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FEATURE
西海岸の風が、ジ エルダー ステイツマンにもたらしたもの。
The Statement From LA

西海岸の風が、ジ エルダー ステイツマンに
もたらしたもの。

日々新たな注目株が現れてひしめき、誰もが自分たちの個性を主張するために四苦八苦しているファッションの世界において、〈ジ エルダー ステイツマン(The Elder Statesman)〉の存在はかなり異質だ。決してコマーシャルに長けたブランドではないのに、極上のカシミヤと、その高級素材の概念を覆す独創的なアイデアや色使いはただ店頭にあるだけで、他を圧倒する存在感を放つ。カリフォルニアの地でマイペースにその舵を取り続けているデザイナー、グレッグ・チェイト。その目は何を見据えているのか。

  • Photo_Kota Yagi
  • Text_Rui Konno
  • Edit_Ryo Muramatsu

LAは、夢を持って挑戦できる
場所。

ー お店に来るのはどんな人たちなんですか?

グレッグ:ティーンネイジャーから70、80歳の人まで、いろんなタイプの人が来てくれてるよ。アーティストとか、最近だとファッションデザイナーの人とかも多くなったかな。お店の後ろにバックヤードがあって、ベンチが置いてあって焚き火ができるんだけど、夕方ぐらいになってくるとそこに人が集まってくるんだ。

お店のすぐ横がデザインパシフィックセンターっていう、ギャラリースペースもあるアートやデザインに特化したすごく大きなビルなんだけど、そのモダンな建物と隣り合わせっていう不思議な立地で。お店の庭からはそれが見えて、そこで働いてる人たちが夕方になるとラップトップを持って焚き火の前に集まってビールを飲みながらしゃべってる。そうやって近所のみんなが集まる場所になってるのもいいなと思うし、集まって来る人たちも面白い人たちばかり。ひとつのムーブメントみたいなものをつくれてるのかな。

ショールカラーでボタンはなしという、エフォートレスなつくりのスモーキングジャケットは〈ジ エルダー ステイツマン〉を象徴する定番のひとつ。「毎シーズン色や柄を変えながらつくり続けている大切なピース。どんな人でも着こなせるアイテムだよ」 ¥230,000+TAX(サザビーリーグ)

ー すごくLAっぽいコミュニティですね。

グレッグ:ロンドンもそういうところがあると思うけど、ロサンゼルスはまだそこまで発展しきれてないから、機会を求めてすごく人が集まって来てる。ロンドンにはない特徴として自然が素晴らしいっていうのも大きいよね。人が集まりやすいんだと思う。LAは夢を持って挑戦できる場所。それは昔からそう。マリリン・モンローだってここで挑戦してみようって思わなかったら多分マリリン・モンローにはなってなかっただろうしね。

ファッションの勉強を一切していないのに、“こういう風にやってみたらこういうものができました” っていうのが許される環境だし、みんなそれを楽しんでくれる。思えばオルセンシスターズがやってる〈ザ・ロウ〉とか、〈クロムハーツ〉に〈オリバーピープルズ〉とか、みんなLA発信で、彼らも別に何かをずっと学んできてからやりはじめた人たちじゃないはずだけど、世界的に成功してる。やってみようと思わせてくれる場所なんだと思うよ。

グレッグのスマホには、これまでに試みたアプローチの一部が記録されている。これはカシミヤニットにタイダイ染めで柄を載せたときのもの。

ー 可能性やアイデアが尽きるのは怖くないですか?

グレッグ:多分、生きてる間はそういう怖いだとか心配だとかっていう気持ちにはならないと思うよ。何故かというと、いまはたまたまこういう仕事をやってるけどぼくはいろんなことに興味があるし、クリエイトするっていうことにただ興味を持ってるから。ある日、全然違うことになってるかも知れないけど、それをずっとやり続けるんだろうなっていう確信は持ってるから、心配も怖さも感じてないなぁ。

ー 最後に、ブランドを10年続けてきて、一番幸せだった瞬間として真っ先に思い浮かぶのはどんな光景ですか?

グレッグ:〈ジ エルダー ステイツマン〉をはじめたときから、毎日毎日が本当に幸せだなって感じていて。さっき話したみたいにものづくりの中で起きる事故だってそうだし、ハンドペイントの1点1点違う色出しだってそう。朝出勤してきて車を停めると、パーキングに前日染めたものが干してあって、こんな綺麗なものがあり得るんだ…って感動が毎日込み上げてくるんだ。本当に恵まれた環境だなと思ってるよ。

INFORMATION

サザビーリーグ

電話:03-5412-1937
elder-statesman.com

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