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稀代のミュージシャン、高岩 遼がフルアルバム10で臨んだ夢舞台と、クリスチャンダダ、森川マサノリとの対談。

HIS 10YEARS and DREAM THEATER.

稀代のミュージシャン、高岩 遼がフルアルバム10で臨んだ夢舞台と、クリスチャンダダ、森川マサノリとの対談。

スター不在と言われるこの時代に、現れた高岩 遼という一人のミュージシャン。彼を知る者たちは「皆が知っておくべき、“本物のスター” のオーラを纏った人間」と口を揃えて言います。SANABAGUN.やTHE THROTTLEのフロントマンとしても活動を続ける彼が、初のソロアルバム『10』のリリース記念ライブを12月12日にSHIBUYA CLUB QUATTROで行いました。28歳以下のメンバーで構成したビッグバンドを従え、かねてからの夢だったステージを成功に終えた彼へのインタビューと、ステージ衣装を提供した〈クリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)のデザイナーである森川マサノリを迎えた対談の2本立てをお届けします。

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アルバム『10』の世界を十二分に体現した、圧倒的なエンターテインメント。

往年のスター、フランク・シナトラばりのジャズ・ヴォーカリストとして成功を収めるべく地元の岩手より上京し、構想10年、制作に1年以上を要したアルバム『10』を引っさげ、ついに立った夢の舞台。アルバムのプロデューサーであるTokyo RecordingsのYaffleと、18人編成のビッグバンドを従え、シルバーに染められた髪と〈クリスチャンダダ〉のオーダーメイドというダブルのホワイトスーツに身を包んで登場しました。

フランク・シナトラのカヴァー2曲を挨拶代わりにスタートしたライブは、ジャズを基調としながら、ソウルやヒップホップ、ハウスミュージックを横断する現代的な楽曲とパーソナルなリリックが描き出す『10』の音楽世界がスケールの大きいエンターテインメントとして昇華された90分間のショーに。

アンコールで披露したクリスマスソングのメドレーを含め、それぞれの曲が描き出す喜怒哀楽はもちろんのこと、彼の夢や人生をも凝縮することで、その音楽キャリアにおいて、大きな節目となる夜を見事に具現化してみせました。

18人編成のビッグバンドを編成して臨んだ先日のリリースライブでは、どんな思いを抱いてステージに立たれたんでしょうか?

高岩俺はビッグバンドを率いるようなスターになりたいという野望を持って、岩手から上京してきたんです。初めてバンドを結成したのが、22歳の時。それもビッグバンドだったんですね。色んなところからお金を借りたり、通っていた大学からも支援してもらったりしたんですけど、バンドは空中分解してしまったんです。それでも、SANABAGUN.やTHE THROTTLEを結成したり、色々苦悩してきました。今回、アルバム『10』を発表して、その流れでのリリース記念ライブというのは俺の一つの夢でもあったし、10年越しで構想を実現した自分に乾杯って感じでしたね。

ライブの構成に関しては、どんなイメージやアイデアをお持ちでしたか?

高岩ライブ本編はほぼアルバム『10』の楽曲で構成されていたので、イメージしていたのは、プロデューサーのYaffleと俺のストーリーです。Yaffleのアーティストイメージもあるわけで、ある種ワンマンエンターテインメントではなかったんですよ。そのうえで格好つけるべきところは格好良くキメたいなと思っていたんですけど、ライブは楽しいし、歌っているうちに胸アツになっちゃって、キメきれませんでしたね(笑)。しかも、お客さんの多くが、SANABAGUN.やTHE THROTTLEなどのライブを通じて、高岩 遼の面白さを知ってる人たちだったこともあって、「いつふざけるんだろう?」、「いや、俺はまだやらねえよ」っていうせめぎ合いがまた楽しかったんですよ。

どうしてもおどけてしまうところに、高岩さんの人間性がにじみ出ていて楽しいライブでした。

高岩しくじったかなとも思ったので、そう言ってもらえて、うれしいですね。

「やつは本物のスターだった」と言われるような、そういう大きな存在になりたい。

そして、ライブそのものもアルバム同様、ビッグバンドだけでなく、打ち込みやシンセサイザーを用いたり、現代性へのこだわりが打ち出されていました。

高岩アルバムを出すときはビッグバンドでやりたかったんですけど、例えば、星野源さんがそうであるように、ポップスでありたかったですし、現代のジャズ、そのさらに先へ向かう音楽を生み出すためには高岩遼の全ての引き出しを開けただけでは、シナトラのナンバーをただやることになりかねないなと。そこでプロデューサーが必要だなと思っていたところに、Yaffleを紹介してもらったんです。彼は彼で、焼き直しするだけのイモっぽいものはやりたくないということだったし、会場のクアトロも着席スタイルのディナーショーをやるようなところではなく、スタンディングのライブハウスだったので、そこにはこだわりがありましたね。

なるほど。

高岩例えば、40年代から50年代にかけてのビバップからハードバップだけが好きな人、あるいは昭和の時代のビッグバンドだけが好きな人、ジャズは歴史が長い音楽なので、特定のスタイルが好きだったり、こだわったりするのも分かるんですけど、俺個人の見解として、ヒップホップよりも速いスピードで、ジャズは常に進化しないといけない音楽なんですよ。だから、クリスマスライブとか30歳の記念ライブとか、そういう特別な節目のライブでスタンダードナンバーをやるのはいいんですけど、世に俺のシンパを増やしていく局面においては、ジャズの捉え方に関して、フロントラインに常に立っていなきゃいけないなって。

喜怒哀楽や過去から現在に至るまでの高岩さんの人生が凝縮されている今回のアルバムの楽曲をライブで歌ってみていかがでしたか?

高岩音源に自分の人生観をぶち込むのは、自分の音楽キャリアにおいて初めてのことでしたし、人前で披露するのも初めてのことだったので、どこかかゆい感じがありましたね(笑)。普段のライブでの高岩 遼は常にスターでいなきゃいけないので、自分のことを冷静に俯瞰で捉えているんですけど、リリースライブではそれが出来なかったんですよ。「あ、ソロのライブって、こういうことなんだ」と思って、それが面白い体験でしたね。

スター不在と呼ばれる時代に生きる高岩さんにとってのスター像を改めてお聞かせいただけますか?

高岩例えば、客が2人しかいないジャズクラブで演奏している超絶技巧のピアニストに憧れる少年にとってそのピアニストはスターだろうし、個人個人がスターだと思う人がスターだと思うんですよ。でも俺にとってのスターは “THIS IS STAR” というか、高級車に乗って自分で建てたビルに入るときは入り口に50人くらい待ってるみたいな、そういう絵を常にイメージしてますね。いまの時代、近所の兄ちゃんがバンドやシンガーをやっている方が親しみがあるし、手軽なモバイル・デバイスでつくった音楽がユースカルチャーから広がっているような気がしているんですけど、僕はそれとは違って。常に王道でスケールの大きなスターをイメージしています。それが現代においてはダサいと言われる瞬間が度々あるんですけど、それを全部はねのけて、自分が年を取って死んだ後、“やつは本物のスターだった” と言われるような、そういう大きな存在になりたいと思っていますね。

ライブでの高岩さんは〈クリスチャンダダ〉のオーダーメイドというダブルのホワイト・スーツというスタイルでしたが、個人的にあのスタイルは人を選ぶというか、似合う人はそうそういないなと思いました。

高岩そうでしょうね。いいおじちゃん、いい男が行く銀座のテーラーメイドで白のスーツをつくっても良かったんですけど、それだといまの東京感が出ないと思ったんですよね。じゃあ、どうするか。28歳の自分はトレンディな存在として、パリコレでもショーを飾っている日本のブランドを着ることに意味があるような気がしたというか、“高岩 遼×CHRISTIAN DADA” っていう掛け算が面白いんじゃないかと思ったんですよね。

〈クリスチャンダダ〉との出会いは?

高岩知人の紹介でTHE THROTTLEの衣装としてスカジャンをつくってもらったときが最初ですね。“DADA” っていうのは、ダダイズム、つまり、パンクってことでしょってことで。その流れから、今回は男の夢である “白のスーツいけないですか?” って相談しに行ったんですよね(笑)。

こうしてお話を聞いていると、今回のライブは高岩さんのなかにある具体的なイメージを具現化する行為でもあったわけですね。

高岩そうですね。上京する前からそのイメージはずっとあったというか、田舎育ちだったこともあって、憧れとイメージだけが自分の6畳間の部屋で濃縮されていて。だから、上京後はそれを具現化するための10年だった気がしますね。だから、ライブが終わってから、割と元気なかったんですけどね。関係者に「楽しかった?」って訊かれても「普通だったね」って謎のダウナーに入るっていう(笑)。とにかく、まだ何も始まってねえって感じたんですよね。「こんな規模感じゃ、スターになれたなんて思えるはずがねえわ。クソ、この先、長いぜ」って。

そういう意味でリリースライブは10年の総決算であり、ソロのキャリアのスタート地点に立った瞬間でもあると。

高岩そうですね。この10年はプロローグであって、ようやくゼロ地点に立った気分でしたね。それだけ俺がイメージしているビジョンは壮大だし壮絶。だから、この先のことを考えるとその長さが憂鬱でもあるんですけど、一方でSANABAGUN.とTHE THROTTLEは俺がバンドをつくって、そのボスとして今でも活動しているので、頭としてのけじめ、その意識は今回のソロを経験したことでさらに確立されたものになると思います。音楽的には、Yaffleとのアルバム、ライブ制作を通じて、最先端のトレンドを意識する指向が生まれたので、ライブ後は最先端の音楽をばりばり聴いています。ここから先、吸収していくものがバンド活動においてもソロ活動においても存分に発揮されることになると思いますね。

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