
ー ところで、なつめというキャラクターをどのように捉えましたか?
吉岡:魅力的なキャラクターだなと思いました。普通だったら、目が見えないというハンディを負ってることが全面に出そうじゃないですか。でもそれをはねのけるだけの強い気持ちを持ち続けているというのが、彼女の個性だなと思いました。社会的な弱者に見えるようで、実は誰よりも強い人間なんだと思います。
ー 具体的にどの辺でなつめの強さを感じることがありましたか?
吉岡:まず事件に遭遇したときに、ただ警察に報告するだけではなく、事件なのではないか?と思える推理力とか危険察知能力でしょうか。精神的なところでいえば、目が見えないのに直接自分で対峙しようとすることですね。自分の身体を以ってして戦おうとするところは強いなと。失ったものが多すぎるからこそ、誰かのためにここまで懸命になれるのかな、とも思いましたね。
ー 吉岡さん自身は強い方なんでしょうか?
吉岡:どうでしょうか。もちろん落ち込んだりすることもありますが、私は周りの方のサポートがあって初めてこの仕事ができているので、そういう意味では強いと思います。一人じゃないんだなというのが常にあります。とくに周りに強い女性が多いので(笑)。
ー なつめとリンクする部分はありましたか?
吉岡:諦めないという気持ちですね。長い時間をかけて物事に対峙していくという芯の部分には共鳴できました。実際、撮影も本当にきつい現場でした。

ー それはどのへんが?
吉岡:まず、二ヶ月に渡った撮影だったので、時間的な拘束も大きかったです。あとは動きの激しいシーンが多いので撮影自体も難しかったんだと思います。本作で照明を担当されていた藤井勇さんは『万引き家族』でも照明を担当されていた方なんですが、撮影中に(日本アカデミー賞の)受賞式があって。その日は昼夜逆転で撮影していたので朝の5時まで撮影したあと、授賞式が終わってすぐに現場に帰ってきてくださって。しかも差し入れもいただいて。それにはちょっとぐっときましたね。
ー 画作りもすごくシックな感じでしたね。完成した作品をご覧になってどうでしたか?
吉岡:ど直球なエンターテインメントになったと思います。R15+指定なんですが、ただただ面白い映画ができたなって思います。スタッフさんに恵まれて、準備期間が2ヶ月あって、撮影期間も2ヶ月あって、緻密に作り上げた作品だと思うので、全員の努力が形になっていると思います。中打ち上げもなく、ただただ撮るという日々でしたので(笑)。

ー 今作品は、結構踏み込んだ描写をしていますが、レーティングがついている作品は初めてでしたか?
吉岡:そうですね。R15+指定なので、今回は撮影に入る前から話は聞いていました。けっこう残虐なシーンがありますが、そういうシーンを無視しないスタンスがいいなと思いました。
ー スリラーに出演されている吉岡さんは新鮮でした。このように新しい一面を引き出してもらうということに対してはいかがですか?
吉岡:ありがたい、ということにつきます。事務所のスタッフとよく話していたのは変わった作品や難しい役から逃げない姿勢、果敢に挑戦していくというのを大事にしたいねということだったんです。いままでいろいろな役柄をやってきたからこそ、こういう特殊な役のお話をいただけたと思うので、いままでのスタンスが実を結んだ作品だなって思いました。
ー 自分とかけはなれた役を演じるときは、燃えるタイプですか?
吉岡:めちゃめちゃ燃えるタイプだと思います(笑)。
ー 改めてこの大変な役が終わってみて、ご自身で振り返ってみていかがですか?
吉岡:大きな出会いでした。いままでやったことのないキャラクターを、ほとんど素顔でむき出しで演じられて。ありがたいことです。あとはこの年齢でやらせてもらえたというのも大きかったですね。これから30歳になろうとするタイミングで、30代でどんな役ができるかというのが、いますごく大事なテーマだなと思うんです。
ー そういう意味ではブレイクスルーになるような作品になったかと思いますが、今後はどんな役者になっていきたい、というビジョンはありますか?
吉岡:今は細かいビジョンを持つというよりは、とにかく目の前の仕事を一生懸命やっていこうというスタンスです。先ほどもお話しましたが、デビューして一貫してやってきたのが、役を選ばない、選びすぎないということなんです。これからも難しい役だったり、人には敬遠される役に挑戦していきたいと思います。クセがある役だったり、これは難しいんじゃないかっていう役が来たり、「やると思わなかった」って言われるとすごく嬉しいんです。
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