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たまにはバカな話でも…。峯田和伸×古舘佑太郎。

映画『いちごの唄』

たまにはバカな話でも…。峯田和伸×古舘佑太郎。

その圧倒的なパフォーマンスと音楽性で聴くもの、観るものの心を鷲掴みにしてきた銀杏BOYZ。豊かなその物語性が映画へ変換されるのはごく自然のことだったのかもしれない。映画『いちごの唄』では、銀杏BOYZの楽曲を発火点に、『ひよっこ』や『最後から二番目の恋』など数多くの作品を手がけてきた脚本家・岡田惠和がそのバトンを受けて、喪失と再生の物語へと昇華している。かたや主演、かたや出演と楽曲提供という形でこの映画と深く関わった、古舘佑太郎と峯田和伸に、女の子や青春のエピソードを聞いた。インタビュアーは、哀愁とバカバカしさがあふれる文章では当代きっての作家・爪 切男が務めた。エピソード一つひとつが強すぎる、その模様をお届けする。

  • Photo_Hiroshi Takagi
  • Styling_Frukawa Junichi(Furutachi)、Hiroaki Iriyama(Mineta)
  • Hair&Make_Miki Shigeyama
  • Text_Tsumekirio
  • Edit_Shinri Kobayashi
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Prologue by 爪 切男

ひよっこ』や『奇跡の人』など数多くの作品で、日々を生きる人々の感情の機微を優しく繊細に描いてきた岡田惠和。そんな彼が、『ぽあだむ』『漂流教室』といった銀杏BOYZの楽曲から紡ぎ出した「愛」と「青春」と「許し」の物語。それが『いちごの唄』である。

し狂気を感じるほどにピュアでひたむきな主人公・笹沢コウタを熱演するのは古舘佑太郎。そんなコウタが恋する女神、一年に一度、七夕の日にしか会えない謎多きヒロイン天野千日には石橋静河。一般的なイメージとは少し違った石橋にしかできない「女神」をときにチャーミングに、ときにSっ気たっぷりに演じ上げている。
かし、本作におけるコウタはキモい。好きな人を見つめるコウタの嬉しそうな顔、相手に喋る隙を与えず一方的に話し続けるコウタ、千日の横を飛び跳ねるように歩くコウタ、恋するコウタの一挙手一投足がピュア過ぎてキモい。
も、そんなコウタのすべてがいとおしくてたまらなくなる。
って、本気で恋をしている時の自分って、他人から見ると最高に気持ち悪いものだから。
う、この映画には本当の恋が詰まっている。
恋するキモさは、そんじょそこらのエモさになんか負けない」
ンドロールが終わった時、私はそう確信した。
近、簡単に使われ過ぎる「エモさ」という言葉が、コウタの「キモさ」によって淘汰されることを切に願う。

杏BOYZのフロントマンである峯田和伸はコウタと千日を見守る印象的な役回りで劇中に登場。そして、映画と同名の主題歌『いちごの唄』を今回あらたに描き下ろしている。銀杏BOYZのCDリリースとしては約1年10か月ぶりとなるこの曲は、公開劇場(一部劇場を除く)で限定販売されるとのこと。お買い逃がしのないように。
回は主演の古舘佑太郎と峯田和伸に話を聞くことができた。

、なんとか映画情報サイトでよく見る書き出しができた。これで配給会社に大目玉を食らうことはないだろう。とりあえずは一安心である。

て、ここで前もって謝罪をしておきたい。今回インタビュアーを務めさせて頂く、私、爪切男は、普段から「自慰」「風俗」といった卑猥な言葉が頻出する文章を書いて日銭を稼いでいる野良作家である。

神様に救われた夜は一度もないが、AV女優に救われた夜は何度もある」といったよく分からないことを偉そうに書けることだけが私の強みである。そんな私の乱れた恋愛をまとめた著書『死にたい夜にかぎって』の帯の推薦文を峯田さんに書いて頂いたことが不思議な縁となり、今回のインタビューに繋がったのだ。

れからはじまる峯田さん、古舘さんへの取材でも、度重なる話の脱線、まったく映画に関係ない話、二人を差し置いて私の経験を声高に話す自分語りなどの見苦しい部分が散見されると思いますが、どうか広い心で許して頂けることを平にお願い致します。

画の取材というよりは、男子学生が休み時間に女の子の話やエッチな話で盛り上がっているようなノリです。これもまた青春ということでお楽しみ頂けると幸いです。(爪 切男)

古舘 佑太郎

2008年自身が率いるロックバンドThe SALOVERSを結成し、青春の生き様を鮮やかに映し出すバンドとして高い評価を受ける。2016年、ソロとしての1stフルアルバム「BETTER」をリリース。2017年には新たなバンド「2」(ツー)を始動。ソロ活動では、連続テレビ小説をはじめ、ドラマ、舞台、映画等で俳優としても活動。

峯田和伸

2003年、GOING STEADYを解散。その後銀杏BOYZを結成。当初は峯田のソロ名義であったが、同じくGOING STEADYの安孫子真哉(ベース)と村井守(ドラム)、新ギタリストのチン中村をメンバーに迎え、本格的に活動を開始。2013年に他メンバーは脱退したものの、その後も作品を多数リリース、また2019年1月に2度目となる日本武道館公演を行うなど、活発な音楽活動が続く。近年は、映画やドラマなど俳優活動も目立つ。

はじまらない取材。

今回はよろしくお願いします。峯田さんには僕の本の帯を以前書いてもらって…、その節は本当にありがとうございました。こうやってお会いできて本当に嬉しいです。

峯田和伸(以下、峯田)え、ご本人ですか? うわ~! 本、面白かったです。

『死にたい夜にかぎって』爪 切男

古舘さん、よろしくお願いします。

古舘佑太郎(以下、古舘)お願いします! あの、さっき控室で〇〇湯の話をされてましたよね?

あ、してましたね。時間帯によってはハッテン場になることで有名な銭湯です。

古舘そうそう! 僕、サウナが大好きなんですけど、何にも知らずにその時間帯に行ったことがあるんですよ。あれはビックリしたなぁ…

銭湯のルールを守って楽しんでるなら問題ないんですけどね。あ、でも、僕、そっちの気はないんですけど、六本木で外国人男性の立派なものをお口でしてあげたことがあるんですよ。

古舘・峯田(笑)

友達に騙されて、どうしてもそうしないといけない状況になって。あれは忘れられないなぁ。

古舘その時、どんな気持ちだったんですか?(笑)

昔、ダウンタウンの番組で似たようなドッキリ企画があって、外国人男性に囲まれて危機一髪になった山ちゃん(月亭方正)が思ったことが『最後までやられないように、なんとか口で満足してもらおう』って覚悟を決めたんですよね。

峯田あったあった。

すごい格好良いじゃないですか。そんな状況でも前向きにポジティブに考えられる山ちゃんすげえって思って。だから俺も口で頑張ろうって思いました。やるからには最高のものを見せたいなってアスリートの気分になって。もう国際大会に出場してる日本代表選手と同じ気持ちですよね。国を背負ってやってやろうって。

古舘今日、なんの取材なんですかコレ(笑)。

すいません…

峯田あ、でも、実は俺も山形で中学生の時にやってました。男同士八人ぐらいで。

一同(笑)

峯田ただ気持ちいいことだけを追求して八人でやってました。まだ自我が生まれてない歳だったし、田舎だし、今みたいにネットもないから、自分達がやっていることが世の中的にヤバいことだって気付かなかったんですよね。それに気づいた奴からどんどんやめていきましたね。

(笑)

峯田でも、八人の中で俺が一番うまいって言われてました。

一同(爆笑)

口がうまい奴はミュージシャンになる人が多いって言いますもんね。

峯田楽器と同じで大切に扱うからね。

古舘そんなの一度も聞いたことないですよ(笑)。

峯田みんなが俺のお口を狙ってたんだよ。

一同(笑)

古舘あの、これ本当に取材ですよね?(笑)

(峯田、爪切男がノートに聞きたいことを手書きでびっしり書いてきたのに気付く)

峯田真面目だから、ノートにいっぱい質問書いてきたのに(笑)。全然聞けてねえじゃん(笑)。

本当にごめんなさい…

僕の女神はドッペルゲンガー。

では改めて…

峯田・古舘(笑)

主人公のコウタは、ヒロインである千日のことを、大人になった今も、学生時代と変わらず「女性」ではなく神聖な「女神」として崇めていますよね。一種の女神信仰に近いと思うんです。

古舘そうですね。

実は僕にも女神がいるんです。高校生の時に、クラスで一番可愛かったマドンナに毎日屋上に呼び出されてたんですね。屋上だとイチャイチャできるかと思ったらそうじゃなくて。

峯田それ、自分の本に書いてましたよね。

「あなたの顔、すっごい顔ダニ多そうだから私が退治してあげるね」って言われて、いきなり顔をビンタされたんです。それからほぼ毎日、学校のみんなには内緒で彼女のビンタを受け続けてたんです。

古舘それってめちゃくちゃエロくないですか!

すげえ可愛い子がビンタだけど、自分を触ってくれるってのが嬉しくて。その彼女が僕にとっての女神なんです。それで、お二人にとってこういう女神的存在の子っていますか?

峯田そんなエピソード聞いた後に何を話せばいいんだよ!(笑)

古舘前振りが邪魔過ぎて…(笑)

すみません…

古舘でも、僕はそういう女神信仰は強いです。初めて好きになった子を今もずっと引きずってますよ。付き合いたいとかどうにかなりたいとかそんな下心はないですけどね。

映画のように、大人になってから会ったりはしましたか?

古舘会いました会いました! 友達の結婚式で偶然再会したんですよ。今なら普通にしゃべれるだろうって思ったんですけど、いざ彼女を目の前にしたら、すごくあたふたしちゃって…。

やっぱり女神が目の前にいるような緊張感?

古舘う~ん、というよりも、自分の中では「師匠」のような存在かもしれないです。僕の心の中にずっと居続けてくれて、人生の道しるべになってくれてますね。もう好きとか嫌いの次元じゃないかも(笑)。

峯田あ! あの、ちょっと不思議な話をしてもいいですか?

一同どうぞ(笑)。

峯田僕、高校一年の頃から三年まで、ずっと心に思っていた女の子がいたんですね。

古舘三年間! 純愛ですねぇ。

峯田でも、俺は度胸がなくて、結局三年間ひとことも話すことができなかったの。廊下にいる彼女を遠くから「可愛いな」って見てるだけ。で、卒業も近づいてきて、俺は東京の大学に行くことが決まってるわけですよ。「あ、このままあの子と話せないまま山形ともお別れだ」ってあきらめてたのね。

せつないですねぇ。

峯田そしたら、俺の実家の電器屋の前に、町で一番大きいスーパーがあるんですけど、そこにある花屋で、可愛いエプロンを着たその子がアルバイトしてたの! 制服を着た彼女も最高だけど、エプロンの彼女も最高なのね!「うわ~、サトミちゃんに最後に会えたよ」ってなって。

古舘サトミちゃん(笑)。

峯田それでも、結局声はかけられなかったんだけど、花屋のサトミちゃんは淡い思い出としてずっと心の中に残ってたんですよ。そっから、そっから去年ですよ!

はい(笑)。

峯田四十歳記念の高校の同窓会に、サトミちゃんが来てたんですよ!

一同オ~!

峯田で、俺の気持ちを知ってる友達から「おい、峯田、お前朝ドラとか出てる場合じゃないよ。今、告白しろ!」ってせかされて、サトミさんに声をかけたんです。

四十歳の告白!

衣装協力:〈DESERT SNOW〉〈Porter Classic〉

峯田「あ、すいません、サトミさん。僕、あなたのことが好きだったんです。花屋でバイトしてましたよね。それも僕トラックの影から見てたんです」って言ったんですね。そうしたらサトミさんが「あ、それ私じゃないです。花屋で働いたことなんてないです」って、おかしなこと言うんですね。

古舘雲行きが怪しい…

峯田で、何回もしつこく聞いたら、「こんなこと言ったら、私のことアレって思うかもしれないんですけど、それ、私のドッペルゲンガーです。よく出るんですよね。私のドッペルゲンガー。山形だけじゃなくて、仙台とか東京にも出るんです」って。

一同(爆笑)

自分の姿をした分身が日本中に(笑)。

古舘怖い話になってる(笑)。

峯田俺の女神、サトミちゃんのドッペルゲンガー。あれは辛かったなぁ…。

一同(笑)

本当の自分を守るために、銀杏の峯田という虚構を作ったんです。

劇中で、ヒロインの千日は、「女神」と呼ばれる自分と、実際の自分のギャップに苦しむ場面があったんですけど。お二人が、音楽や俳優をやっている上で、たとえば、ファンに「峯田こうあるべし」「古舘こうすべし」みたいな理想を持たれて、その違いに苦しんだことってありますか?

古舘僕の場合は、理想像を求められるってことはあまりないんですが、本当の自分が誤解されているなっていうギャップには苦しみましたね。それこそ子供の頃からです。

他人からはどんな風に思われることが多いですか?

古舘怖いとか…、取っつきづらいって言われますね。自分では全然そんな風に思わないんですけど。育ってきた環境が影響してるのかな…。

今でもそのギャップには苦しめられてますか?

古舘だいぶマシになりました。いつまでも人のせいにしていないで、こっちから本当の自分を伝えなきゃダメなんだなって、それに気づいてからは大丈夫です。

すごい真っすぐな目をしてるのに。

峯田ね、本当に綺麗な目してるのに。

古舘昔は多少尖ってた自覚はあります(笑)。

峯田さんはいかがですか?

峯田僕は、ある時期から「銀杏の峯田」っていう虚構の自分を作るようになりました。自分の身代わりでもある「銀杏の峯田」がいると、すぐ裸になっても、変なMCやっちゃっても、なにやってもいいんですよね。全部そいつが矢面に立ってくれるんで。

虚構の自分を作る理由はなんですか?

峯田やっぱり、自分の本当の部分を誰かにバラしたくないんでしょうね。

さっきはサトミちゃんのドッペルゲンガー、今度は自分のドッペルゲンガーですね(笑)。

女の子のために全力疾走したことありますか?

青春映画でよく見るのが、好きな女の子のために全力疾走するシーンです。この映画でもコウタが商店街の中を走り回る印象的な場面がありますが、お二人は女の子のために走った思い出なんてありますか?

峯田う~ん。

ちなみに、僕はそういう思い出がないんです。それが男として、ちょっと寂しいなとも思ってます。

峯田あ~、そういう役どころで演技として走ったりすることはあったけど、プライベートではないかな。

実は試写会でこの映画を観て、僕もたまには女の子のために走ってみようってなって、よく行く高円寺のピンサロまで全力で走ってみたんですけど、なんにも気持ち良くなかったですね。

峯田ピンサロの話すっげー邪魔だな!(笑)

古館質問が頭に入ってこない(笑)。

峯田まぁ、でも見返りがないと難しいのはあるよね。

古館実は、僕は走ったことあるんです。さっき話した「師匠」である初恋の女の子との思い出なんですけど。

ほうほう。

古館彼女と一緒に帰る時は、できるだけ長く一緒にいたいから、夜遅くまで遊んでたんですね。で、彼女を家まで送り届けるんです。すぐにサヨナラしたくないから、できるだけゆっくり歩いてました。彼女が家に入るのを見届けたら、全力疾走でバス停まで戻るんです。そうしないと僕の家に向かう最終バスに乗り遅れちゃうんですよ。だから毎日汗だくになって走ってましたね。

峯田それって中学三年生の時?

古舘そうですね。中三です。

いいですね~。

峯田結局古舘くんが一番ナチュラルでピュアなのかもしれないねぇ。

最終結論:ヤレる。

もうそろそろお時間みたいです。今日は本当にありがとうございました。

峯田・古舘ありがとうございました。

最初は、この映画は銀杏BOYZの曲から派生した青春映画だと思っていたんですが、映画を拝見した後は、これは古舘さんのためにある映画なんじゃないかと思いました。少し気持ち悪いし、ちょっとウザいし、たまにバカだし、青春の全ての要素を持った古舘さんに夢中になりました。

峯田そうですね。古舘くんのそういう部分が、この映画の味や香りになって活かされていると思いますね。

古舘ありがとうございます!

僕もこの取材の間に古舘さんのことが好きになりました。なのでヤれるかもしれません。

一同(笑)

古舘え、僕と…できるってことですか?

峯田今日はずっと何を言ってるんですか。

一同(笑)

『いちごの唄』

7月5日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ファントム・フィルム
ⓒ2019「いちごの唄」製作委員会
ichigonouta.com

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