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FEATURE
型にはまらず、限界に挑む。進化し続ける障害者によるブレイクダンス・クルー。
ILL-Abilities

型にはまらず、限界に挑む。進化し続ける障害者によるブレイクダンス・クルー。

ワールドワイドに活躍をする、障害者7人によるブレイクダンスチーム、イル・アビリティーズが来日。障害、性、言語、国籍などを超えたパフォーミングアーツの祭典「True Colors Festival -超ダイバーシティ芸術祭- 」の第一弾となる「True Colors Dance」へ登場。イベントでは、メンバー7名によるショーケースをはじめ、世界的に活躍をする日本人ブレイクダンサーたちとともに熱いバトルを繰り広げるなど、彼らのパッションと魅力を存分に見せてくれました。そのイル・アビリティーズのリーダーである、レイジーレッグスことルカ・パトゥエリに、彼らの活動について話を聞いてみました。

  • Photo:Reiji Yamasaki(Portrait)
  • Text:Kana Yoshioka
  • Edit:Hiroshi Yamamoto

PROFILE

ILL-Abilities_イル・アビリティーズ

2007年にモントリオールを拠点にするダンサー/モチベーション・スピーカーのルカ・レイジーレッグス・パトリエが「No Excuses, No Limits(=言い訳なし、限界なし)」というメッセージを広く伝えるために設立。世界各国より選び抜かれた7人のB-BOY/ブレイクダンサーから成るインターナショナル・ブレイクダンスクルー。「ILL(イル)」とは、ヒップホップカルチャーで、素晴らしい、センスがある、という意味を持ち、「障害」といったネガティブな側面を強調するのではなく、彼らなりの限界に挑戦するポシティブなマインドで活動中。

「ボーンズ・ブリゲード」のドキュメンタリーを観て、
いろいろアイデアが浮かんだ。

ー まず始めに、ルカさん自身はどのような履歴を辿ってブレイクダンスをするようになったのでしょうか。

Luca “Lazylegz” Patuelli(以下、ルカ):生まれはカナダのモントリール。10代のほとんどをメリーランド州のワシントンDCで過ごして、大学に入学したときにモントリオールに戻ったんだ。ダンスは15歳の頃に始めた。子供の頃からアクティブだったから、身体を動かすことをした方がいいのではと、サッカー、ベースホール、フットボールと様々なスポーツをやってきたよ。ダンスを始める前は、スケートボードに情熱を傾けていたし。膝をボートの上に置いて腕を使ってパドルをして、デッキを抑えてオーリーや50-50などの技に挑戦していたね。膝を手術してからは、傷口が開いてしまうからスケートボードができなくなってしまったんだけど、スケートボード仲間の薦めでブレイクダンスに出会ったんだ。

ー スケートボードをやっていたんですね。好きなカンパニーやスケーターは誰ですか?

ルカ:夢中になったのは、〈ゼロ・スケートボード〉。あとは〈ワールド・インダストリーズ〉、スケートボーダーでは、チャド・マスカ、トニー・ホークとか。「ボーンズ・ブリゲード」のドキュメンタリーフィルムはすごく好きだよ。あのドキュメンタリーを見たあとに、イル・アビリティーズに似ているなと思ったんだ。僕たちも世界中からベストな個性を持ったダンサーを集めてツアーを行っているからね。あのドキュメンタリーを観たときに、いろいろアイデアが浮かんだよ。

ー ブレイクダンスの動きは、どうやって習得していったのですか。

ルカ:僕の友達は足を使う、伝統的なブレイクダンスでフットワークをやる友達が多かったんだ。だけど僕はそれができない。その代わりに、僕は上半身が強いから彼らができない他の動きをしたりしたんだ。それが個性としてヒップホップカルチャーに受け入れられた。僕がブレイクダンスに感謝しているのは、やってはいけないかもしれない動きを、可能にしてしまうということ。ヒップホップカルチャーでそれは誇るべきもので、強い情熱があれば、型にはまらない動きをすることも可能なんだ。

ー そうなると、ルカさんは上半身と手の動きが強みですね。

ルカ:そうなるね。上半身の動きと、クラッチ(松葉杖)を使用した動き。クラッチダンスはとてもレアだけど、数名がクラッチを使ってやっているよ。クラッチは、フィラデルフィアにあるカンパニーに作ってもらっているんだ。チタン製だからとても軽い。僕たちはサポートをしてもらっているんだよ。

僕たちに限界はないと思っている。

ー どのようにメンバーを集めたでしょうか?

ルカ:僕はかつて、世界中のブレイクダンス・バトルに参加していたんだ。そこで知り合った魅力的なダンサーに連絡先を聞いて、僕たちの仲間になれるかどうかコンタクトをしていったんだ。それとインターネットで映像を観て探すこともしている。

ー 今回パフォーマンスで登場するダンサーたちを、ご紹介頂けますか?

KUJO

ルカ:クジョーはロサンゼルス出身のダンサーで、30年以上踊り続けているレジェンド。実にさまざまな動きを革新して、世界へ広めた重要な存在なんだ。僕たちは、彼の背中を追っている。だから自分たちのアイデアに関して、いつもアドバイスをしてもらうんだ。ちなみにニックネームは、クレイジー・クジョー。物静かでインテリジェントだけど、めちゃくちゃクレイジーな側面もある(笑)。

REDO

ルカ:リドゥーはオランダ出身。体の動きや踊り方がスムースで、すごくユニークなスタイルを持っているんだ。人々は彼の動きをみると、驚く。なぜなら良い動きをするからなんだ。僕は結成当初から一緒にいるけど、生粋の真のB-BOYだと思っている。それとクルーにパッションを与えてくれる、みなの兄貴のような存在なんだ。

CHECHO

ルカ:チェチョはチリ出身。とっても強い。すべての動きを腕だけで行うから、パワーのある動きが魅力。彼は性格が面白くて、なんといっても笑顔がいい。バッドなモードが流れているときは、みなを笑わせて空気を変えてくれるし、外で喧嘩になったときは、みなを守る役もしてくれる心強い存在なんだ。

SAMUKA

ルカ:サムカはブラジル出身。癌で片足を14歳のときに失ってしまったんだけど、その前はダンスをしてなく、失ってからイル・アビリティーズのビデオを観て踊ることを始めたんだ。一番メンバーの中で若いんだけど、彼にとって今はなんでも初の経験のとき。イル・アビリティーズでこの2年間で14カ国の国へ行って、ダンスのスキルを上げているよ。

PERNINHA

ルカ:ぺルニンハもブラジル出身。メンバーの中で一番新しいんだけど、彼のむきだしな感じのスタイルは、速くて、音楽的で、素晴らしい動きなんだ。基本的にアグレッシブだけど、チェチョと同じく、皆を守る役目を果たしてくれている。とても人懐こくて、人にハッピーを与えてくれるんだ。

その他に、韓国のKROPS(クロップス)が僕たちのDJとして、参加してくれている。

ー 生粋のB-BOYであるみなさんが、ツアーを通じて人々に感じて欲しいと願うことは何ですか?

ルカ:人々が僕たちのパフォーマンスを観たときに、エネルギーを感じてくれたらいいなと思っている。例えば今回のように、兄弟のようにみなが世界中からひとつの場所に集まって、こうやって意気投合したときは、スペシャルなエナジーがイル・アビリティーズの周りに溢れていると思う。僕たちのスローガンは「No Excuses, No Limits(言い訳なし、限界なし)」なんだけど、僕たちに限界はないと思っている。

ー この2、3年で強く印象に残っているエピソードはありますか?

ルカ:結成10周年の年に、自分たちでイベントをオーガナイズして、モントリオールでイベントを行ったんだ。資金はゼロだったんだけど、「レ グラン バレエ カナディアン」で行うことができた。バレエ専用の劇場で、これまでヒップホップのイベントをやったこともなければ、ブレイクダンサーがステージに上がったことなど一度もなかったのにね。そのときに僕は、クルーがひとつのカンパニーになれるということを確信したんだ。

目標はイル・アビリティーズで東京パラリンピックの開会式に出ること。

ー アイデアたっぷりの動きに、観ていて熱くなりました。みなどのように情熱を保っているんですか?

ルカ:一番のモチベーションは、ブレイクダンス・バトルだよね。闘うこと。完璧を目指してやろうとは思っていないし、自分が良いなと感じる動きをすること、そして良い感じる音を瞬間瞬間で捉える。上を目指して、目標に到着したければハードな練習をするのは当たり前だ。常にベストを尽くしているし、どこにいてもパッションは止まない。

ー ところで、かつてルカさんは2010年のバンクーバーパラリピックの開会式に出演したことがあると聞きました。

ルカ:あのときは1人で開会式のメインアクトに出たんだよ。それもあり、僕たちの目標は、イル・アビリティーズで東京パラリンピックの開会式に出ることなんだけどね! 電話がかかってこないか、待っているんだけどね(笑)

ー イル・アビリティーズの今後の目標は何でしょうか?

ルカ:みんなで話していることが、これからも僕たちの活動を続けていくことと、それと各々が拠点を持つこと。特に南米はチェチョ、サムカ、ペルニンハにまとめてもらい、若い世代へ伝達をして行って欲しいんだ。それとこれからも世界中でパフォーマンスを行って、インパクトを与え続けられたら。

ー 最後に、日本の人々へメッセージを下さい。

ルカ:「No Excuses, No Limits(=言い訳なし、限界なし)」。適応力を持って、ポシティブなマインドで自分の道を切り開いていって欲しいよ。

INFORMATION

True Colors Festival – 超ダイバーシティ芸術祭 -

イベント概要:障害・性・世代・言語・国籍などのあらゆる多様性があふれ、皆が支え合う社会を目指すパフォーミングアーツの祭典です。2019年夏~2020年夏にかけた1年間、観て・学んで・参加できる、多彩なプロジェクトを展開します。次回イベントは10月22日(火・祝)代々木公園でのフェス。多様な人々による様々なリズム、様々なテンポを楽しめます。入場無料!

Youtubeチャンネル:www.youtube.com/channel/UCAgeZvDmWUxkLyOjNYjUByQ/featured
公式サイト: truecolors2020.jp
主催:日本財団