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アディダスと考える「ものづくり」におけるイノベーション。  VOL.1 イベントリポート編

ADIDAS ALPHAEDGE 4D

アディダスと考える「ものづくり」におけるイノベーション。 VOL.1 イベントリポート編

これまで見たことのなかった摩訶不思議なミッドソールを搭載した〈アディダス(ADIDAS)〉の新しいシューズ「ALPHAEDGE 4D」。先日公開されたこちらの記事でも取り上げているように、このアイテムには「ADIDAS 4D」と呼ばれる最先端のソールテクノロジーが用いられています。じつはその正式な発表に先立ち、ファッションデザイナーやアーティストなど、ごくわずかなインフルエンサーたちを対象としたリリースイベントが行われ、〈アディダス〉の要人やゲストスピーカーによる対談を実施。そこで語られていた「ADIDAS 4D」のすごさ、そして今後についてをここにレポートします。

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これまでの常識を覆す「ADIDAS 4D」のすごいところ。

最先端の3Dプリント技術を用いて作られるアディダスの新しいミッドソール「ADIDAS 4D」。通常のスニーカーでは金型を用いた“フォーム”と呼ばれるパーツを製造することでミッドソールがつくられていました。もちろん、金型をつくるには時間がかかるし、できたところでそれがアスリートの足にフィットしなければ意味がない。ミッドソールの開発はそれだけ大変ということです。

ですが、「ADIDAS 4D」はその常識に当てはまりません。むしろ、それを覆したと言えるでしょう。それはなぜなのか? その理由はアディダス ジャパンの副社長であり、マーケティング事業本部長であるトーマス・サイラー氏の言葉にあります。

「我々は“フューチャー・クラフト”という概念のもと、実験的で概念的なイノベーションに取り組んでいます。『ADIDAS 4D』は光と酸素を用いて生まれた最新のイノベーションです。これはスポーツや人類、そして地球までをも変える可能性を秘めています。製造のスピード、量産の規模、そしてアスリートのためにカスタマイズされたオンリーワンのパフォーマンス製品をつくるという意味では、我々にとって大きな転換点となることは間違いのない事実です。“4D”という名にある4つ目の側面は、データを用いて、アスリートそれぞれに対して個別のプリントができるということです」

これに続いて〈アディダス〉のフューチャープロジェクトのシニア・デジタルクリエイターであるジャック・ペロー氏が登場。どのようにして「ADIDAS 4D」の開発が可能になったのかを語ってくれました。

「『ADIDAS 4D』はディープテック・カンパニーであるカーボン社とのパートナーシップによって誕生しました。そこに我が社が長年蓄積してきたアスリートデータを活用して、彼らのパフォーマンス向上のために何度もデザインのシミュレーション、そして最適化を行い開発されたのです。プリント技術を利用することで金型は必要なくなり、開発の段階からエンドユースパーツ、つまりプロトタイプではない完成品と同じ素材の使用が可能となりました。これによって開発サイクルが加速化。つまり、フットウェアのクリエーションプロセスを完全にデジタル化することができたのです。『ADIDAS 4D』はフットウェアづくりの新しい時代を切り拓いていきます。いまだかつてないレベルでアスリートの真のニーズを満たすことができるでしょう」

つまりはデータと3Dプリント技術を融合させることによって、その製造スピードが驚くほど早くなり、より精度の高い商品の開発が可能に。しかもそれは、ゆくゆくはカスタマイゼーションのレベルまで押し上げられるようになるということです。

従来の3Dプリントと「ADIDAS 4D」のちがいとは?

続いてイベントは関係者やゲストスピーカーを招いた対談のセクションへ。ここでは3つのステージが用意され、「ADIDAS 4D」の魅力が多角的に語られていました。

はじめに登壇したのは、先ほども登場したアディダス ジャパンの副社長、トーマス・サイラー氏と、〈アディダス〉とパートナーシップを結んで共に開発を行ったカーボン社のブランドマーケティングの責任者であるシャノン・フェルナンデス氏でした。

「カーボン社がそもそもどんな企業で、どんな仕事を担当しているのでしょうか?」という司会者の質問から対談はスタートしました。ここからは両者の対談形式でお届けします。

シャノン私たちのコラボレーションは2016年の4月からスタートしました。その前に我々に注目が集まったのは2015年のこと。世界規模の大きな講演会である「TED(Technology Entertainment Design)」の舞台でした。カーボン社独自の技術であるデジタルライト合成は光と酸素を利用した、これまでの3Dプリント技術を大きく超えるものを発表しました。この頃、世界で最も権威ある『サイエンス・マガジン』の表紙も飾りました。

トーマス非常にエキサイティングな技術ですよね。私は科学者ではないのですが、これは我々の知っている3Dプリントとは一線を画すものだということは分かるんです。その違いについて詳しく教えていただけますか?

シャノン3Dプリントというのは30年程前から存在しています。我々のテクノロジーとの大きな違いは、解像度ですね。私たちは非常に緻密で高品質なパーツの製造が可能なんです。そして表面もキレイ。従来の3Dプリントはクオリティーで満足できるものはありませんでした。しかし、我々はそんなことありません。

トーマス最後にもうひとつ。製造のプロセスにおいて、アスリートや消費者のデータを活用してカスマイズできるということでした。それはどうやって実現するのでしょうか?

シャノン従来の3Dプリントと異なるという部分で、「ADIDAS 4D」はコンピュテーショナル・エンジニアリングを活用しているということが挙げられます。「ADIDAS 4D」の内部にはたくさんの筋があるのですが、それをエンジニアリングによってカスタマイズしているんです。

「ADIDAS 4D」の要はデータ測定にあり。

続いて対談に登場したのは、〈アディダス〉のスポーツ サイエンス ディレクターであるブレイン・ヘッティンガー氏と、現代クリエイターのためのワークウェアをデザインする〈テアトラ〉の上出大輔氏でした。対談はおふたりの自己紹介からスタートしました。

ブレイン私のキャリアは学術界でスタートしました。スポーツ力学で博士号を持っているんです。スポーツ機器をアスリートのためにパーソナルに最適化する研究をしたあと、ランニングに関するクッショニングの研究を行い、ハイクオリティーなアスリートのデータ収集メソッドを開発しました。〈アディダス〉には2015年にスポーツ・サイエンス チームの一員として加わりました。これは、アスリートのパフォーマンスを向上させるための部門です。

上出〈テアトラ〉というブランドをやっています、上出と申します。このブランドは〈アディダス〉のようなスポーツブランドではなく、ビジネスウェアのなかにどういった機能を持たせることをコンセプトにデザインしています。

ブレイン我々のチームでは何十年も前からアスリートのデータを収集しています。「ALPHAEDGE 4D」に関しては運動力学、体の動き方のデータ、そして内外にかかる負荷のデータを使いました。これを足の動きや、アッパーの伸縮の計測に利用しています。

ブレインあとは足の下の圧力、つまりインソールへの負荷データも活用していますね。上出さんは我々とは異なるデータを活用していると聞きました。それはどんなものですか?

上出ぼくたちはビジネスウェアをつくっています。これは、なかなか数値できるものではないと考えています。ビジネスをより快適にするとか、成功しやすくするといったことを目標にしていて、数値として置き換えるのが難しいんです。

上出とはいえ、このシューズを履かせてもらってお世辞抜きにワクワクしました。まるでSFの世界が実現したような感覚です。このソールを開発したことによって、アスリートに対してどのような利点を与えることができるのでしょうか?

ブレイン大きな利点のひとつは、ミッドソールの製造がより早くできるようになったということです。それによりアスリートとより多くの対話をすることができました。通常であれば4種類のプロトタイプを用意してデータを採集するのですが、「ADIDAS 4D」の場合は毎週新しい試作品をつくり、フィードバックをしてもらいました。製造過程において毎週50種類もの試作品にトライしてもらったんです。

ブレイン「アスリートにベストなものを届ける」という我々の哲学を体現することができたと思います。上出さんにとってのブランドの哲学はどのようなものなんですか?

上出アスリートに対して最高のパフォーマンスを発揮させる環境をつくるのと、基本は同じです。その対象がちがうだけですね。ぼくたちの場合は働く人。デスクワークをしている人やクリエイターですね。〈テアトラ〉も最高のパフォーマンスを発揮することを最重要視してやっています。

ブレインそれは素晴らしいですね。〈アディダス〉はいつも共にクリエイションを行えるデザイナーを探しているんですが、いつか一緒におもしろいことができたらいいですね。

上出ビジネスシューズの企画とかできたら楽しそうです。

同じ足のサイズでも、体重が変われば靴への圧力も異なる。

最後の対談では〈アディダス〉のフューチャープロジェクトのシニア・デジタルクリエイター、ジャック・ペロー氏と、ビジュアル制作をメインにしたクリエーションカンパニー、「KANDO」のCEOである田崎佑樹氏が登壇。未来のためのデザイン、ものづくり、クリエイティビティというテーマで対談が行われました。

田崎「KANDO」という会社の創業者兼CEOの田崎と申します。我々はよくディープテックやベンチャー企業とコラボレートしています。人類の共通の問題を解決する革新的な技術をもった会社のことです。

私たちが考える“ビジョン”というものは、決して概念的なものではありません。ブランディングと現実の両方に根ざしているものと考えているからです。クリエイティビティ、ファイナンス、そしてテックとサイエンス。そのすべてを統合しなければ社会的なインパクトを出したり、新しい文化を醸成させることができないと考えています。

ジャック非常にユニークなプロジェクトをされていますよね。我々もディープテックな企業であるカーボン社と仕事をしているわけですが、田崎さんがこういったテック度の高い会社と仕事をする際に、どのようなことを大事にしていますか?

田崎ハードコアな技術をしっかりと理解することが必要だと思っています。こういった対談でも、相手の考えを理解して咀嚼しなければ、会話は成立しませんよね。ジャックさんはどのように考えていますか?

ジャック私がカーボン社とのプロセスにおいて重要視しているボトムアップの原則です。同じ目線に立って、どういったプロセスでどうやってプリントすれば、アスリートにとってベストな製品ができるのかを考えているんです。

田崎〈アディダス〉はライフスタイル商品もつくっているわけですが、明確なビジョンがなければ、新しいアイデアをビジュアルの世界に落とし込むことは難しいと思うんです。つまり、エンジニアと同じビジョンを共有することが大事だと思うんですが、それはどのようにして実現していますか?

ジャックこの商品は誰のためのものなのかを見つめる必要があります。製造者である我々、つくられる商品、そして消費者の3点を糸で繋がなくてはならない。つまり、最終的にはいちばん人間らしいものをつくっていくべきであると思っています。それをするために、トレーニングやランを通じてアスリートの気持ちを理解し、我々の想いも届けているんです。

ジャックこれまでにも語られてきたように、この「ADIDAS 4D」のテクノロジーをカスタマイゼーションのレベルまで持っていきたいと思っています。私は痩せ型ですが、体重の多い人と足のサイズが同じ場合、靴にかかる負担は変わってきます。それってなんだか変ですよね? そういう意味合いにおいて、データを利用してより人間らしい商品をカーボン社と共につくっていこうとしているところなんです。

ということで、3つの対談が終了しイベントも閉幕しました。技術とデータの融合によって〈アディダス〉が起こしたイノベーション。自分たちの想像をはるかに超えたアプローチに、ただただ驚くばかりでした。いつかオーダーメイドのスーツをつくるような感覚で、カスタマイゼーションされたラニングシューズが我々の手に届く日もそう遠くはなさそうです。

なお、11月17日にリリースされた「ALPHAEDGE 4D」はわずか数日で完売したものの、今後も「ADIDAS 4D」を搭載したさまざまなシューズは展開される模様。最新情報は下記のオフィシャルサイトで更新されるので、こまめなチェックをお忘れなく。

アディダスグループお客様窓口

電話:0570-033-033(土日祝除く、9:30~18:00)
shop.adidas.jp/4d

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