続いて訪れたのは裁断、縫製のフロア。紡績のフロアに負けず劣らず広々としており、聞けばこちらも100人ものスタッフが働いているそうです。
〈ラコステ〉を愛用する人々がこぞって賞賛するのはいつまでもへたらず、色褪せないファブリックともうひとつ、立体的なシルエットをキープする前立てにあります。
その秘密は、表地に比べて2ミリ大きい裏地をあて、土台をしっかりさせているところにあります(下から顔をのぞかせる裏地を職人はのぞき、といいます)。この前立てがしっかりしているから、フォルムが崩れないのです。ペラペラのテープではない、その名の通りチューブ状に編んだ筒編みのパーツによる縫合もまた、襟まわりを美しく保つべく編み出した工夫です(これらは並べて観察すれば一目瞭然です。夏物はいまクローゼットの奥底でしょうから、衣替えのときにでも他のブランドと比べてみてください)。
これまた着比べればたちどころにその違いがわかりますが、〈ラコステ〉のポロシャツはごろつきをほとんど感じません。それは細く仕上げた縫い代構造の賜物です。ただ、その構造は通常に比べて耐久性に難がある。この不利を解消すべく、〈ラコステ〉は縫製糸にデニムでおなじみのコアヤーン糸を採用しています。ポリエステル糸に綿糸を巻きつけたもので、一般的なポリエステル・スパン糸に比べて抜群の強度があります。
〈ラコステ〉のデザインといえばモデル名の “2” を指すちょうちん袖を外して語ることはできません。二の腕にぴたりとフィット、バタつきを防ぎ、汗止めの効果もそなえるその構造は、サイドに入れたスリットとともにテニスプレイヤーのために生まれたものです。スリットはいうまでもなく、下半身の動きを妨げない工夫。
工場の奥へと進んだ取材班は、これまで見てきた生産ラインとは異なる空間が広がっていることに気づきました。数十人は座れるテーブルとチェアがあり、熱心にミシンをかける女性たちの作業を年配の女性が見てまわっています。
「ラコステといえど働き手の確保は容易なことではありません。我々は、我々が培った技術を後世に残すためにマニファクチャリングアカデミーという教育機関を立ち上げました。職安などに募集をかけておよそ100人を採用、2年かけてラコステのものづくりを学んでいただきます。指導にあたるのは定年退職した職人たちです」