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セレクトショップのバイヤーが見た、パリの街とファッションウィーク2019AW。

Paris To Be Recommended By Buyers.

セレクトショップのバイヤーが見た、パリの街とファッションウィーク2019AW。

明日のトレンドを追い求め、世界各国を飛び回るセレクトショップのバイヤーたち。そんな彼らが特別な街として挙げるのがパリです。ことファッショウィークの時期ともなれば尚更。パリのそこかしこに気になる情報が眠っているというもの。そこで今回、日本を代表するセレクトショップのバイヤー3人にご協力いただき、パリ・ファッションウィーク2019AWの期間中に見てきたものを、スマホのカメラでスナップしてきてもらいました。いよいよ立ち上がりを迎える2019AWシーズンのファッション情報はもちろん、バイヤー目線で気になるショップ、フード、カルチャーをリアルな声とともにリポート。ガイドブックには載っていない、いまのパリの魅力をお届けします。

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GUIDE1_Shingo Arai / BEAMS Buyer
スニーカーを通して築き上げた、パリのコミュニティー。

バイヤーになる以前からも、スニーカーの展示やトレードが行われるコンベンション「スニーカーネス(SNEAKERNESS)」に個人的に出展していたので、パリへは定期的に行っていました。ヨーロッパはスニーカー熱が高く、こうしたイベントが各地で頻繁に開催されては盛り上がっていますよね。「ビームス」のバイヤーになってからは、パリは買い付けで年2回ほど訪れています。ポップアップで一緒に取り組みをさせてもらっているカフェの「ペーパーボーイ」など、スニーカーを通して築き上げたコミュニティーが、いまの仕事にも役に立っていますね。

新井 伸吾 / BEAMS Buyer

1980年生まれ、東京都出身。長年「ビームスT 原宿」の名物マネージャーとして活躍する一方、趣味のスニーカーカルチャーにも深く精通し、「ビームス」の別注企画に携わる。数々のヒットを飛ばし、その功績を買われて2017年にはメンズバイヤーに就任。現在はスニーカーのみならず、メンズカジュアル全般を担当する。

Focus1_Fashion
STUDIO ALCH

「ずっと気になっていたブランド〈スタジオ アルチ(STUDIO ALCH)〉のインスタレーションがツボでした。デザイナーのアレックスは〈ナイキ〉からもサポートされていて、スニーカーカルチャーのなかでもとても有名な女性です。個人的にもインスタなどで常にその動向を追っていたのですが、実際に会って本人と会話をする中で、より彼女の世界観に引き込まれました。

実際のクリエイティブはというと、ソックスを使ってニットをつくっていたり、バッグをリメイクしてベストにしたりと、とにかく面白いものづくりをしています。また、本人自身もすごく洒落ていて、例えば小物に対するスニーカーの合わせ方や、ソックスの選び方などセンスが抜群に良いんですよね。その活動やクリエイティブすべてに共感ができる、注目のブランドです。念願叶って2019AWシーズンから「ビームス」でも展開がスタートします。これまで日本ではあまり紹介されていなかったブランドなので、楽しみにしてて欲しいですね」

Focus2_Shop
MMW NIKE POP-UP SHOP

「常設しているショップとはまた違いますが、パリ滞在中に運良くやっていたマシュー・M・ウィリアムスと〈ナイキ〉によるコラボコレクションのポップアップがすごく良かったです。前シーズンは欲しいものがあったものの買い逃してしまったので、バイイングスケジュールの合間をぬって猛ダッシュで駆けつけました(笑)。店内は名だたるインフルエンサーで溢れかえっていたのも印象的です。

アイテムはというと、どれもこだわりが詰まっていて勉強になりましたし、驚きばかりのコレクションでした。コーディネイトのアクセントになるインパクトのあるデザインですが、一方でしっかりと実用性にも長けている。実際に購入したアイテムは、パリの次に向かったニューヨークの大寒波でも大活躍でした」

Focus3_Food
Paperboy

「すべてのメニューがオススメです。美味しいだけではなく、色鮮やかな食材の組み合わせは見ているだけでも楽しませてくれます。店の雰囲気も良いですし、スタッフが温かく迎え入れてくれるので、ついついリピートしてしまいますね。

それに、パリのファッション関係者やインフルエンサーといったお洒落な人たちの溜まり場でもあり、トレンドの情報発信地にもなっている。ファッションウィーク期間中はヴァージルなんかも来るみたいですよ。ここに来ると、リアルなパリのファッションやコーディネイトが楽しめるスポットでもあります」

PaperBoy
137 Rue AmELot 75011 Paris
INSTAGRAM:paperboyparis

Focus4_Other
Paperboy ×
BEAMS “Paperboy” Pop Up

「先にオススメしたカフェ『ペーパーボーイ』と『ビームス』が、昨年6月に続いて2回目のポップアップを行いました。もともと『ペーパーボーイ』のオーナーのジェームスとぼくが友人だったことがきっかけで実現したイベントです。以前から『ペーパーボーイ』のロゴが好きだったのと、スタッフが着ているTシャツやバックが気になっていて、何か一緒にできたら面白ないなと思って企画したのですが、今回も大いに盛り上がり、前回の倍以上の方にお越しいただきました。

まだ公にはできませんが、次も面白い企画を用意しているので期待して欲しいですね。そうそう、『ペーパーボーイ』が今度、スイーツをメインにした『ペーパーバーガー』というお店をオープンするそうなので、こちらも合わせてチェックしてみてください」

GUIDE2_Gaku Sakomura / BIOTOP Director
ファッションだけじゃない、食やアートといった文化もパリの魅力。

パリへは10年くらい来ていますね。メンズのファッションウィークはもちろん、ウィメンズや生地展などを含めると、年に4回くらいは足を運びます。パリはいろんなファッションが集まるし、食やアートといった文化もある。それに昔のものを大事にするという風習も残っている。そういったところが、この街の魅力だと思います。買い付けの移動は主にタクシーを使います。街の景色を眺めながら、パリの変化をつぶさにチェックして回ります。

迫村岳 / ビオトープ ディレクター

1978年生まれ、大阪府出身。大阪の「アダム エ ロペ」に販売員として入社。その後上京し、31歳のときに「アダム エ ロペ」や「ビオトープ」といったジュン・グループのセレクトショップ部門のメンズバイヤーに就任。現在はディレクターとして手腕を振るう。今年の4月には「ビオトープ福岡」がオープン。

Focus1_Fashion
visvim / THE ROW

「個人的にも好きでよく着ている〈ビズビム(visvim)〉が相変わらず良かったですね。ヴィンテージのキャンピングトレーラーをパリに持ち込んだ展示「インディゴキャンピングトレーラー」は圧巻でした。『See now,Buy now』ではないですけど、ここで見たアイテムが翌月にはデリバリーされるという試みもライブ感があって面白かった。言わずもがな、ものづくりのクオリティは他を圧倒するほどずば抜けています」

「打って変わって、真逆のクリエイションではありますが〈ザ ロウ(THE ROW)〉も素晴らしかったですね。アメリカのセレブリティであるオルセン姉妹が手掛けるブランドで、例えばカシミアなどの高級素材を惜しげもなく使用し、非常にラグジュアリーな服を展開しています。メンズは2019SSから本格スタートしたばかりですが、型数も幅も広がって魅力がさらに増していました。

土臭いものとコンテンポラリー、双方まったく異なるクリエイションですが、あえて共通点を見つけるとすれば、突き詰めたものづくりをしているということ。美意識がはっきりしていて、プレゼンテーションを見ただけでも、何を伝えたいのかがすぐに解ります。独自のアイデンティティーとクリエーションを感じるブランドに惹かれますね」

Focus2_Shop
Yvon Lambert Bookshop /
Galerie Patrick Seguin

「まずはパリのコンテンポラリー・アートを牽引する老舗ギャラリー『イヴォン・ランベール(Yvon Lambert)』が運営するブックショップを。写真集やアート関連の本を扱うほか、ヴィンテージポスターやオリジナルグッズも充実しています。また、店内奥にはギャラリーも併設しており、定期的に展示会などを行っています。

扱うものがどれも本当にセンスが良く、お気に入りのお店のひとつですね。現在『ビオトープ』では『イヴォン・ランベール』のポップアップショップを開催中です。このイベントのためにTシャツやトートバッグなどの限定アイテムもつくったのでお見逃しなく」

Yvon Lambert Bookshop
14 rue des Filles du Calvaire 75003 Paris
shop.yvon-lambert.com

「もつひとつは『ギャラリー・パトリック・セガン(Galerie Patrick Seguin)』です。ジャン・プルーヴェやピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンといった家具を扱う、世界的にも有名なギャラリーです。これらの家具は現在、偽物も多く出回っていますが、ここで販売されているものは血統書付きとでも言いましょうか、すべて信頼できるものです。眺めているだけでも勉強にもなりますよね。先ごろオープンした『ビオトープ 福岡』は什器にも凝っていて、ジャンヌレの家具などを店内に使っているので、レイアウトの参考にもなります」

Galerie Patrick Seguin
5 rue des Taillandiers 75011 Paris
www.patrickseguin.com/fr

Focus3_Food
Clover Grill / SEPTIME LA CAVE

「まずは今回二回目のリピートとなった『クローブグリル(CLOVERGRILL)』です。牛骨髄がとにかく絶品。骨髄は少し前にアメリカで問題になったのでネガティブな印象を持っている方もいますが、パリでは全然そんな風潮は無くて。いわゆる油なんですど、これをパンに塗って食べるのが最高。いわゆる焼肉でいうところのホルモンの油の甘い部分に近い感覚ですかね。ほかにもここのお肉はどれも美味しいのでオススメですね。場所はサントノレ。ポンピドゥーセンターの近くです」

Clover Grill
6 rue Bailleul, 75001 Paris
www.clover-grill.com

「もうひとつは『セプティム・ラ・カーヴ(SEPTIME LA CAVE)』というワインバーを。予約が取れないパリの人気レストラン『セプティム(SEPTIME)』が運営しています。『セプティム』が監修したおつまみは美味しいし、ワインはナチュールが好きなのでよく足を運びます。なかでもオレンジワインがオススメ。立ち飲みのうえ、いつもすごい混んでいますが、いつ行っても美味しいワインがある。しかも安い」

SEPTIME LA CAVE
3 rue Basfroi, 75011 Paris
www.septime-charonne.fr

Focus4_Other
SOUND DESIGN VIRGIL ABLOH × JUN TAKAHASHI

「ヴァージル・アブローとアンダーカバーの合同パーティーがファッションウィーク期間中にパリのCONCRETEで開催されたんですが、スペシャルゲストとしてトム・ヨークが登場したんです。イベント開始早々にシークレットDJとして出てきたのですが、突然のことなのでフロアには全然人がいなくて、自分は左端の前の方で見ることができました。あそこまで間近でトム・ヨークを見れる機会はないので、貴重な体験でしたね」

GUIDE3_Shinsaku Masuda / UNITED ARROWS & SONS Buyer
ファッションにおいてパリは最重要都市であり、買い付けのメインフィールド。

はじめてのパリは2年前。ファッションウィークに「ユナイテッドアローズ&サンズ」の買い付けに、プレスとして同行しました。その後はアシスタントバイヤー経て正式にバイヤーとなり、パリへは買い付けで年に2、3回の頻度で訪れています。パリ・ファッションウィークで発表されたものが、その後世界中で盛り上がりをみせる。ファッションにおいて重要な場所であることは間違いありません。ぼくたちにとってパリは海外買い付けのメインです。滞在期間中は朝から晩までスケジュールをみっちり詰め込み、展示会とショーをひたすら回ります。

増田晋作 / ユナイテッドアローズ & サンズ バイヤー

1983年生まれ、東京出身。2007年に株式会社ユナイテッドアローズに入社し、販売員として「ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館」に配属。その後2013年に「ユナイテッドアローズ&サンズ」のプレスを務め、しばらくして同店のアシスタントバイヤーも兼任。2018年には「ユナイテッドアローズ&サンズ」の現職のバイヤーに就任する。世界が注目する、日本代表のセレクトショップを築く。

Focus1_Fashion
Casablanca

「ステファンと一緒に〈ピガール〉を盛り上げていたひとり、シャラフがデザイナーを務める〈カサブランカ(Casablanca)〉に勢いを感じます。2019SSに比べて型数もグッと増えましたし、気になるアイテムもたくさんありました。仕立ての良いイギリス産のテーラードや、某メゾンブランドと同じファクトリーを使ったシルクシャツなどを展開する一方、トラックスーツといったカジュアルなアイテムもある。彼のルーツとフランスっぽさ、さらには不良性も兼ね備えた唯一無二のコレクションは目を見張るものがあります。こういった振り幅を持つブランドって意外とあまりないですよね。シャラフの本気を感じました。

いまは感度の高い人やファッション関係者を中心に盛り上がっていますが、まだまだ伸びしろを感じています。引き続き『ユナイテッドアローズ&サンズ』では打ち出していきます。まだ粗いところもありますが、このままの空気感でいけば、きっとさらに面白いブランドに化けると思いますよ」

Focus2_Shop
The Next Door.

「『ザ・ネクストドア(THE NEXT DOOR)』は、元々アヴィニョンというフランスの地方都市にあったセレクトショップで、2019年にパリにもオープンしました。「ストリート・ベーシック」というショップコンセプトのもと、〈OAMC〉や〈マルニ〉、〈カサブランカ〉をセレクトする一方で、〈ブレインデッド〉、〈ステューシー〉、〈ストーンアイランド〉などが同列で並びます。日本ブランドでは〈コム・デ・ギャルソン〉や〈ビズビム〉がセレクトされていますね。

パリの上品さとストリートが上手にかけ合わさってた商品構成で、いまのファッションの空気を的確に捉えていると思います。以前、オープニングレショプションも行きましたが、若い子が多くて新しい波を感じることができました。場所はリパブリックにあります」

THE NEXT DOOR
10 rue Beaurepaire 75010 Paris
thenextdoor.fr

Focus3_Food
BOOTS CAFÉ

「フードは正直悩みました(笑) というのも、ファッションウィーク滞在期間中は、30分に1件アポイントを入れていて、ゆっくりご飯をいただく時間がないんですよね。強いて挙げるなら、マレ地区にある『ブーツカフェ(BOOTS CAFÉ)』でしょうか。

マレ地区はショールームや展示会場が集まるエリアなので、アポイントの合間に時間を潰します。趣のある店構えにモダンなインテリアを合わせるセンスが面白い。コーヒーは『UAバー』と同じく『フグレン』を使用していて美味しいですよ。インスタでは、カフェにも関わらず政治的なメッセージを発していたりするので面白く、ついついチェックしてしまいます」

BOOT CAFE
19 Rue du Pont aux Choux 75003 Paris
www.instagram.com/bootcafe

Focus4_Other
POGGY’S BOX / KAR

「まずはじめに『ユナイテッドアローズ&サンズ』のディレクターを務める小木が、個人プロジェクトとして行った展示『ポギーズ ボックス(POGGY’S BOX)』。小木のフィルターを通して日本の良いものを紹介するというコンセプトのもと、ジュン イナガワがペイントしたデニムや、〈オーラリー〉と〈5525ギャラリー〉のジャケット、〈ミヤギヒデタカ〉のリメイクアイテムなど、小木にしかできないブランドセレクトやアイテムをピックアップして編集していました。自分の先輩がこういった活動をしていることが誇らしいですし、何より、改めて小木の発信力や提案力には驚かされます」

「それと世界中のセレブリティを相手に、アートな高級車を専門に扱うディーラー『ラート ド ロートモービル(L’Art de L’Automobile)』のアパレルブランド〈カー(KAR)〉のインスタレーションも素晴らしかったですね。クルマをモチーフにグラフィックTシャツなどを展開しているのですが、ファッションブランドとはまた違った視点が面白いですし、何よりカルチャーの掘り方が本当にすごいんです。クルマに関連するカルチャーでいえば、彼ら以上に表現できる人は他にいまはいないのではないでしょうか。ガスステーションをイメージした展示会場は、オイルや洗車グッズが陳列されるなど徹底されていたし、ジャン・プルーヴェで統一されたインテリアもたまりません。中途半端ではなく、とことん突き詰めた姿勢に毎回驚かされます」

よくパリを形容する枕詞として、「花の都」、「芸術の都」、「美食の都」なんていう言葉が使われます。確かに3名のバイヤーがスナップしてきた写真を見ると、どれもはなやかだし、最新のトレンドがパリから発信されていることに気付きます。一方で芸術や食といった古くから続く文化も脈々と受け継がれてる。新旧の文化が並列し、自然と交差しているのがパリの魅力なのではないでしょうか。

さて来週からはパリ・メンズファッションウィーク2020SSがスタート。「アパレル不況の煽りをうけ、ファッションがつまらなくなっている」という話を度々耳にしますが、全然そんなことはありません。パリを見ずして結構と言うなかれ、ファッションはまだまだ刺激的だし活気に満ちています。そんなことを、3人のバイヤーのスナップを見て思うのでした。

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