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FEATURE
ノンネイティブが目指す、社会に機能する洋服づくり。
Talking about the creation

ノンネイティブが目指す、社会に機能する洋服づくり。

常に新しいシルエットのプロダクトや、洋服と高機能素材の融合によって、孤高のファッションブランドとして君臨し続けている〈ノンネイティブ〉。最近ではクリエイションに欠かせなかった旅をやめて、コレクションの世界観を物語るシーズンテーマも掲げずに、デザイナーの藤井隆行は自分の内にある経験と感覚とひたすら向き合っている。そんなモチーフや言葉に依存しない今の〈ノンネイティブ〉から、藤井が憧れ続けてきた〈グイディ〉との別注ブーツが先日リリースされた。念願成就と相成ったプロダクトと藤井の最新シューズコレクションから、現在進行形の〈ノンネイティブ〉と藤井隆行に迫る。

  • Photo_Masayuki Nakaya
  • Text_Shota Kato
  • Edit_Ryo Komuta

洋服の機能、それは社会と
つながるということ。

ー 藤井さんは2018SSシーズンまでは旅に出て、そこで得たインスピレーションを得てコレクションを発表していましたが、最近の〈ノンネイティブ〉のクリエイションは旅に出ずに洋服と向き合っています。加えて、明確なコレクションテーマを掲げないようにシフトしていますが、今の藤井さんのモードを教えてください。

藤井:コンセプトやテーマは外を覆うものであるから、言葉に頼らずに中身である洋服を突き詰めようと考えていて。今は自分の内なる気持ちや蓄積してきたものを出すことにこだわりたいんですよね。たとえば、Netflixで観る映画やドラマ、それこそ『ストレンジャー・シングス』がいいなと思う感覚って、僕が若い頃に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観てワクワクしていたことと似ていたりする。そういう純粋な気持ちをファッションに表現するためにテーマがあると、かえって邪魔になるんじゃないかなと思っていて。雑誌で言うと、全てのコンテンツがひとつのテーマで括られた特集に思えてくるというか。テーマを絞ることが着る人を限定するのかもしれないと思った部分があって、もっと幅広い人たちが手にとってくれるにはどうすればいいのかを考えた手段でもあるんですよね。でも、また違う形で戻るかもしれない。

ー 〈ノンネイティブ〉の立ち位置って、とにかく独特だと思うんです。マーケットのニーズに応えようとせずに、当時は珍しかったテーパードやアンクルカットのパンツ、リブ仕様のパンツを提案して、そういった新しいスタイルが支持を得ることで、まさにブランド名に由来する「どこにも属さない」を体現し続けているじゃないですか。

藤井:人が履いているから、流行っているから作るっていう要素が自分のものづくりを邪魔するんですよ。日本人は人に味見をさせたり「食べログ」を見て判断してから、食事のお店を選びがちでしょう。つまり、自分の感覚に自信がない人種だと思っていて。ファッションに関しては特にそう。売り切れているから欲しいという概念に耐え抜くと、僕のようになっていくのかな。僕も〈シュプリーム〉は好きだけど、自分がいいなと思うのは売り切れてないことがほとんどだから(笑)。

ー なるほど。自分にできることとできないことと向き合って、しっかり線引きしてきた、という印象があります。

藤井:例えば、僕には糸から洋服を作るという軸はないし、ロゴありきのデザインをするつもりもない。でも、今のファッション事情が自分が好きな方向性ではないとはいえ、それにどう対応していくのかはビジネスとしては重要。だから、売れなくていいでは意味がないし、否定するのは簡単だけど、それは違う。以前はもっと頑固で捻くれていたけど、今は自分が投げられるボールがわかってきたというか。信念をもってできることを繰り返していくと、研ぎ澄まされていくんだと思いますよ。自分の洋服の技術というよりも、精神的に成長しないと見える世界が小さくなってしまうから。

ー そういう意味でも、今回の〈グイディ〉に別注をかけたブーツは特殊ですし、消費者の心を動かすのか難易度が高い部分もあると思うんです。

藤井:価格帯も税込18万円以上で挑戦的ですからね。しかも増税後に発売っていう(笑)。このスニーカー全盛のご時世に発売するプロダクトではないのかもしれないけど、僕にとってはチャレンジでもなく普通のことなんですよ。〈ノンネイティブ〉は社会性のある洋服をつくっている、ということが伝わればいいなと。

ー 社会性のある洋服ってどういうことですか?

藤井:こだわっているのではなくて、気が利いているというのかな。〈グイディ〉のブーツに関して言えば、この色気や野性味があることで、履く人が本来持っている人間としての魅力が映えてほしい。たとえば、この人は絶対にロックしか聴かないんだろうなって最初から判断されるよりは、ニュートラルなところに落ち着いているほうが話しやすいでしょう。僕が思う社会性って、そういう感覚なんです。

ー 「何ものにも属さない」と掲げているブランドが社会性を意識しているのは面白いですね。

藤井:せっかくならば、「あの人、雰囲気いいよね」って言われたいじゃないですか。葉山に移住してから自分が地域のコミュニティに溶け込んでいくなかで、本当の機能性って何なんだろう?と考えるようになったんですよね。「GORE-TEX」など生地の機能性ばかり注目されますが、洋服が社会に機能して、その人の面白さが発揮されていく。それがファッションとしての本当の機能性なんじゃないかな。

INFORMATION

nonnative

nonnative.com

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