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FEATURE|季節外れの降雪により、まさかの結末。フイナム ランニング クラブ♡のUTMF参戦記。

季節外れの降雪により、まさかの結末。フイナム ランニング クラブ♡のUTMF参戦記。

ULTRA-TRAIL Mt. FUJI 2019

季節外れの降雪により、まさかの結末。
フイナム ランニング クラブ♡のUTMF参戦記。

国内最大規模のトレイルランニングレース「UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)」が4月26〜28日の3日間にわたって開催されました。距離は100マイル(約165キロ)、累積標高差は約8,000メートル、制限時間は46時間。この大会に今年もフイナム ランニング クラブ♡から多くのメンバーが参戦。天候の影響でまさかの結末を迎えたレースの模様をレポートします。

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富士山のまわりを約165キロ走る!

日本初の本格的100マイルレースとして2012年にスタートしたUTMF。開催が見送られた2017年をのぞくと1年に1回開催され、今回で7回目となります。

種目は前回まで総距離100マイルのUTMFと総距離約92キロのSTY(Shizuoka to Yamanashi)の2種目がありましたが、今回はSTYが廃止され、UTMFの1種目のみの開催に。参加者は約2,400人。静岡県の富士山こどもの国をスタートして富士山麓の山々を巡り、山梨県の河口湖でフィニッシュするワンウェイコースです。

「100マイル(=約165キロ)」という距離はトレイルランニングのロングディスタンスレース、通称「ウルトラトレイル」における世界的な基準値にもなっています。欧米では数多くの100マイルレースが開催され、トレイルランナーから人気を博しています。

なお、UTMFは誰でも出られるわけではなく、過去3年のあいだにエントリー資格レースに出場・完走し、規定の「ポイント」を獲得しなければ、エントリーすることができません。

そのような条件を設けているのは、100マイルレースが二昼夜に渡って山岳地帯を走り続ける過酷な競技であり、その厳しさを自ら克服して制限時間内に完走する能力があるかどうかを判断するため。さらにその先には「抽選」が待っています。規定のポイントを獲得してエントリーしても、募集定員に対して応募数が上回るからです。

つまり、UTMFは出場すること自体が難しく、そのスタート地点に立っているのは経験と実力と運を兼ね備えた猛者たちばかりなのです。

悪天候もお構いなし。参加者たちは楽しむ気満々。

レースのスタートは4月26日金曜日12時。スタート地点の富士山こどもの国周辺は朝から分厚い雲に覆われ、雨が降ったり止んだりのあいにくの空模様。

トレイルランニングは自然を舞台にしたアクティビティであり、天候に左右されることが大前提。雨天に備えてレインジャケットやレインパンツをはじめとする様々な道具が必携品として定められていて、不携帯の場合は失格となります。

フイナム ランニング クラブ♡のメンバーたちも悪天候にめげることなく、UTMFという晴れ舞台を前にして楽しむ気満々。昨年完走を果たしたフイナム副編集長の山本博史(写真中央左から2番目)を含む約10名のメンバーが選手として出場したほか、多くのメンバーが応援に駆けつけてくれました。

しかも今年は3名の女性メンバーが選手として参戦!

今回のUTMFに参戦したフイナム ランニング クラブ♡の女性メンバーたち。左から、諸隈史香さん、堤 智美さん、長谷川 愛さん。

諸隈さんは100キロ以上のトレイルレースの完走経験が豊富で、100マイルレースへの挑戦は今回が二度目。「20代で100マイラーになる!」を目標に、このレースに向けて準備を重ねてきました。

堤さんはフルマラソンを3時間21分で走る俊足女子。数々のトレイルレースで上位入賞を果たしてきた実力の持ち主です。ただ、100マイルレースを走るのは今回が初めて。

長谷川さんは丹沢の麓で生まれ育ち、山をこよなく愛するパワフル女子。3人のなかで唯一の100マイル完走者であり、昨年のUTMF、そしてモンブランを一周するUTMBを完走したツワモノです。

今回はこの3名をフィーチャーし、レースの模様をお届けしていきます。

12時、号砲の合図とともに、レーススタート! 制限時間46時間の長い旅が始まりました。

登山道、岩場、林道、ロード……変化に富んだコースレイアウト。

UTMFは総距離約165キロの超ロングコース。すべてが険しい登山道というわけではなく、ゆるやかなトレイルのほか、林道、ロードなど、バラエティに富んだコースレイアウトです。

下りのトレイルを走る堤さん。雨で濡れた木の根は滑りやすいので慎重に。

濃霧で視界不良のなか、泥濘んだトレイルや雨に濡れたロードを駆け抜ける諸隈さん。

ザックの上からレインジャケットを羽織り、登山道を駆け上がる長谷川さん。悪天候に見舞われた今回、ザックが雨に濡れるのを防ぐため、このスタイルで走る選手が少なくありませんでした。

真っ暗な山道を走るため、ライトが不可欠。

ヘッドランプで行先を照らしながら走る長谷川さん。UTMFは多くの選手が完走まで30〜40時間以上かかかるため、必然的に夜を徹して走ることを余儀なくされます。

夜間の山道は当然真っ暗。ヘッドランプなどのライトが欠かせず、必携品にも指定されています。ただ、今回の夜間パートは終始雨が降りしきり、コース上が濃い霧に包まれていたため、ライトの光が拡散してしまい、場所や時間帯によっては数メートル先も見通せない厳しい状況だったようです。

長距離レースに欠かせない「エイドステーション」の存在。

UTMFはコース上の10箇所に「エイドステーション」が設けられ、選手は水や食料を補給したり休憩をとったりすることができます。また、エイドステーションのなかには応援者やサポーターが入れるところも。レースが長時間におよぶなか、仲間の存在は選手にとって非常に心強いものです。

51km地点のA2麓に到着し、ホッとひと息つく長谷川さん。「長く休みすぎると次の一歩を踏み出すのが億劫になりかねないので」と、必要な補給を済ませたら足早に出発していきます。

食事をとる堤さん。今回のUTMFは終始気温が低く、エイドステーションで提供される温かい食事が身に沁みたようです。

地元の名物料理が用意されているエイドステーションも。51キロ地点のA2麓では名物の富士宮焼きそばが振る舞われ、選手の胃袋を満たしていました。

ウルトラトレイルは長丁場。みんな睡眠はどうしてる?

一夜明けて、レース二日目。一時的に青空がのぞき、コース上から富士山が見える時間帯もありましたが、それもつかの間。空は再び分厚い雲に覆われていきました。

ちなみに、ウルトラトレイルに関してよく尋ねられるのが、「そんなに長い時間走り続けて、睡眠はどうしてるの?」という質問。トップ選手は不眠不休で走り続けますが、多くの一般選手はエイドステーションの仮眠所で仮眠をとります。なお、コース上で寝ることは安全性の観点から大会規則で禁止されています。

ブルーシートの上で毛布にくるまって仮眠をとる選手たち。その様子はまるで戦場の野営地のよう。

富士山麓の樹海を抜け、78km 地点のA4精進湖に到着するや否や、そのまま地べたに倒れ込む諸隈さん。100マイルレースは長丁場であり、疲労や眠気との戦いでもあります。

百戦錬磨の長谷川さん、まさかの決断へ!

「足が終わった……」。長谷川さんは95キロ地点のA5勝山で自らリタイアを申告。百戦錬磨の彼女がなぜ!?

本人曰く、「渋滞に巻き込まれないよう、序盤である程度飛ばしたのですが、練習不足だった自分には明らかなオーバーペースでした。その結果、足が終わってしまって、走りたくてもスピードが出ない状態に。一歩一歩が牛歩のようにしか動かない。これは初めての経験でした」とのこと。

悪天候に見舞われた今回、遅い選手の場合は渋滞による低体温症でのリタイアも多く、また速い選手の場合はその先のコースの危険を想定したうえでのリタイアもあったようです。いずれも山でのリスクを踏まえた正しい判断と言えます。ただ、後ほど記すように、仮にこのレースのまさかの結末を予想していたら、進めるところまで進み続けるという選択肢もあったかもしれません。長谷川さんに関しても、この時点でのリタイアは賢明な選択だったとも言えるし、見方を変えれば経験値が邪魔をしたとも言える。そのあたりは一概には言えず、難しいところです。

強まる雨脚は、まさかの雪に。そして……。

レース二日目は日中も気温がほとんど上がらず、再び雨も降り始め、前日よりも厳しい天候に。雨脚は時間の経過とともに強まっていくばかり。

山中湖周辺では、午後になると、雨は雪へと変わっていきました。

127キロ地点のA7山中湖きららで停滞する堤さん。あまりの寒さに震えが止まらない模様。このエイドステーションは屋外にあるため、止まれば止まるほど、選手は体温を奪われていきます。

予報によると、この日の夕方から翌朝にかけて雨はやむものの、気温はさらに下がる見込み。この悪天候では選手の安全の確保が懸念されます。

そんななか、15時過ぎに主催者から携帯電話にメッセージが入り、「杓子岳付近の夜の降雪、凍結、低温によるリスク増大によりレースを短縮する」との公式なアナウンスが。実質上のレース中止です。

河口湖までたどり着くことができたのは、一部のトップ選手をはじめとした91名のみ。全体のわずか4%のみになります。堤さんは127キロ地点のA7山中湖きららにて、諸隈さんは114キロ地点のA6忍野にて、長谷川さんは95キロ地点のA5勝山にて、それぞれレース終了となりました。ただ、主催者より「4月27日土曜日12時50分までにA5勝山に到着したランナーをすべて完走者とする」とアナウンスがあり、扱いとしては3人とも「完走者」となります。

なお、山の上では想像を絶する世界が広がっていました。

上の2枚の写真は、この大会に選手として参加し、114キロ地点のA6忍野から127キロ地点のA7山中湖きらら間、大平山〜平尾山周辺を走っていたフイナム ランニング クラブ♡の広報部長、水越正人さんが撮影したもの。4月末にまさかこんなに雪が積もるとは……。

大会最終日は快晴。富士山もくっきり。

レース中止となった翌日の大会最終日、表彰式と閉会式が行われた河口湖周辺は快晴。前日までの悪天候が嘘のような気持ちの良い青空が広がり、レース中はほとんど見えなかった富士山がくっきりと姿を現しました。

せっかくなので、心にモヤモヤを抱えた一部のメンバーは、UTMFのコース上随一の絶景ポイントである鉄砲木ノ頭へ。

本当はこういう素晴らしい景色を見ながら走れたんだよな……。富士山の雄大な姿を前にして、そんな思いを抱かずにはいられませんでした。

山の天気は変わりやすいと言うけれど、まさかこのような結末を迎えるとは誰も想像していなかったでしょう。残念だし、不本意なことこのうえない。でも、こればかりは仕方がありません。こうしてフイナム ランニング クラブ♡のUTMF 2019への挑戦は幕を閉じました。

UTMF、どうだった?
フイナム ランニング クラブ♡女子メンバーたちの思い。

悔しさよりも安堵の気持ちのほうが先でした。

「ホッとした、というのが一番の感想です。序盤の渋滞が想像していたよりもひどく、時間がかかり、関門を意識せねばならない状況になってしまったこと。ほぼ一日中雨にうたれ、どんなに走っても身体が温まらない、胃が痛くて食べ物を受け付けない、ひと晩越えて、眠気もやってきた、これらの不安のなかで、これから先のさらなる悪天候をどうしのげばいいんだと、泣きそうでした。中止の連絡を受け、すべての重荷から解放され、足も軽い、胃もスッキリ、寒さを感じない。100マイルってメンタルのスポーツだな、と。完走が危ない状況だったので、悔しさよりも安堵の気持ちのほうが先でした。来年のことはいまの時点では考えていないです。残り2年となった20代の過ごし方を考えたときに、UTMFを最後にロングトレイルはいったんお休みしようと思っていました。でも100マイルはお預けになってしまったので、気が変わりやすい私の性格に備えて、楽しむ、を第一に走り続けます」(諸隈史香)

中止は残念。でもレース中は終始楽しかった!

「私にとっての初100マイルレースチャレンジ。昨年STYで序盤に飛ばし過ぎて後半ペースダウンした失敗を踏まえて、今回は目標37時間のタイムテーブルを作成し、完走目標で挑みました。日本が誇るトレイルランニングのビッグレースとあって、レース当日はもちろん前日の受付からお祭りのような雰囲気でした。また、これだけのビッグレースとあれば、出走している選手やボランティア、沿道での応援も知っている方が多く、エールを送りあったり声援を受けたりしてレース中とにかくずっと楽しくてニコニコしていた気がします(笑)。悪天候のため途中で中止となってしまい、100マイルを完走できなかったのは残念ですが、何のトラブルもなくA7山中湖きららまで行けたのは、サポートしてくれたメンバーや、いっしょに参加したチームメンバーの存在があったからだなと思います。今年UTMFを完走して来年はサポートに回ろうと思っていたのですが、自分の足でFINISHまでたどり着きたいので来年もエントリーするかもしれません」(堤 智美)

練習は嘘つかない。今回はただただ練習不足。

「私にとって人生3度目の100マイルレースは、残念な結果となりました。初めてのリタイア経験。理由は簡単、レース2か月前に足小指を骨折し、十分にトレーニングができていなかったこと。序盤で飛ばし過ぎて、オーバーペース、中盤で足が終わりました。足って終わるんだ? はい、終わります。これも初体験でした♡ いま思い出しても、あのとき苦しかったなぁ……。すべてが苦しかった。いつもは大好きな登りも、このときばかりは苦行でしかなかったな。やっぱり、ロングレースの醍醐味は、長い時間お山と遊べること。長丁場だからこそ、楽しまなくっちゃ、続かない! しかもUTMFは、富士山という絶景が終始見えるのだ!(お天気がいいと、だけど)。次は万全なトレーニングを積んで、快晴の日に、走りたいな! まだまだ私の挑戦は続くのです~」(長谷川 愛)

INFORMATION

ULTRA-TRAIL Mt. FUJI

www.ultratrailmtfuji.com

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