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女優・岸井ゆきの。映画『愛がなんだ』に挑み、見つめたこと、見つけたこと。

女優・岸井ゆきの。映画『愛がなんだ』に挑み、見つめたこと、見つけたこと。

『紙の月』『八日目の蝉』などで支持を集める直木賞作家・角田光代の恋愛小説を映画化。本作で、自分のことを好きになってくれない相手を一途に想い続ける主人公を演じた岸井ゆきのさん。改めて「人を好きになる」とはどういうことなのか——。究極の片思いをテーマにした作品に全力で向き合うことで生まれた“気づき”について、話を伺った。

  • Photo_Erina Fujiwara
  • Styling_Saeko Sugai
  • Hair&Make-up_Kanako Hoshino
  • Text_Seika Yajima
  • Edit_Ryo Komuta,Rei Kawahara
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STORY

平凡なOLをしている28歳のテルコが、ふとした瞬間に、猫背でひょろひょろのマモルという男に恋をする。「私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ——」。
会社の電話は取らないのに、“マモちゃん”から電話があれば、仕事中でも携帯で長電話。
突然の誘いにも、二つ返事ですぐに出かけていく。すべてがマモちゃん最優先。
けれど、彼はテルコのことが好きじゃなく、ほかの女性に想いを寄せている——。
片思いの末にテルコに見えてくるものとは。

岸井ゆきの

1992年生まれ。神奈川県出身。2009年にドラマ「小公女セイラ」で女優デビュー。以降映画、ドラマ、舞台と様々な作品に出演、2016年、NHK大河ドラマ「真田丸」で主人公・真田信繁の側室・たかを演じ注目を集める。2017年、映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』で映画初主演を務め、第39回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。2018年連続テレビ小説「まんぷく」(NHK)では、主人公福子の姪・タカを演じ、登場時14歳の役を演じたことも話題に。今夏、映画『いちごの唄』も公開予定。

人間のちょっと“はみ出した”心に興味がある。

角田光代さんの原作をどのように受け止めましたか?

岸井今回のお話をいただいたときに初めて読んだのですが、あまりにも面白くて。最初は「テルコという役を私がやるんだ」と思って客観的に読んでいたのですが、ほんの4ページぐらいで完全に「読者」の気分に。面白くて一気に読んでしまいました。ストレートな「恋愛小説」というジャンルとも違うし、これはジャンルで言ったらなんだろう?と。角田さんの、人間のちょっとはみ出した心を書いた作品をもっと読んでみたい気持ちにも駆られました。同時に「こんなに面白いからどうしよう」と不安な気持ちにもなって。私が演じることで、一気に台無しにしてしまうこともあるんだよな、と我に返る自分がいました。

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「自分に自信がない」と自虐的に発言している、ある種の弱さを纏ったマモルという男性(成田 凌)に全力で片思いしているテルコにはどんな印象を持ちましたか?

岸井私自身はテルコのような人間だと思わないし、周囲にもそういうタイプの人間はいませんが、原作を読んだとき、ここまで好きな人に夢中になれることって本当にすごいことだし、羨ましいと思いました。私は大事な人やものがひとつじゃないですし、テルコみたいに「マモちゃんのためなら、仕事も辞めるし、友達もいらない」という、極端な考え方はしない。けれど、当たり前のようにそれができる行動力と執着と信念はすごいと純粋に思いました。

テルコに共感するポイントはありましたか?

岸井テルコはマモルにひどいことを言われても、会社をクビになっても、「ちゃんと食事だけは摂るよね」と言われるシーンがあるんですけれども、それは私もそうです(笑)。いろいろとショックな出来事があったときに、ごはんを食べられなくなってしまう人がいるけど、私はそういうことはないタイプ。あとは、テルコの“熱量”かな。私は片思いしている相手のことだけを大切にして全身全霊で向かっていくことはないけれど、誰かのことを想ったり、目標に向かって邁進する熱量はテルコとそんなに大差がないように思いました。

登場人物たちが好きな人に自分の気持ちをうまく気持ちを伝えられず、やるせない時間を過ごし、人間関係がいろいろとねじれていくところが見どころだと思います。岸井さんは「素直に感情表現すること」は、得意なほうですか。

岸井日常の何気ないコミュニケーションは、素直だと思います。でも、改まって自分の気持ちを伝えなければいけない場面はすごく苦手です。「誰か台本書いてくれ!」と思う(笑)。そしたら、上手に言えるのに、と思うこともありますね。こういう仕事をしていると、自分の気持ちを相手に伝えるのが上手だと思われがちですが、苦手です。だから、大事なことを伝えたいときには、まずはノートに箇条書きで書いて、頭の中を整理してから相手に向き合うようにしていますね。

テルコは小さな嘘をたくさんつくけれど、私は細かい嘘は全然つかない。

それは、恋愛だとどうですか?

岸井同じですね。テルコはマモちゃんに小さな嘘をたくさんつくけれど、私は細かい嘘は全然つかないです。わりとありのままの私だと思います。それに、恋人と友達に対するコミュニケーションの仕方もそんなに変わらないかもしれません。私は友達があんまり多くないので、友達は恋人や家族と同じぐらいに大切な存在で。

テルコはマモルと「同化したい」という切なる想いを抱く独特の恋愛観の持ち主ですが、そんな感情が芽生えたことはありますか?

岸井「好きな人になりたい」というのは、ギリギリ理解できるかな。テルコの場合は、「食べてしまいたいくらい好き」みたいなニュアンスがある気がして。その領域は自分にはないと思います。私の場合は、どこか憧れるポイントがある異性に対しては「自分があの人だったら…」と妄想してしまうことも。例えば、すごく説得力のある言葉遣いをする人がいて、私がその話し方を真似て誰かに伝えたとしても、同じような説得力を持たないときとか。あの人が発言したら、もっとすごいことを言っている感じに聞こえるのに、と。

映画の中のセリフで特別に印象的な言葉はありましたか?

「マモちゃんは手だけはきれいだ」という言葉。すごく素直で、真実が詰まっていると思うんです。

『愛がなんだ』

4月19日(金)、テアトル新宿ほか全国公開
原作:角田光代『愛がなんだ』(角川文庫刊)
監督:今泉力哉
出演:岸井ゆきの 成田凌 深川麻衣 若葉竜也 片岡礼子 筒井真理子 /江口のりこ
配給:エレファントハウス
(C)2019 映画『愛がなんだ』製作委員会
aigananda.com

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