自分の意志で動いているつもりが、実は意図通りに動かされている。
ー 印象的だったのが、空間を音と光が支配していて、人が無意識に動かされていく様子です。
森山:それすっごく気になってたんですよ。僕は見られなかったので。
佐久間:未來さんが登場する直前、下の階で何かが落ちるドスンという音がして、それがきっかけでみんな静かになったんですよね。
ー 観客のひとりとして、灯りに集まる蝶のように、人も無意識に動いてしまうんだなと感じました。
森山:そんなもんなんですよね。照明や音で人はコントロールできちゃうんです。そういうことも話し合いました。矢印とか、順路とかって案内を設置してもおもしろくない。人が自分の意志で動いているつもりが、実は意図通りに動かされている。それは、まさしくテーマに近いものです。
ー また、森山さんのパフォーマンスからはちょっとこの世のものとは思えないような恐ろしさを感じました。
森山:顔が白かったからかな?
一同:笑
佐久間:そういう感覚は僕もありましたね。あの世を感じるというか。
岩本:それ自体が、決して交わらないものが交わるような感覚ですよね。
ー 今後、3人で何か取り組む予定はありますか?
森山:今回は骨伝導の技術ありきで企画した試みでした。科学技術はどんどんアップデートされていくし、その技術が”生”のうちにやるのがいいなと思っていたんです。次は、もう少しじっくり腰を据えてやれるタイミングでやりたいですね。
佐久間:骨伝導の技術自体が、まだ展示の一部分でした。物体を振動させて音を発生させるという技術の実用化が進んでまだ間も無く、個人的にはその技術のコントロールや応用の精度をあげて、今回のコンセプトをより尖らせたものを形作っていきたいと思っています。
PROFILE
MIRAI MORIYAMA
1984年、兵庫県生まれ。演劇、映像、パフォーミングアーツといったカテゴライズに縛られない表現者として活躍。2013年には文化庁文化交流使としてイスラエルに1年間滞在、インバル・ピント&アヴシャ ロム・ポラック ダンスカンパニーを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。待機作として、Bunkamura シアターコクーンにて「オイディプス」(演出:マシュー・ダンスター)、横浜赤レンガ倉庫1号館にて、辻本知彦とのユニット「きゅうかくうしお」による新作公演「素晴らしい偶然をちらして」などがある。第40回日本アカデミー賞助演男優賞受賞。第10回日本ダンスフォーラム賞2015受賞。
miraimoriyama.com
PROFILE
a.k.a BATIC
1992年生まれ。サウンドデザイナーとして、インスタレーション、広告分野、ショー、空間演出などさまざまな分野で活動。「身体で聞く記憶」をコンセプトに掲げ、ベースとなる認知科学のアプローチに基づいた作曲や音響空間のデザインを行っている。近年は特に、振動や骨伝導をモチーフに作品制作を行う。直近のワークでは、Amazon Fashion Week Tokyo 2018でのLAUTASHIのインスタレーション音響演出、2019 Media Ambition Tokyoでのkushino masaya、スプツニ子とのコラボした指向性スピーカーを使った作品で有名。
www.instagram.com/batic909
kaito-sakuma.myportfolio.com
PROFILE
KOICHIRO IWAMOTO
1992 年、福岡県生まれ。写真家。2015 年から写真家・平間至のもとでインターンをしたのち、文化出版局写真部を経て2018年に独立。以後、『Them magazine』や『i-D Japan』などのファッションメディア、BEAMS HARAJYUKUのキャンペーンや新鋭ファッションブランドsugarhillなど数々のビジュアルを手掛ける一方、独自の感性を活かした写真作品を発表している。近年の展示は、「Like a virgin」(会場:mahika mano、2016)、「ULTRA C」(会場:ambivalence、2018) 、「 isolation 」 (音楽:KAITO SAKUMA a.k.a BATIC、会場:CLASS、2019)。
www.instagram.com/iwamoto_koichiro