CLOSE
一歩引くことで開けた、大北幸平の新たな視界。

VAINL ARCHIVE teamed up with Reebok Classic again

一歩引くことで開けた、大北幸平の新たな視界。

”ありそうで無いもの”という枕詞で語られるブランド〈ヴァイナルアーカイブ〉が、2018年の2月に引き続き〈リーボック クラシック〉と再びコラボレーション。しかも、今回のモデルはグローバルでも展開されることが決定。更に近年では、〈マーモット〉や〈キーン〉といった、いわゆるインターナショナルブランドとのコラボレーションを数多く実施。これまでの〈ヴァイナルアーカイブ〉では成し得なかった、より大きなアプローチが続いています。ブランド設立から10年を経て、なぜ今コラボレーションを積極的に行っているのか? その真相を探るべく、デザイナーの大北幸平さんにインタビュー。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コラボレーションをやることで吹っ切れました。

ここ数シーズン、グローバルブランドとのコラボレーションが増えています。

大北そもそもは、自分からコラボレーションをやってみたいってところからスタートしたんです。けど、いざやってみると、自分だけでは手に負えない領域にまで人が関わっていることに気付いて(笑)。これは今までのやり方、自分が好きなものをつくるというスタンスでは通用しないなと。

実際の売り方じゃないですけど、今まで〈ヴァイナルアーカイブ〉を買ってきてくれたお客さん以外の人たちに対して、このブランドはどう映るんだろうって、本気で考えるようになったんですよね。

大きいメーカーとうちみたいな小さいブランドがやるっていうハードルの高さも知ったし。それに、単に自分が欲しいものだけを作るっていうのは、ちょっとズルいなっていう考えが一瞬頭をよぎったんですよね。

ズルいというのは、コラボレーションをするパートナー、お客さん双方に対してということですか?

大北そういうことですね。せっかくグローバルなメーカーと仕事ができるのであれば、より多くの人に知ってもらうためにものづくりをするのが僕の役目なのかなと。でも、結局自分の脳味噌は1つだから、色のバランスとかにらしさが出てくるんですよね。

今回の〈リーボック クラシック〉とのコラボレーションも、要はうちはカラーリング提案と、世界観をヴィジュアルで見せるためのルックをつくったりっていうところなんですけど、いかに自分をアピールしながら、新しい違和感を生み出せるのかな、みたいなことを考えて。

〈マーモット〉のダウンとかも、あれは〈ビューティ&ユース〉さんが共同でやってくれている以上、〈ビューティ&ユース〉の店舗に足を運ぶ方のことを意識しましたし。

共同というのは、ポップアップを毎回開催されているということですか?

大北いや、ロットの問題ですね。最低限の量でさえ、うちのような小規模なブランドには負担が大きい。そこを〈ビューティ&ユース〉が販売の面でサポートしてくれたんです。

それはそれでありがたかったんですけど、一方で売れなかった場合は自己責任では済まないというか。やるからには〈ビューティ&ユース〉で売れるものをつくらないといけない。〈ヴァイナルアーカイブ〉を知らない方にも納得してもらうというか。それが結果としてコラボレーションのパートナーの満足度にも繋がるじゃないですか。

つまり、大きいコラボレーションをやるのって、メリットとデメリットの振り幅が大きいなって、やってみて気付いたんです。でも、あえてやっていかないと知ってもらえないし、よりマスっていうか、名前を知って欲しいっていうか。

〈ヴァイナルアーカイブ〉がどんなことをやっているのかとか。今までは斜に構えていて、人に知られたくない訳じゃないのに、ちょっとそういうところがあって。変な逃げなのか、矛盾みたいなものがあったんですけど、コラボレーションをやることで吹っ切れましたね。

今までのお客さん以外の方々が、目にするからですか?

大北裸にされるんですよね。通用しなかったら通用しないし。名前がないのは知ってたの、自分のブランドが。じゃあどうやったら知ってもらえるんだろう? って考えるのが、凄い勉強になったんですよね。物をただつくって売るだけじゃもう通用しないじゃないけど、わかってはいたけど、痛感したっていうか。

より多くの方に認知してもらうための試作(コラボレーション)が、逆に自分の培ってきたものを見つめ直すきっかけになったということですね。

大北これまでのお客さんには、もちろん満足してるし、感謝しかない。でも、止まっているよりは他の人にも知ってもらいたいし、見てもらいたいなと。でも、過剰に飽和させたくはないんです。そこまでいったら自分じゃコントロール仕切れないんだろうなって思うし。

けど、知られていないよりは知ってもらわないとね。〈ヴァイナルアーカイブ〉の服を作ってくれている工場さんとか、生地屋さんも数量がまとまらないと仕事がまわらないし。地方のディーラーさんも、今いる顧客さんだけでまわしていくのって限界があって。

宮崎の卸先さんで毎回展示会を行っているんですけど、訪れるお客さんの顔ぶれが変わっていると、どこかホッとする部分もあるんです。それにはちょっとミーハーなところも必要だったりするし。待ってたら終わっちゃうなって。

それは前の会社の時に気付いたんだけど。当時は景気が良いときで、自分は浮かれちゃってて、良いところにいるぞ俺、って何も行動しなくて。逆にちょっと引いたんだよね。わざと見え隠れするじゃないけど、難しくしちゃって。

宣伝することを悪とすることみたいな風潮があって。そういうので失敗したことも分かっていたから。〈ヴァイナルアーカイブ〉を自分で始めて、関わる人がどんどん見えて来て、この人たちは何で食ってるかとか、この雑誌は何で食ってるのかとかを考えるようになって。

関わる人たちをより意識するようになったんですね。

大北そうですね。そういうことの集大成的な感じがあるんですよね、コラボレーションって。メールのやり取りにもccに沢山人がいたり(笑)。でも面白いのが、どう宣伝した方が良いかとか、どういう色でやっていくのかとか、もちろん自分のブランドの名前も出したいなとか、そういうのも全部やっていくと、逆に物を売る楽しさみたいなことが見えてくるんですよね。

「SALT & PEPPER」でやってる事や〈ヴァイナルアーカイブ〉単体(インライン)もまた別なんですよね。コラボレーションとかコラボレーションパートナーとの取り組みのに関してだけ、頭が違うんですよね。

いざ手をあげてみたら、意外と何も出来ないぞって思って。

なるほど。でも、あくまでここを通して、〈ヴァイナルアーカイブ〉の世界観に触れて欲しいという気持ちがあるってことですよね。

大北そこだけ、最後の、昔気質なところが残っているのかもしれません。それに、その方がお客さんにとっても面白いのかな? と思いながらやってますね。

それって、ブランドに関わる人、購入してくれている人がこんなに沢山いるんだ! みたいな思いの積み重ねでもありますよね?

大北ありますね。そこは綺麗事な部分かもしれないですけど。最初は自分のことだけ考えてたんですけど、それじゃ無理なんですよね。

他の企業とのコラボレーションを行うことで、いわゆる〈ヴァイナルアーカイブ〉のインラインのアイテムを作るときの頭も変わりましたか?

大北必然的に変わってきますよね。クオリティを凄い気にするようになりました。良い生地屋さんから、良い生地を仕入れて、世界的なブランドの服を縫っている工場で縫いましたとか、そんなこと言ってる場合じゃないぞって。それって出来ているつもりでいただけだったんだなと。

お客さんにお金を出して買ってもらう以上、良い方が良いっていうのは最低限だなと思うようになったら、そういう視点になったんだよね。良くも悪くも、追求しすぎると非情な部分も出たりするけど、そこのトライ・アンド・エラーみたいなところが前よりも明確に出ましたね。

クオリティをより追求するようになったと。

大北そうですね。そうするには、今のままではダメだったんですよね。生地や糸ももっと早く抑えないといけないし、もう1つ工場の質を上げるのにも、もっと交渉が必要だったりもするし、それもモノづくりだなって思うようになって。

前はなんだかモヤモヤした気持ちでデッサンを描いて、良い生地と良い工場でやってます! っていうだけだったですけど、それだけではダメだということを、他社のものづくりを知るなかで実感しましたね。

なるほど。やはり、相当大きな変化があったんですね。

大北ありましたね。多分、コラボレーションをやらなかったら、途方にくれていたんじゃないかな(笑)。

いわゆる、〈ヴァイナル アーカイブ〉の未来像ってどういう風に描いていたんですか?

大北コラボレーションをやる前はあまり決まっていなかったんですよ。お取り扱いショップさんを増やしていくのか、それとも自分でお店をやるのか、正直定まっていなかった。

ブランドを大きな企業に売るという選択肢もありますよね。

大北そういった考えもよぎることもありますけど、そんなブランドではない自覚もありますし(笑)。そういう割り切った考えも出来るかなと思いきや、リアルに想像してみると、絶対無理だなと。やっぱり〈ヴァイナル アーカイブ〉というブランドに対して、愛着があるんですよね。

でも、40歳も過ぎて、ここまでやってこれて、服のデザイナーで居られる期間を考えたらね、この先絶対ズレると思うから… だから、コラボレーションをやろうって思ったのは、焦りもあったのかもしれないですね。どっちにしても、より多くの人に知ってもらわないとダメだったんですよ。でも、いざ手をあげてみたら、意外と何も出来ないぞって思って。

10年間積み上げていたつもりが。

大北あれ? こんなものか自分って? みたいなのがありましたね。裸にされて良かったです。

〈ヴァイナルアーカイブ〉らしさってなんだろうって考えているんです。

そう考えてみても、この2018年は〈ヴァイナル アーカイブ〉としても、大北幸平としても大きな節目になったということですね。

大北そうですね。最近では2020年のプロジェクトの話まで出てきていて、そこまでいくとトレンド云々ではなくなってくる。カラーチャートも無いし。それがまた面白いかったりするんですけど。

あと、今回のコラボレーションでいうと、海外の評価が楽しみですね。実はこれまで海外進出というのは、そんな考えてなかったんですよ。日本でちゃんと名前売れてから持っていかないと無理な気がしていて。

それがこういったタイミングで、しかもスニーカーという国籍を超えるプロダクトを通してできるのは、とてもありがたいですね。

日本での認知度は十二分に高いと思います。

大北まあ、でも大変なんですよ。マンパワーも足りないし。会社の規模を大きくしようとするなら、今の事務所の環境も変えなくちゃいけないだろうし。2020年くらいまでにはもっとチームを固めたい。

今までチームづくりをしたことなかったから。最近、手伝ってくれる人が増えてきて、すげー楽だっていうことに気づいて。もうちょっとですね。場所から何から。場所を作ってあげないとやりようがないし。

〈リーボック クラシック〉とグローバルでコラボレーションを行うというのは、だいぶ大きな後押しになりそうですよね。特に〈リーボック〉のルーツであるイギリスだったり。

大北ロンドンにも通っている柔術の道場の支部があるんで行くキッカケができますね(笑)。

柔術を始めたのも大きいですかね? ずっとデスクに向かっていたのが、体を動かすようになって。

大北そうですね。柔術は頭もすごく使うからね。あと、自分が通っている道場「カルペディエム」の代表の石川さんの経営手腕は聞いていて、とても勉強になります。

商売の本質的なところを実直に真っ向から取り組まれていて、凄い分かりやすい。何気なく道場に通っていますが、その状況を俯瞰で見てみると改めて納得がいくというか。ちなみに「カルペディエム」は〈リーボック〉さんがスポンサーしているんですよ。意外と繋がるなっていう。

より分かりやすいものを作るということですか?

大北上を目指すというか、良くも悪くもパっと連想出来る何かっていうのが必要だなって。それだけが全てでは無いけど、そこって凄い難しい。自分も逃げてるんじゃないかなって思って。

分かりやすい事を格好悪いって思う人もいるだろうし。なんだかお客さんに合わせてるみたいとか、媚を売ってると誤解されたりもしそうですが、でも、違うなって。これ難しいぞって。

好きなことをやる為の資本は必要だし、会社を強くしたい。そういうのもあって、色々着手しているし、向こうが求める〈ヴァイナルアーカイブ〉らしさってなんだろうって真正面から考えているんです。

確かに、コラボレーションをするうえで自分のブランドのらしさってなんなんだろ? って考えそうですね。

大北そう。ビジュアルを大切にしているけど、それだけではなくデザイナーとしての芯がより欲しかった…。なんとなく〈ヴァイナル アーカイブ〉の名前が出ていて、なんとなく物が売れているっていうくらいで、そういう人やブランドに外部の人は仕事ってあまり頼まないじゃないですか。

もうちょっと安心材料が必要かなって。デザイナーとして大きいブランドのデザインをしてみたいなっていう気持ちはあるんですよね。

〈ヴァイナルアーカイブ〉の未来像は描けていなかったとおっしゃっていましたが、現在は見えているんでしょうか?

大北2020年くらいまでは見えて来てるけど、それより先は見えてないですね。今やっていることをより広い場所で見せられる環境を作りたいとは、ずっと思っています。それが、デザイナーのままでいるのか、セレクターみたいになっているのか分からないんですけど。ブランドのことを、一歩下がって見られるようになってきたなって感じてます。

着実にやっていくということですよね。でも、この〈リーボック クラシック〉とのコラボレーションはブレイクスルーするきっかけとも言えそうです。

大北意図して望んでない部分でもあるんですけどね(笑)。間違いなくアイテムの仕上がりは良いと思うんですけど、ブレイクスルーするような派手さもないし(笑)。でも、色んな意味で広く知ってもらえるきっかけにはなるだろうし、こういうのがあるから1年後先の未来を見ることが出来るんですよね。

Reebok CLASSIC DAYTONA DMX VA 各¥16,000+TAX

リーボック アディダスグループお客様窓口

電話:0570-033-033 (受付:平日9:30〜18:00)
reebok.jp/classic

VAINL ARCHIVE

TAG
#KEEN
#marmot
#reebok classic
#VAINL ARCHIVE
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Page Top