実際の食材を写真に合わせてその上でコラージュするプロジェクト「Food On A Photograph」をはじめたのはこの頃。フードスタイリストとして仕事をする機会が増え、単純に食べ物を美味しそうに綺麗に見せることに、自分自身で少し違和感を感じ始めました。そんなある時、アボカドトーストをお昼ご飯に作ったのですが、写真におさめておこうとした時、何か面白い撮り方はできないものかと考えました。たまたま横に大好きなオードリー・ヘプバーンの写真集があったので、オードリーの頭にトーストを乗せてみたんです。そしたら、『えっ!帽子みたいで可愛い!』とトリコに。その後他の写真にもグルグルの渦巻き状に削った人参を乗せてみたら、パーマみたいにオシャレになって(笑)。SNSで投稿していたら、周りの友人たちから『あれ面白いね!』と反響もあって、オードリー以外にアデルやTLC、アリアナ・グランデなど、私が尊敬する女性をモデルに、作品作りを続けていました。
すると、ニューヨークに住んでいる、私が世界一のフードスタイリストとして尊敬する女性が、インスタで、私のオードリーの作品をたまたま見つけてくれたみたいで、SNSでリポストしてくれたんです! あまりにうれしくて『ニューヨークへ行ってみよう!』と決心し、とりあえず「Food On A Photograph」のZINEを作り、無料で配って回ろうと思ってニューヨークへ行きました。
ニューヨークで一番の老舗と言われている料理本の専門店に行ってみたら、「こんなしっかり作ったジンなら、きちんと売ったほうがいい」と言われ、「え? 売っていいんですか?」みたいな(笑)。そこからニューヨークとロサンゼルスの書店を1軒1軒回って手売りしましたが、断られたお店は結果、一軒もありませんでした。
2019年4月24日(水)から、開催するエキシビジョン「Food On A Model」は、昨年のニューヨーク滞在で出会ったモデルの子から「書店でカオルのジンを見つけてすごくインスパイアされたので、何か一緒にやりたい」と連絡を受けて、実現したコラボレーションです。彼女の周りの20歳前後のモデルの子たちもすごく面白くて、彼女たちのキャラクターやカルチャーを表現できる作品作りを意識しました。オードリーとはちがう角度で、写真と食べ物と向き合った挑戦的な作品シリーズです。