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monessay ─カツオ出汁

monessay ─カツオ出汁

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。今回は〈ニカタ(NICATA)〉のだしパック。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta
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第二十回 カツオ出汁

尾の商店街、通称散歩通りをつらつらよく歩く。大都心の国際色豊かなこの街にある昔ながらの商店街。といいたいところだが、個人がやっているお店は脇へ追いやられ、いまではほぼ大資本系のチェーン店が多くを占める。古くからの銭湯があったりとそれなりの趣は保持しているが、商店街の金太郎飴化は進んでいる。進化というべきか劣化というかべきか。個人店がんばれ。

こに最近、ピザ屋さんがオープンした。当社オフィスのすぐ足元にある「ピザ・スライス」の新店舗かと見紛うようなスタイルのピザ屋さん。商店街のほぼ中央、しかも一階だからさぞ資本力の大きい会社がやってるんだろうと店員さんに聞いてみたら、実は小さな制作会社が始めた第一号飲食事案だという。聞けば聞くほど我々がやっていることに似ていると思い、ちょっと応援したくなった。それからなんどか訪れ、昼間からビールとピザを楽しんでる。

ザはアメリカンでピース売り(もちろんホールでも)。なかなか美味しい。

の店舗、数ヶ月前までは「ルークス・ロブスター」というロブスターロールの店だった。ニューヨークで大人気のこれをベイクルーズが日本に紹介し、表参道店はいまだ大行列。しかしここ広尾店はあまりうまくいかなかったようだ。飲食ビジネス、なかなか難しい。

イクルーズはご承知の通り多くのセレクト業態店とブランドを持っているアパレル事業会社である。しかしこうした飲食ビジネスへの参入は早く、それまで成功例の少なかった”アパレルがやる飲食”の稀な成功例を確立している企業という認識がこちらにはある。

もそもライフスタイル全般を網羅しようということからの飲食ビジネスへの展開ということなんだろうが、やるからには本気、という意気込みのようなものを感じる。

れを真似て、かどうかはわからないが、アパレルのライフスタイル、あるいは飲食業界への参入が近年目立つ。パン屋をやってみたり、カフェを開いたり。中には本格的なレストランを経営しているところもある。

パレル販売の不振が喧伝される中、こうした動きは今後さらに加速するかもしれない。事業のポートフォリオ化、つまりリスク分散という狙いもあるのだろう。うまくいってるところもあれば、そうでないところもある。

んな状況下、アパレルの飲食ビジネスへの新しい参入形態として感心したのがこの〈NICATA〉の出汁パック。食材加工品というアプローチは参入障壁が高そうでなかなか思いつかない。

もまあ家庭で食べる食品の最優先事項が安全性と美味しさであるならば、その次くらいにセンスのいいパッケージというのがきそうだ。だってみんな〈ディーン&デルーカ〉好きでしょ。

ういう意味でこのアプローチは間違ってない。

け麺屋でこっそりこれをたっぷりかけて食べてみたい。

蔡 俊行

フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

NICATA

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