『ひよっこ』や『奇跡の人』など数多くの作品で、日々を生きる人々の感情の機微を優しく繊細に描いてきた岡田惠和。そんな彼が、『ぽあだむ』『漂流教室』といった銀杏BOYZの楽曲から紡ぎ出した「愛」と「青春」と「許し」の物語。それが『いちごの唄』である。
少し狂気を感じるほどにピュアでひたむきな主人公・笹沢コウタを熱演するのは古舘佑太郎。そんなコウタが恋する女神、一年に一度、七夕の日にしか会えない謎多きヒロイン天野千日には石橋静河。一般的なイメージとは少し違った石橋にしかできない「女神」をときにチャーミングに、ときにSっ気たっぷりに演じ上げている。
しかし、本作におけるコウタはキモい。好きな人を見つめるコウタの嬉しそうな顔、相手に喋る隙を与えず一方的に話し続けるコウタ、千日の横を飛び跳ねるように歩くコウタ、恋するコウタの一挙手一投足がピュア過ぎてキモい。
でも、そんなコウタのすべてがいとおしくてたまらなくなる。
だって、本気で恋をしている時の自分って、他人から見ると最高に気持ち悪いものだから。
そう、この映画には本当の恋が詰まっている。
「恋するキモさは、そんじょそこらのエモさになんか負けない」
エンドロールが終わった時、私はそう確信した。
最近、簡単に使われ過ぎる「エモさ」という言葉が、コウタの「キモさ」によって淘汰されることを切に願う。
銀杏BOYZのフロントマンである峯田和伸はコウタと千日を見守る印象的な役回りで劇中に登場。そして、映画と同名の主題歌『いちごの唄』を今回あらたに描き下ろしている。銀杏BOYZのCDリリースとしては約1年10か月ぶりとなるこの曲は、公開劇場(一部劇場を除く)で限定販売されるとのこと。お買い逃がしのないように。
今回は主演の古舘佑太郎と峯田和伸に話を聞くことができた。
と、なんとか映画情報サイトでよく見る書き出しができた。これで配給会社に大目玉を食らうことはないだろう。とりあえずは一安心である。
さて、ここで前もって謝罪をしておきたい。今回インタビュアーを務めさせて頂く、私、爪切男は、普段から「自慰」「風俗」といった卑猥な言葉が頻出する文章を書いて日銭を稼いでいる野良作家である。
「神様に救われた夜は一度もないが、AV女優に救われた夜は何度もある」といったよく分からないことを偉そうに書けることだけが私の強みである。そんな私の乱れた恋愛をまとめた著書『死にたい夜にかぎって』の帯の推薦文を峯田さんに書いて頂いたことが不思議な縁となり、今回のインタビューに繋がったのだ。
これからはじまる峯田さん、古舘さんへの取材でも、度重なる話の脱線、まったく映画に関係ない話、二人を差し置いて私の経験を声高に話す自分語りなどの見苦しい部分が散見されると思いますが、どうか広い心で許して頂けることを平にお願い致します。
映画の取材というよりは、男子学生が休み時間に女の子の話やエッチな話で盛り上がっているようなノリです。これもまた青春ということでお楽しみ頂けると幸いです。(爪 切男)