課 企画係(左)

「海も山もあり、自然と触れ合える機会が多い秋田の土地が大好きです」

鎌田綾香 / 第二生産課 仕上げ係(左中)

「自分が住む町に帰ると近所の人が“おかえり”と挨拶してくれる。そんな人の温かさが秋田の魅力です」

大友富美子 / 第二生産課 前工程係(右中)

「秋田は自然が多く、子育てもしやすい地域です。自分の子供にもエドウインの服をたくさん着せてきました」

小助川裕 / 第一生産課 企画係(右)

「美味しい食べ物がたくさんあるのも秋田の魅力。とくにきりたんぽ鍋は大好物です」

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