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記念すべき1回目は、ヘアメイクとして広告やファッション誌で活躍する傍ら、代官山にあるバーバー「バーバーボーイズ(BARBER BOYS)」を営む樅山敦さん。ファッション業界では知らぬものがいないほどのビッグネームである樅山さんが、『ザ・サードエディション』で提案したのは、インディゴ染めのショップコート。そこには理容師としてのこだわりが詰め込まれていた。
バーバーの要素を取り入れた新しいヘアメイクのかたちを確立
- —樅山さんはヘア&メイクとしても長く活躍されていますが、バーバーを始めた理由は何だったのでしょうか?
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樅山:根本にあるのは、実家で母親が営んでいた床屋の記憶です。ただ、20代の頃は床屋になる未来を考えていなくて、1980年代半ばに上京した時は美容学校に通っていました。今思えば、母親とまるで同じ道を歩むことに少なからず反発があったんでしょうね。
ですが、上京して数ヶ月後に行った〈タケオキクチ〉プロデュースの理髪店、「バーバー」に衝撃を受けて。そのビルの地下がバーの「ボヘミア」、1・2階が洋服屋とテーラー、3階がその理髪店という構成になっていたんですけど、内装も、来ているお客の雰囲気も完璧。不思議なことに、「バーバー」に行ったら、母親がしていた仕事が腑に落ちたんです。店の感じは全く違うんですけどね。次第に「反発」が「確信のある夢」に変化していきました。
- —最近でこそ洋服屋とバーバー、飲食店の組み合わせは珍しくありませんが、30年も前にそんなコンセプトのビルがあったんですね。驚きです。
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樅山:そうですね。店内にはジャズが流れていて、店員はスーツでパリッとしている。美意識が一本通っていて、本当にかっこよかった。こんな店を持つにはどうしたらいいんだろうと思っていた反面、美容学校卒業後は順等に(笑)、美容室で働き始めて。そのうち、その店のお客様のつてで、少しずつヘア&メイクの仕事をするようになりました。
- — そうは言ってもいきなりヘア&メイクになって、仕事が来るものじゃないですよね?
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樅山:その頃、昼は美容室で働き、夜はDJをしていたのですが、DJをしていて知り合ったアートディレクターやスタイリストから、ミュージシャンのヘア&メイクの仕事を頂けたことが大きかったですね。それからヘア&メイクを続けながらも、やっぱりどこかには実家の床屋の記憶と、「バーバー」への憧れがあった。それで一念発起してヘア&メイクをしながら理容学校で資格をとり、2008年に「バーバー410」の屋号で、完全アポイントメント制の理髪店を始めました。「410」が軌道に乗り始めたので、2013年、代官山に現在の「バーバーボーイズ(BARBER BOYS)」を移転オープンしました。
BIG YANK × Momiyama Atsushi(BARBER BOYS) WORK COAT ¥33,000+TAX
- —前置きが非常に長くなりましたが、今回の〈ビッグヤンク〉で作られたショップコートは、樅山さんがバーバーで働く時に着ることを前提としたものなんですよね?
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樅山:今回は、ワークコートを日常でも着て欲しいというコンセプト。ディテールやデザインは程よくワークウェアテイストで襟まわりのコバステッチを省くところも巻き縫いだけじゃ無い感じがファッションアイテムとしても着やすいと思います。生地はインディゴのシーチング。作業着として着込む程に退色して経年変化を味わえるのもこのコートの魅力です。願わくば、この服が同業の床屋、靴職人、料理人、仕立て屋など、手を動かして働く男に役立つ、新しい仕事着になってほしい。少し大きめのサイズ感で作っているので、スーツの上から羽織ることもできます。
袖にはスリットが入っているので腕まくりがしやすい。作業時や暑くなった時に重宝する。
両脇には袋がついていないスラントポケットを用意しており、パンツのポケットにそのままアクセスできる
- —そうなんですね。他に仕事着としてこだわった点はありますか?
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樅山:腕まくりしやすいことは必須です。ボタンをひとつ外すだけで袖口が広くなり、よく考えられたディテールだと感心しました。また、同業者にも着てもらいたいと思ったので、細かな毛が入り込みやすいフロントポケットは排除しました。そのかわり、パンツのポケットにアクセスしやすいよう、サイドに袋の付かないスラントポケットを配し、デイリーユースに便利な胸ポケットも残しています。
胸ポケットには同色ステッチで「BARBER」の名が記される。洗い込むことでボディが退色し、ステッチが浮きがってゆく。
- —よく考えられていますね。胸にある同色の刺繍もいいですね。
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樅山:この「BARBER」ロゴは、着込んでインディゴが落ちていくことによって、除々に浮き出てきます。着るほどに、服が自分になじんでくるような感覚になってもらえるのではないでしょうか。