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FEATURE|アトモスのボス・本明秀文に聞く、スニーカービジネスの行方。

アトモスのボス・本明秀文に聞く、スニーカービジネスの行方。

Sneaker Journal vol.4

アトモスのボス・本明秀文に聞く、スニーカービジネスの行方。

スニーカーにまつわるさまざまな事象を取り上げ、フイナム的な視点で掘り下げていく連載企画『Sneaker Journal』。今回のテーマは「スニーカービジネスの行方」。近年、スニーカーシーンがかつてないほどの盛り上がりを見せていると言われていますが、その状況は売り手側にとってビジネス的にどうなのか? 儲かって仕方がない? それとも、実はそうでもなかったりする? 「アトモス(atmos)」「スポーツ ラボ バイ アトモス(Sports Lab by atmos)」「チャプター(CHAPTER)」をはじめとする数々の人気店を手掛け、1990年代のスニーカーブームの頃からこの業界を見続けているテクストトレーディングカンパニー代表・本明秀文さんに、昨今のスニーカービジネスを取り巻く環境、そして今後の見通しを聞いてみました。

  • Photo_Shin Hamada
  • Interview & Text_Issey Enomoto
  • Edit_Hiroshi Yamamoto
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本明秀文 / テクストトレーディングカンパニー 代表

1969年生まれ。アメリカの大学を卒業後、商社勤務を経て、1996年に原宿のジャンクヤードにスニーカーショップ「チャプター」をオープン。1997年、テクストトレーディングカンパニー設立。2000年、「アトモス」をオープン。2013年、「スポーツ ラボ バイ アトモス」をオープン。

スポーツ機運の高まりを背景に、拡大路線はこれからも続ける。

ー本明さんが手掛けているスニーカーショップは2016年12月現在、全部で何店舗あるんですか?

本明:26店舗です。内訳は「スポーツ ラボ バイ アトモス」と「アトモス」がそれぞれ9店舗、「チャプター」と「キネティクス」がそれぞれ2店舗、「トウキョウ 23」が1店舗、レディース業態の「エフ アトモス」と「チャムチャム」がそれぞれ1店舗。あと海外では「アトモス」のニューヨーク店があります。

ー特に「スポーツ ラボ バイ アトモス」は2013年のオープン以来、わずか3年間で9店舗というハイペースで店舗数を増やしていますよね。その背景にはやはり最近のスニーカーブームの影響があるんでしょうか?

本明:世の中の流れとして、オリンピックに向けてスポーツの機運が高まっていたり、みんなの生活全体がコンフォタブルな方向に向かっていたりしますよね。その影響で、これまでスニーカーを履いていなかった人たちもスニーカーに目を向けるようになってきました。そんななか、今までパンプスやヒールを履いていた女性がスニーカーを買おうと思っても、どこで買ったらいいのかわからないという状況も生まれた。僕らは路面店だけでなく、百貨店にも出店しているから、そういった層も取り込むことができています。

ーかつては「アトモス」というとコアなスニーカーマニア向けのショップというイメージがありましたが、客層は様変わりしつつある、ということでしょうか。そのあたりは意図的に裾野を広げようとしているんですか?

本明:いや、別に意図的に裾野を広げようとしているわけではなくて、僕らのメインターゲットはあくまでもピラミッドのトップの15%くらいのスニーカー好きの層です。そこはこれからも変わりません。

ー「アトモス」をはじめ、本明さんが手掛けているショップは日本全国の各都市にありますが、各店舗の商品構成は、その土地にあわせたやり方をしているんですか?

本明:北は札幌から南は博多までショップを展開していますが、札幌と博多では売れるものが全然違います。極端な話、札幌では冬になると、〈ザ・ノース・フェイス〉の「ヌプシブーティー」が週に100足近く売れたりするし、1着10万円するような水沢ダウンが毎日のように売れたりします。

ー今後もさらにショップを増やしていく予定ですか?

本明:まだ交渉中ですが、来年には金沢と京都にもお店を出そうと考えています。今後も拡大路線を続けようとは思っていますが、正直なところ、既存の店舗が全部うまくいっているかというと、決してそういうわけではなくて。そこはどうにかしないといけないと思っています。

トレンドとは違った目線で商品を提案するのは、僕らの使命。

ースニーカーショップを経営する本明さんの目から見て、昨今のスニーカーシーンはどのように映っていますか?

本明:たしかにここ数年はスニーカーシーンが盛り上がっていましたが、いつまでもこの状況が続くわけはなく、流れとしては終焉に向かいつつあるんじゃないかな。ちょっと前まであったような爆買いも、最近はなくなりつつありますし。それに最近は、普通の女の子でも5足くらいは当たり前のようにスニーカーを持ってるでしょ。今やそれくらいみんなにスニーカーが行き渡ってしまっている。それ以上持っていても仕方がない、というふうにならざるを得ませんよね。

そこで僕らとしては、これまでのトレンドとはちょっと違った目線のものを提案していきたいと思っています。例えば、今まではランニングシューズが主流だったけど、これからは「エアフォース1」とか「ダンク」をはじめとするバッシュ系を押していきたいなと。僕たちはメーカーの直営店とは違って規制やしがらみがなく、自由に商売することができるので、うまくその次のムーブメントになる商品を提案していきたいし、それが僕らの使命だとも思っています。

「ここでしか買えないもの」しか売れない時代へ。

ーここ数年、海外からの旅行客が激増しましたが、その影響は大きいですか?

本明:ビジネスとしてはとても大きいです。すこし前までは中国の人が多かったけど、最近はフィリピンやタイの人がめちゃくちゃ多い。あと、ヨーロッパの人もまた増えつつあります。

海外からの旅行客のなかには、日本に来たらスニーカーを買おうというモードになっている人は少なくありません。ただ、今は世界中どこへ行っても、売っているものがさほど変わらないというのが現実としてあります。

結局のところ、僕らのビジネスはだいたい70%が〈ナイキ〉です。〈ナイキ〉は〈NSW〉や〈ジョーダン〉も含めて、グローバルでだいたい同じ商品を展開しています。ニューヨークでも、香港でも、ロンドンでも、東京でも、お店に並んでいるスニーカーのラインナップに大差はない。個人的には、その状況は面白くないし、由々しきことだとも思っています。僕らはあくまでも小売なので難しいところではありますが、その状況を今後どうやって打開していこうかと考えているところです。

ちなみに、アパレルではその試みをすでに始めています。たとえばこの〈コロンビア〉のジャケット。

コロンビア×アトモス ラボのジャケット ¥25,500+TAX

本明:これは「アトモス」のオリジナルブランド〈アトモス ラボ〉と〈コロンビア〉のコラボレーションモデルなのですが、海外のお客さんが「ここでしか買えないから」といって買ってくれるんです。消費って突き詰めていくと、ここにあるかないか、みたいなところに収斂していくのかもしれません。

ー〈アトモス ラボ〉をはじめ、最近の「アトモス」はスニーカーだけでなくアパレルにも力を入れていますよね。

本明:はい。特に海外のお客さんはTシャツとか洋服を欲しがる人が多いんですよ。ただ、スニーカーショップがアパレルをやると、ロゴをドーンと出したスーベニア的なものになりがち。僕らはそうならないよう、もうちょっとファッションに寄せたものをやっていきたいと思ってます。先ほどの〈コロンビア〉のジャケットなんかも、ロゴはあくまでもさりげなく入れています。わかりやすさとファッション性って紙一重なところがありますが、僕らとしてはそのあいだのうまいところを突いていきたいと思っています。

スニーカーショップ経営者の日々のライフスタイルとは?

ー個人的に最近気に入っているスニーカーは?

本明:〈ナイキ〉の「フライニットレーサー」。最近はこればかりです。

本明:これ、軽くて履き心地が良いというのもありますが、フライニットの耐久性って実際のところどうなんだろう? とふと思って、自分が実験台となって試しているところでもあって。数ヶ月間ほぼ毎日履いているのですが、思いのほか丈夫で、まったく壊れないです。

ーちなみに、本明さんのライフスタイルってどんな感じなんですか? 一日の過ごし方は?

本明:毎朝4時に起きて、1時間ほど走って、シャワーを浴びて洗濯して、新聞各紙に目を通して、メールチェックして、1時間ほど本を読んでから会社に行きます。仕事中はだいたい打ち合わせばかりしているかな。帰宅したら夕刊を読んで、本を1時間ほど読んでから寝ます。

ーインプットの時間をとても大切にしているんですね。

本明:読書が好きというか、本を読むのが当たり前の習慣になっています。靴屋としては相当読んでいるほうだと思います。ただ、経営において本を読むのが役立っているかというと、そんなことはないかな。役には立たないけど、人間としての常識のレベルは高めておかないと。例えば、誰かと話していて、ブロックチェーンの話題になったとき、ブロックチェーンって何? というレベルでは話にならないでしょ。そういう意味で、ある程度のベーシックな知識がないと、生きていて面白くないですから。

あらゆるビジネスで「健康」が重要なキーワードに。

ー最後に、今後のヴィジョンをお聞かせください。スニーカービジネスはこれからどういった方向に向かっていくと思いますか?

本明:スニーカーに限らず、「健康」がますます重要なキーワードになっていくと思います。たとえば、僕は最近、〈ナイキ〉のタイツを愛用しているんだけど、これを穿いていると冬でも暖かいし、サポート機能もあるから身体がブレない。今後は多くの人がそういうところにお金を使う時代になるんじゃないかな。

ぶっちゃけ、もうほとんどの人がファッションに興味がなくなってるでしょ? かっこいい、かっこ悪いの前に、まずは健康じゃないとどうしようもないからね。

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