インテリア業界において確固たる地位を築いてきた『Mid-Century MODERN』と『STITCH TOKYO』を展開する『STITCH JAPAN』。その代表をつとめてきた皆川実直さんは、オリジナルブランド<MADE BY SEVEN –REUSE–>とともに今季独立を果たす。
15年以上にわたりインテリアシーンに身をおいてきた皆川さんが仕掛けたのは
ハワイアンシャツの老舗〈レインスプーナー〉とのコラボレーションプロダクトだった。
最初はスプーナークロスでぬいぐるみを作ったんです。 アンオフィシャルなんですけど(笑)
と、今回のコラボレーションの話を進める前に。
皆川さんと〈レインスプーナー〉の出会いは数年前の不思議なご縁。
元来アメリカ好きだった皆川さんは、前職にて古着部門を任される。〈レインスプーナー〉に関しては、ファンとかマニアではなく“知ってはいたものの”ぐらいの話だったのだとか。
テーブルに置かれたなんともかわいいクマのぬいぐるみ。
「アンオフィシャルではあるんですが(笑)、実は最初にスプーナークロスを使ったアイテムがこれなんですよ。2011年に会社の倉庫にあった古着を有効活用した商品を目的に〈MADE BY SEVEN –REUSE–〉がブランドとしてスタートしたんです」
「その第一弾としてクマを作ろうと思って生地を探している時に見つけたのが〈レインスプーナー〉のハワイアンシャツでした。それがあらためてちゃんとレインスプーナーを認識した瞬間だった。年代によって異なるタグとかシャツの柄にも様々なデザインがあって面白いなあと思いましたね」
「今見ると、この生地が「ラハイナセイラー」なんだと思ってびっくりしたり(笑)。同柄でハート型の付属も作って、クマがハートを抱きしめる姿から「bear hug」と名付けました。シャツのストックも多くなかったのでほぼワンタイムな展開だったんですけどね」
そうして〈MADE BY SEVEN –REUSE–〉その年の春夏シーズン第一弾としてリリースされた「bear hug」。
「秋冬シーズンはどうしようか、とこれまた倉庫の生地を見てみると〈ペンドルトン〉とかヴィンテージのブランケットが出てきた。それと当時イームズシェルチェアの生地の張り替えができるという背景が重なって、じゃあこれを張っちゃおうと。それならばペンドルトン公認でやりたいと思い、日本の担当者さんと話をさせてもらい、見事ペンドルトンとオフィシャルで作れる環境が整ったんですよね」
ペンドルトンとのオフィシャルの取り組みが正式になったことで、〈MADE BY SEVEN –REUSE–〉のプロダクトは徐々に加速。
「イームズの椅子に始まり、スケートデッキスツール、マガジンラックや時計を作っていく中で『JUMBLE』という合同展示会に呼んでもらい、そこで多くの人に見てもらいながら受け入れてもらえた。そして2015年の秋に〈レインスプーナー〉から一緒にやりませんか? と正式にお声がけいただけたんです」
〈MADE BY SEVEN –REUSE–〉のプロダクトを継続して展開してきたからこその出会い。それが今回の正式なコラボレーションにつながったというご縁というわけ。
大切にされてきた柄にはアイデンティティがある。
「レインスプーナーのラハイナセーラーやペンドルトンのチーフジョセフもそうですが、昔から大切にされている柄を使い続けていることにブランドとしての安定感や安心感を覚えますね。そんな素晴らしいアイデンティティを、僕なんかがこれまでになかったものを生み出せるという環境はとてもありがたいしおもしろいです」
60年以上の歴史を誇る日本を代表する老舗ブライウッド(成形合板)メーカー『サイトーウッド』社に特注したボディを使用したマガジンラック。幅:410×奥行:160×高さ:265(mm)¥27,000
新品のスケートデッキに生地を貼り付け、シャープで美しい形状の8mmスチール製オリジナルベース(脚)を取り付けたデザインスツール(腰掛椅子)。生地とデッキの間には2cmのウレタンクッションを敷き、座り心地も考慮。高さ:440×奥行:216×長さ:795(mm)¥32,400
『サイトーウッド』社の協力を得て独自開発したブライウッドプロダクト。ウォールアート感覚で壁面に飾って使用できる。時針分針秒針はカメハメハ大王をイメージして金色に塗装し、秒針に先端にはヤシの葉を表現。タテ:355×横:355×奥行:30(mm)¥27,000
そうして今回リリースされたプロダクトはデッキスツール、マガジンラック、ウォールクロックの3種。そこにスプーナークロス5柄をピックアップして落とし込んだ。これにあたり、実はちょっと楽しみなことが。
「展示会にレインスプーナーの社長さんが見てくれて、来週、ウォールクロックとスケートデッキスツールがハワイに飛ぶんですよ」
今回のプロダクトたちがハワイのレインスプーナー直営店にてディスプレイされるのだとか。
直営店で販売することは現時点ではないんですけど、ハワイに育った現地の人たちが見てくれる機会ができるのは楽しみなことです。日本から旅行で訪れる方々の目にも止まって、それを調べて日本で買ってくれたら嬉しいですよね」
ハワイの人々にとって〈レインスプーナー〉はソウルフードのようなもの。本場の人たちに、彼らがこれまで見たことのないプロダクトをプレゼンテーションできるのは1つのチャンスだろう。
生地が呼ぶプロダクトを作っていきたい。
と、おもむろに皆川さんが取り出した1枚のシャツ。
「これが18年位前に兄貴からもらったマイ・ファースト・レインスプーナー。もうしわくちゃですけど古いタグが付いてますね。これが当時のものなのか分からないですけど」
なるほど皆川さんは、倉庫での偶然の出会いといい、タグにそこまで興味を示してない点といい(笑)良き意味でマニアックに傾倒することなく、あくまでも視点がフラット。だからこそ洋服をインテリアに落とし込むユニークな発想が生まれるのでは。とはいえ今後、継続的に取り組むことでレインスプーナーにもどんどん詳しくなっていくのだろう。
「詳しくなりたいですね。今回は強度のことも考えてスプーナークロスを選んだんですけど、今度はハワイの本場に行ってウエアハウスでいろんな生地をピックアップしてみたいです。兄貴にもらった私物のレインスプーナーみたいなユニークなが柄って飾っても可愛いと思うんですよね。生地が呼ぶプロダクトをこれからは作っていきたいと思っています」