細野晴臣
1947年東京生まれ。69年に「エイプリル・フール」のベーシストとしてデビューし、翌年に「はっぴいえんど」を結成。73年にソロ活動をスタートさせ、「ティン・パン・アレー」を始動。78年には「イエロー・マジック・オーケストラ」を結成。現在は自身のソロ活動のほか、作曲やプロデュース業なども行う。今年、音楽活動をスタートして50周年。
水原佑果
1994年兵庫生まれ。モデルとして活動をスタートし、ファッション誌やCM、広告で起用される。音楽好きとしても知られ、DJとして数々のイベントに登場。イギリスのネットラジオ局「NTS RADIO」では定期的にMIXをリリースし、国内のみならず、海外からも注目を集めている。
なんか同世代の人と話しているような感じがするんですよ。(細野)
おふたりがはじめて会ったのはいつ頃のことなんですか?
水原去年、細野さんが台湾と香港でライブをやったときに、姉と私と友達の細野ファンを引き連れて行ったんです。追っかけですね(笑)。そのときにご挨拶させてもらったんです。
細野そんな感じだっけ? その前から知り合ってなかった?
水原私自身はその前から国内でやっているライブに行ってました。
細野あぁ、そうか。ライブによく来てくれているというのは知ってました。それ以来、度々、ぼくのラジオに出てもらっています。彼女とは音楽の感覚が近いんです。「なんでこんなの知ってるの?」っていうような音源を持ってきてかけてくれる。なんか同世代の人と話しているような感じがするんですよ。70年代が好きなんでしょ?
水原そうなんです! サイケデリックな音楽だったり、宇宙っぽいサウンドが好きで、それこそ細野さんの「はらいそ」も大好きです。あとはハービー・ハンコックの「レイン・ダンス」に入っているピコピコした音とかも。
水原細野さんの音楽はとにかくグルーヴがすごくて、ライブのときにグルーヴの渦がぐるぐるしてて、とにかく刺激されました。
細野グルーヴにも敏感なんだ。若い人でそういう子は滅多にいないよ(笑)。
今回はふたりに〈ラコステ〉の服を着てもらっています。このブランドに対してどんな印象をお持ちですか?
細野すごい昔からあるブランドだから、若い頃に着てたかもしれないですね。
水原私も高校生のときによく着てました。ミニスカートを合わせて、テニスガールみたいな感じで(笑)。
水原さん、今日は森高千里さんをイメージされたそうですね。
水原私、森高千里さんと細野さんの「東京ラッシュ」が大好きで、アロハの服を着ていた千里さんのイメージをネットで見つけたんです。それを見て今日はこれだとピンときましたっ!(笑)
森高さんのアルバムをプロデュースされていましたよね。
細野最近ライブで「東京ラッシュ」をやってくれているみたいですね。ぼくたちは一時期夫婦だったの。CMの設定でね。だけど、そのあとすぐに結婚しちゃった。「取られた」って思ったよ(笑)。
昨年のブライトンでのライブで「東京ラッシュ」を演奏したとき、水原さんもステージに上がってましたね。
水原もう本当にすごく幸せでした…。歌が好きだって話をしたら、「じゃあ一緒に歌ってくれないかな?」ってお声がけしてもらって。「え? いいんですか?」っていう感じでしたね(笑)。
細野そういうことを言っても実現することは少ないんだけど、お姉さんと一緒にすぐに出てくれたよね。いつもぼくたちのライブは男ばっかりだから華がないんです。でもいきなり花が咲いたみたいになっちゃった。しかも彼女はリズム感がいいんですよ。手で押さえるとパフパフ鳴るラッパみたいな楽器があるんだけど、それを演奏してくれて。あれ、意外と難しいんですよ。リズムに合わせてやらなきゃいけないから。でも難なくやってたからビックリしちゃった。
細野あぁ、これ。ぼくも好きで昔練習してたなぁ。渋谷を歩くと若者が歩きながらこれをシャカシャカ鳴らしてましたね。これなんて呼んでる? ぼくはパチコとしか知らないんだけど。
水原アサラドです。私もいっつもど忘れしちゃうんです、この名前(笑)。
水原リズム感を養いたくて。動きが複雑なんですよ。それがなんかかっこいいなと思って。
細野練習しないとできないよね。このスタジオにも練習するものがいっぱいあるんだ。これとかね、手のひらで回すとガラーンって音が鳴るの。楽器ではなくて本当は健康道具なんだけど、この音色はなかなか出ないよね。
水原リラクゼーションミュージックというか、アンビエントな響きですね。心身ともにリラックスします。私も触ってみてもいいですか? 私、鐘の音とかも好きなんです。
細野音が出るものが好きなんだね。ぼくと同じだよ。このおもちゃも音が出るから買ったの。音が出るとなんでも買っちゃう(笑)。
こういったおもちゃの音でも、作品に取り入れたりされるんですか?
細野やっぱりね、入れたくなっちゃうんです。ポップな音楽ではなくて、映画音楽とかに使っちゃいますね。
細野さんの音楽はいろんな角度から聴くことができる。(水原)
制作はいつもこちらのスタジオでされているんですか?
細野ずっとここでやってますね。もう20年以上経つかなぁ。ラジオもこの席でやってます。
先ほど「水原さんをラジオに呼んだ」と話されていましたが、どうして呼ぼうと思ったんですか?
細野なにしろ音楽の趣味がいいんですよ。なんの曲を選んで流してくれるのか、毎回楽しみなんです。ワクワクドキドキするというか。そうすると、呼ばないわけにはいかないでしょう。
水原私はとにかく細野ワールドが大好きなので、そう言っていただけて本当にうれしいです。友達とYoutubeでティン・パン・アレーの動画を見てて、トロピカルで心地いいなぁって思ったのが細野さんの音楽に触れた最初の出来事ですね。そこからどんどん引き込まれていって、最近ではアップルミュージックで「あくまのはつめい」を聴きました。
細野あれ? もう出てるの? 早いねぇ。あれはボツにしたやつなの。だから未発表曲。つまりオケだけで、歌が入ってないんだよね。
水原すごくかっこよかったです! ダンスミュージックをつくりたいと思ってたから、すごくヒントをもらいました。細野さんの音楽はどれもリズムが心地よくて、声も素敵で、私の心を整えてくれる。もう神様なんですよ(笑)。
細野いやぁ、神様は大げさかな(笑)。でも、リズムに関しては確かに自分はアフリカ系の血が混ざってるんじゃないかと思うことがありますね。遠い祖先にアフリカの人たちがいるんじゃないかなって。
リズムというのは音楽において重要な要素ですが、作品をつくるときに自分らしさのようなものは意識されているんですか?
細野とくに意識はしてないです。ただ自分が好きなものをつくった結果、そうなっちゃうというだけで。
水原あと、細野さんの音楽にはミステリアスワールドがありますよね。
細野どうやってつくったのか、自分でも分からないときがある。あとで聴いたときに「どうやったんだっけ?」って。
水原とにかくかっこいい世界感でそのミステリアスな雰囲気に魅力を感じます! 細野さんの音楽はいろんな角度から聴くことができて、同じ曲を聴いていてもそのときによって感じかたが変わるような気がします。いつも発見があって楽しいです!
細野それは言われることあるね。聴く場所によっても変わるしね。
水原細野さんの音楽はミュージシャンからもすごくリスペクトされていますよね。この前来日したクルアンビンもYMOの「ファイアークラッカー」をカバーしてたり、マック・デマルコさんも「ハニー・ムーン」を歌ってますし。
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それはご自身がまだ制作者でいられるからなんですか?
細野それもあるかもしれませんね。過去の作品はいくらでも聴けるけど、いま自分がやっていることはみんなあまり知らないんじゃないかな。ブギウギやってたりとかね。いまの自分はまだ聴いてもらってないという印象があるので、今度ニューヨークでライブがあるんですけど、そういうところでやるのが不安だったりもしますね。
水原いやいや、絶対大丈夫です! みなさん細野さんのことを待ってますよ!
細野ありますよ。もう不安だらけ。というのは、いつもずっとひとりでスタジオに籠ってつくってますから。外に向けてないんですよね。これをやったらウケるだろうとか、あまり考えない。自分が喜ぶことをやっているというか、自分に聴かせているので。それをずっと何十年も続けてきて、やっと最近になって若い人たちが聴いてくれているっていうのを知って。ちょっとそれで意識するようにはなりましたけどね。
細野ありますよ、そりゃあ。若い世代の代表ですから。こういう人たちは音楽界にとって大事な存在なんです。インフルエンサーというのかな。いまの20代の人たちはいい感覚を持ってますよ。音楽に限らずいいことをやってくれそうな気がする。安心しています。
細野さんが水原さんのDJを聴くことはあるんですか?
細野それがまだないんです。今度こそ現場に足を運びたいなと思うんだけど。
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水原あんまり具体的に固めすぎないように。会場の雰囲気に合うものを選んで、そのときの気分でいつもミックスしてます。
水原「NTS RADIO」っていうロンドンのラジオ局でマンスリーミックスをさせてもらっています! 最初に私の大好きなYMOのレコードを持って行ってプレイしたときはすごく評判がよかったです。あとは日本の80sニューウェイブや細野さんたちによるレーベル「YEN RECORDS」から出たカッコいいアーティストもかけたりして、「これなに?」って興味を持ってくれたり。たまにマイナー過ぎるかなと思うこともありますけど(笑)。楽しいポップスを入れてみたり、シンプルにかっこよくてリズムに乗れる曲などもオールジャンル、ディグするのが楽しい!
水原2,000枚くらいかなぁ? ずっとレコードばかり買ってて、服を買ってなくて(笑)。とにかくレコード屋さんに行って、ジャケ買いしたりして。
水原やっぱりそうですよね! 視覚も音楽を聴く上で大事な要素だと思うんです。感性に影響を与えてくれるというか。ジャケットを見たときに「コレだ!」って思うことがあって、家に帰って聴くとイメージ通りの音楽で気持ちいい気分になったりします。
細野昔は本当にそれの連続だった。アナログ盤とか、知らないのばかりでしょう? そういうときはジャケ買いするんだよね。それで勘が大体当たるの。でも、いまのCDはどれもジャケットがかっこいいじゃない。だからもう、いまは分からないけど。
20世紀の音楽は宝の山だと思ってる。(細野)
おふたりの共通点として音楽というものは欠かせないと思うんですが、世代も性別も違うのに、どうして共鳴し合うのだと思いますか?
細野昔からミュージシャン同士って人生についてとか喋らないんです。「なにが好き?」って聞くと、大体わかるというか。彼女が一度、オリジナル・サヴァンナ・バンドとか持ってきてくれたんですよ。もうそれだけでわかっちゃうんです。「これのよさがわかるのはすごい!」って。
それはもう共通の感覚なんですね。言葉で表すことができないというか。
細野音楽って騙せないんですよ。ぼくはつくる側として、たとえば最初の1、2小節を聴くと分かっちゃう。いいとか、悪いとか、その人がどんな気持ちでつくっているのか? とかね。作品は嘘をつけない。感覚がもろに出るから。純粋に音楽が好きだから、なんの計算もない。だから年齢だの性別だのは関係ないんですよ。
水原今日、細野さんが編集長を務めていらっしゃった雑誌を持ってきたんです。『H2』っていう名前で、最初のページのステートメントに「水はなんとでも融合できる。そういう自由さが音楽にはある」というような内容が書いてあって、その言葉にすごく惹かれました。
細野へぇ、そんなこと書いてるんだ。 忘れてたな(笑)。知り合いに「過去にこんなこと言ってたよ」なんて言われるんだけど、全然覚えてない。
それはやはり日々変化しているというか、感覚が更新されていっているからなのでしょうか?
細野うん、そうですよね、きっと。その場の思いつきで言っているから、忘れちゃうし変化もしていく。終始一貫同じこと言っている場合もありますし。
最近、「いい音楽のDNAを受け継ぎたい」というお話をとあるインタビュー記事で拝見しました。
細野いま一緒にやっているバンドでも、メンバーたちにグルーヴ感が伝わっていくんですよ。本当のブギウギってこうだよ、とかね。すると、いまでは彼らはそれがすんなりできるようになっているんです。そうやって、いい音楽が伝わっていけばいいなと思うんです。
ちょっと危機感を感じていて。音楽に限らずなくなっていくものが多い。ぼくの場合、自分の好きな音楽が受け継がれていない感覚があるんです。ぼくは20世紀の音楽は宝の山だと思ってるので。いいものがたくさん埋まっている。
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水原そうですね。掘るのが無限に楽しい! から未だに知られてないもので素晴らしい音楽を見つけたらDJでどんどんプレイしていきたいです。「歴史上にはこんなカッコいいバンドがいるんだよ!」って。あとは、自分で音楽もつくってみたくて最近、サンプラーとキーボードをゲットしました! 今度、タイ旅行に行くので、そのときに自然界の音を、録りたい! 例えば、鳥の鳴き声や波の音、夜の静かだけどミステリアスな風の音や他にもさまざまな音を録音して、美しいトラックを組み立てたいなと思ってます。
細野やっぱり考えていることが一緒だね(笑)。絶対いいものができると思うよ。
細野まぁ、もしかしたらそのうちあるかもしれませんね。
水原今度LAでご一緒できたらと思ってたんです。6月に。アメリカツアーで行かれますよね? そのときに私もDJする予定で、できたら一緒にB2Bしたいなって思ってたんです、勝手に(笑)。
細野あぁ、いいじゃん。あとはスケジュール次第かな。
水原やったー! うれしいです。ぜひお願いします。そしたら私はドクター・ジョンの曲、たくさん持って行きます!
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