好きなやつは買えばいいし、嫌いなやつはディスればいい。ハマったら「よろしくっす」。
JQさんはいつ頃から音楽に親しまれていたのでしょうか?
JQ 幼少期にピアノをやっていたのと、中学時代に吹奏楽部でパーカッションを担当していたので、中高はコピーバンドでドラムを手伝ってました。でも当時は色んなジャンルのバンドをスコアを渡されるまま叩いていただけで、特に思い入れがある音楽があったわけではないんです。
JQ 自分が音楽をやりたいなという気持ちになったのは、ヒップホップに本格的にのめり込んでからですね。バンドだとドラムは展開していくのに対して、ヒップホップの場合は一小節ずつループしたビートでフローがあるのに感動して。色んなDJさんのレコードを掘ったり、色んなジャンルが流れる「オルガンバー」っていうクラブに入り浸るようになって、MPCっていうトラックメイキング用の機材を買ったのがきっかけですね。
Nulbarichの根底にあるアシッドジャズや裏拍ノリとかのビートは、ヒップホップでサンプリングされているクラシックなものがルーツなんですね。
JQ そうですね。ヒップホップのパーティに来るような人たちが、サンプリングを耳にしてそこで別のジャンルの音楽を知るというような。ヒップホップ好きにとってバンドは普段聴かないジャンルだけど、サンプリングされたS級のグッドミュージックだと刺さるというか。S級の音楽しか異ジャンルにサンプリングされないんですよね。だからどんな音楽をやっていても頂点になれば、沢山の人に知ってもらえる、楽しんで貰えるものになるというのは肌感覚として持っていました。
それがいまの音楽感につながってると。たとえば『Kiss You Back』(3rdアルバムの7曲目)なんか、ギターリフのループの流れは一曲を通して変わらず、EDMやトラップなどの要素を入れて広がりを出している楽曲ですよね。
JQ 世界中でポップスにEDMを取り込むのは主流になりましたけど、結構消費しつくされているイメージがあって。でもいまはカントリー的なフレーズとの相性はいいと感じるのでこの曲を作りました。とにかく色んな人の耳に残るようなメロディーとフレーズっていうのをいまは意識していて。
“色んな人の耳に残る”といったリスナーを広く巻き込む意識はどこからやってきたのでしょうか。
JQ まずは広く色んな人に知ってもらわないと意味ないじゃないですか。2年前からフェスに沢山出させて貰えるようになって。ほかのロックバンドみたいなに勢いで勝負するのは、自分は得意ではないので、だったらもっと遠くに響かせる音楽が欲しいと思って創ったんです。
そのお話をお伺いすると、「Blank Envelope」というアルバム・タイトルにも合点がいきますね。誰か特別な人に宛てているというより、すべての聴き手に広く伝えているような。
JQ もちろんアルバムの中で、友達だったり家族だったり誰かに歌っているものはあります。色んなコンセプトを持って創っているけれど、このアルバムをマーケティング的にこの層に届けるぞ、みたいな広告的な視点はないんです。それは大人がやればいい話で。とにかく自分たちの中でのグッド・ミュージックを創って、それを街中のいたるところに落としていくっていう感覚ですかね。まずは知ってもらわないことには始まらないので、好きな奴は買えばいいし、嫌いなやつはdisればいい。ハマったら「よろしくっす」って感じですね。
“Nulbarichらしさ” なんて、世界で俺が一番わかってない。
この一年間で、日本武道館の公演を果たしたり、キャリア最高を更新し続けている中で、バンドとしての自信や確信がついたのではないでしょうか?
JQ そうですね…。普通に武道館をやったら自信たっぷり満足するのかなと思ったんですけど、反省点とか次はこうした方がいいっていうのが見えてきて。欲深いだけなのかもしれないですけど、まだまだ次に活かせることを考えることのほうが多いですね。
前作よりもボーカルトラックが前面に出ている印象を受けましたし、“聴き心地のよさ”やハイトーンでソウルフルな歌声など、ナルバリッチ的なエッセンスみたいなものが凝縮されたのですが、どんなふうに今作を分析しますか?
JQ 基本的に、「僕ってこういうところがあるんですよ」っていう人のことを俺は信じていなくって。それはこっちの印象で決めることだし。だから “Nulbarichらしさ” ってものを正直、メンバー誰も理解していないんですよ(笑)。だからとにかく自分の中で一番イイものを追い求めるということに尽きるかなと。
JQ 全部にフルスイングしてきた結果が今だし、考えて器用な音楽をやっていると思われがちだけど、普通にお酒飲みながら、生活の延長でトラックを創っているし、バンドメンバーが新しい機材を買えば、とにかく触って弄り倒して、その機材を多用した楽曲ができるし(笑)。
JQ 「ポピュラー性とやりたいことのバランスがいい」とか「玄人受けするような作り方をしている」といった両極端な意見を言われるバンドなんですけど、狙いすまして器用にやってるわけじゃなくて、フルスイングで気持ちのいい音楽をつくり続けているだけっていう。この一年色々と向き合ってきましたが「出来ないことは、出来ないです」って感じで。
そういう音楽を聴いた人が勝手に解釈して、色を付けてくれるままにしていると。
JQ そう。例えば美術館で絵描きが隣で自分の絵の解説をしていたら妙な話じゃないですか。だから、多くを語らずにあとは自由にそれぞれの生活の中で解釈して、“使ってくれ”って感覚なのかもしれないですね。
こだわりを捨てニュートラルを保つことで成長してきた。
今回のインタビューでNulbarichっていうものの実体が不透明で、バンドのブレーンは何を考えているのかをあぶり出したかったのですけど、できれば自分の色を押し付けたくないっていうのは、この時代における音楽家のスタンスとして明確な一つの回答だなと思いました。
JQ そうですか。ほとんど座右の銘に近いんですけど、基本的にいかに自分がニュートラルにいられるかを人生の中で大事にしています。基本的に音楽でもファッションでもあらゆることにニュートラルでいたいんですよ。もはや自分を持たないって方が最強だと思っていて。変な拘りを捨てて、日々何を得るかを意識しています。
JQ そうですね。こっちからアウトプットする前にいかに“受け”に回るかの方に一生懸命ですね。たとえば好きな音楽とかファッションとかも出来るだけ、自分が良いと思えるものの余白を増やしておくというか。できるだけ沢山影響を受けて、それを噛み砕いて昇華していきたいんですよね。
ずっと音楽を続けるなかで好きなスタイルは変わっていった気がしますか?
JQ 魅力的な人と出会うと変わっていくのは当然ですよね。そのために自分をニュートラルで保っておくというか。例えばファッションの展示会に行っても、普段の自分なら着ない服でも「着てみたら?」って言われたら、とりあえず一週間くらい着てみるんです。そうすると不思議に自分に馴染んでいく感覚があって、前の自分のスタイルに戻れなくなるような感覚が好きで。格好良い服を着ていると、格好良い自分になれている気がするじゃないですか。
JQ ありがとうございます。去年、スタイリストの高橋ラムダさんが手掛けている〈アールエムギャング(R.M GANG)〉とコラボする機会がありましたけど、オーバーグラウンドでファッションと音楽がつながっていくカルチャーが日本にはほとんどない気がしていて。そこを越えたいという思いがつながって今になっている感じがします。
音楽のリスナーとしてもフラットでいたいってことですよね?
JQ 自分自身がそういう音楽の聴き方をしてきましたからね。その作家のストーリーや楽曲に込めたメッセージ云々は置いといて、自分の人生のタイムラインと聴きたい音楽が勝手に同期して、強くなった気持ちになったり、女の子の隣で聴いていたいなって思ったりして。3rdアルバムも創り手としてはどこで聴かれても恥ずかしくないようにできたので、自由に聴いて勝手に解釈して、その人の人生と音楽が相乗していくようだと一番いいかなって。
Blank Envelope
発売日:2019年2月6日(水)
・完全生産限定盤A
CD+Remix CD+Blu-ray (LIVE+Documentary+Interview映像)
価格:¥5,500+TAX
・完全生産限定盤B
CD+Remix CD+DVD (LIVE+Documentary+Interview映像)
価格:¥5,000+TAX
・通常盤
CD ONLY VICL-65116
価格:¥2,800+TAX
Nulbarich ONE MAN TOUR 2019
3月31日(日)宮城・仙台PIT
4月7日(日) 北海道・Zepp Sappora
4月10日(水)大阪・Zepp OSAKA Bayside
4月13日(土)広島・BLUE LIVE 広島
4月17日(水)愛知・Zepp Naroya
4月19日(金)福岡・Zepp Fukuoka
4月20日(土)香川・festhalle
4月24日(水)東京・Zepp Tokyo
4月25日(木)東京・Zepp Tokyo
nulbarich.com