
ー デビュー当初は現役大学生バンドという箔もついていたけれど、数多くの海外バンドとの共演だったりさまざまな活動を経て、いまLuby Sparksは日本の音楽シーンのどんな立ち位置にいると思いますか?
Natsuki:バンドをはじめたときは1stアルバムではどういう音楽をやって、どんなヴィジュアルをつくってといった方向性みたいなものは明確にあったけれど、その後バンドや音をどうするかは分からない部分が多かったんです。正直、1stアルバムを発売したら解散してもよかった。でも、聴いてくれたひとたちのリアクションをもらうようになって気が付いたのは、“この時代でもこういう音が好きな人はまだまだ沢山いるんだな” ってことで。
Sunao:うん、そうだね。
Natsuki:正直いまのバンドシーンの中で自分たちがどういうポジションにいるのかは未だに分からないけど、自分たちがやりたい音楽を貫いていくことを意識しています。ただ、その考えだけだと “わかるひとだけわかる音楽” みたいな独りよがりになってしまうしバンドが発展しないから、これから出会うぼくらを知らなかった新しいひとたちがどう反応してくれるかによって、立ち位置が明確になってくるのかもしれないですね。
ー 新しいシーンをつくろうっていう意識はないんですか?
Natsuki:いまのところはまだないですね。
Sunao:日本の音楽シーンの中での立ち位置はまだわからなくて、シーンを新しくつくることがいいとは限らないですよね。ただ、いまはまだ共鳴するバンドをぼくらが知らないからそういう感覚がないだけで、数年後に一緒にシーンをつくれるバンドが出てくるかもしれないな、とは思ってます。
Tamio:シーンの話でいえば、アジアの音楽シーンと結びつきたいです。台湾とかシンガポールとか韓国とかのアジア諸国はぼくらの音楽に近いバンドシーンが盛り上がってるので。
Natsuki:例えば、台湾とかは活動をしていく中で、国から援助金が出たりするんですよね。先日共演したI Mean Usもそんなことをいってました。

ー 自分たちを取り巻くシーンの話を超えて、世界の音楽シーンはどうみてますか?
Natsuki:今年サマソニに行ったんですけど、The 1975のステージを観たときに「このひとたちがいますべてのバンドの頂点に立っているんだな」って感じたんですよ。
ー たしかにThe 1975のパフォーマンスは、サマソニ直後のレディング(イギリスのリーズとレディングで行われる音楽フェスティバル)を含めてかなり話題になっていました。
Natsuki:彼らおなじみの演出ですけど、スクリーンに 「ROCK N ROLL IS DEAD / GOD BLESS / The 1975 」って映し出されたときにハッとしたんですよね。最新アルバムを紐解くと、Radioheadみたいな曲があれば、Joy Divitionの『Disorder』をメジャーコードにしたみたいな曲もあるし、リード曲の『Sincerity Is Scary』はノリがR&Bっぽかったりとか。世界のキーワードになっている “多様性” を音楽でまさに表現しているんですよ、彼らは。
ー 衝動的な曲もかなりあって、若者の代弁者としてもいまは認識されています。
Natsuki:ラップやR&B至上主義だったこの数年に、ようやくバンドとしてThe 1975がチャートにガンと入ってきたのをみると、ついにシーンが動くなって。
ー それでいえば、ファッションと音楽はリンクするって話がありますよね。20年春夏コレクションの服をみても、ヒップホップ文化からくるストリートの波はおさまってきたような気がしています。シンプルな構成の服が増えて、ラグジュアリーなものが増えたり。
Natsuki:そうなんですよ。ぼくらもファッションも大好きなので、そういう空気感みたいなものをかなり感じています。
ー では、実際The 1975という存在は、なにをシーンにもたらすんでしょうか?
Natsuki:彼らの台頭は、メタルとかパンクとかガレージとかの要素を自己流に掛け合わせたNirvanaの登場に少し似ていると感じてます。グランジのムーブメントが起こる前は、“ロックは死んだ” とされていたから、それはいまの音楽シーンにとても近いですよね。でも、この話でおもしろいのが、じゃあThe 1975は果たしてロックバンドなのかっていう話なんですよ。
ー そこはかなりポイントだと思います。
Natsuki:ロックをまったく聴いてこなかったひとでも、The 1975はなんかいいよねっていう共通認識があって、それはロックだけの音楽性にしてないからなんです。でも歌っていることは、社会への反発であったり、パフォーマンスもかなり衝動的で。つまり、多様性を含んだ新しい “ロックの在り方” みたいなものが、2019年は彼らによって生まれたのかもしれないですよね。

ー さて、10月15日には、TAWINGSとの企画ライブ「Dreamtopia」をゲストにjan and naomiを呼んで開催します。意気込みを教えてください。
Erika:前回の自主企画は、近い音を鳴らす韓国のSay Sue Meとやったけれど、今回は音楽性は違くても、同じ目標意識があるTAWINGSとやります。自主企画っていちばんバンドの素の部分が出ると思うし、観に来てくれるひとへの距離感も近いと思う。最新のLuby Sparksがわかるかなと思うので、より多くのひとに来てもらいたいなと思ってます!
Tamio:これまでの大きなライブって、海外のバンドのオープニングアクトを務める機会が主で。だから日本のバンドだけでステージをつくるって意外となかったんです。
Sunao:たしかにそうかも。
Tamio:このライブが新しいぼくらのはじまりになればいいなと思っています。
Natsuki:TAWINGSとは私生活で仲が良いけれど、これまで意外にライブ共演などではあまり交わって来なかったんですよね。でもバンドをはじめた時期が近いことや、海外志向であったり、やりたい音楽を変えずにやってるところをみていて、ぼく的にはライバルだとも思ってます。だから、いちばんいい形で共演できるかなと。
ゲストのjan and naomiは、そんなぼくらのやりたいスタンスを貫いているかっこいい大先輩。最高のパフォーマンスを3組とも見せるので、ぜひきて欲しいです。

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