防水ガスケット×ヒートシーリング
〈ドクターマーチン〉の名作「1460 8 ホールブーツ」にウォータープルーフモデルがラインナップされた。アッパーに撥水加工を施したレザー、ライニングには〈ドクターマーチン〉が独自に考案したドライウエアを採用。ドライウエアはPFC(フッ素系化学薬品、パーフルオルカーボン)フリーのポリウレタンで、防水透湿機能を有するメンブレンだ。
なかでも見逃せないのが、底まわり。底付けにグッドイヤーウェルトという複式縫いを採っている〈ドクターマーチン〉は、糸を伝って水が染み込む可能性が0とはいいきれない。これを防ぐべく完成させたのが、当モデル最大の見どころだ。
肝は防水ガスケット(固定用シール材)をヒートシリングによって熱融着させる構造にある。これにより、すべてのミシン目がパーフェクトにガードされた。水も漏らさぬ、とはまさにこのことであり、自ら革新的と謳いたくなるのももっともだ。
あらためて〈ドクターマーチン〉のこれまでを振り返ってわかることは、つくづく “革新” という賛辞が似合うことだ。
〈ドクターマーチン〉のアイコンであり、無数のフォロワーを生んだエアクッションソールは好例だろう。文字どおりラバーに空気を閉じ込めることに成功したそのソールはドイツ人のクラウス・マルテンス博士の手になるもの。マルテンスは幸か不幸か休暇中のスキーで足を骨折、自らを実験台にしてその画期的なソールをつくりあげた(〈ドクターマーチン〉は英「R.グリッグス」社がその技術を買い取って立ち上げたブランドだ。マーチンはマルテンスの英語読み)。
安全第一の作業現場からファッションへ──という広がりかたも〈ドクターマーチン〉は先鞭をつけた存在といっていい。スキンヘッズ、そしてThe Whoのピート・タウンゼントが履いたのをきっかけに〈ドクターマーチン〉はミュージックシーン、ファッションシーンになくてはならない存在になった。
当モデルは、そのような道のり歩んできた〈ドクターマーチン〉だから可能となったもの。60年の歴史に思いを馳せて足を滑り込ませれば、踏み出す一歩も大きくなるはずだ。
そしてここが肝心なところだけど、その路面がたとえ濡れていたとしても、ひるむことはない。