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FEATURE
Subsequenceが伝える、“折衷”時代の価値観。
What is the magazine telling you?

Subsequenceが伝える、“折衷”時代の価値観。

工芸や文化にまつわる国内外のトピックスを幅広く取り上げ、紹介してきた雑誌『Subsequence(サブシークエンス)』。2019年3月に発売された創刊号から約8ヶ月、待ちに待った第2号が完成した。前号同様、糸綴じ164ページの大判は、めくるごとに楽しい発見と素敵なヴィジュアルで、ワクワクさせてくれる。発行元の「キュビズム」が運営する〈ビズビム(visvim)〉のショップでは、11月24日(日)まで誌面を飛び出したポップアップ「Subsequence BAZAAR」も開催中。編集長の井出幸亮さんに、創刊から現在までを振り返ってもらった。

  • Photo_Masayuki Nakaya
  • Text_Asuka Ochi
  • Edit_Ryo Komuta

共感してくれるひとと紡ぎ、
届けていきたい。

ー 1冊3,800円という価格もそうですが、ありきたりに縛られない内容や販売方法などにも、これからの雑誌というものの可能性を感じます。

井出:制作・広報・販売まで、雑誌づくりに関わるあらゆる部分で、一から、こういう方法もあるのでは、というオルタナティブ・ウェイを模索しながらやっています。価格も、雑誌という括りで考えると高く感じられるかもしれませんが、広告収入のない媒体ということで、ビジネスとしては一般の書籍と同じですから、体裁や部数などの諸条件を鑑みると、実情としては現状でも「安過ぎる」くらいの設定なんです。その辺のギャップは難しいですね。世間的に「雑誌は安いものだ」という常識や思い込みみたいなものがありますから。でも、きちんと良いものを正直につくって、真っ当に成立する価格をつけて世に問いたい、という思いはあります。

ー 扱う店舗には小さな書店やショップも多く、その心意気を感じます。

井出:できる範囲でひっそりと、と思って限定で出した第1号から思わぬ反響があって驚きました。〈ビズビム〉の店頭やウェブなどで売るほかは、販売営業もほとんどしていなかったのに、各地の書店やショップから連絡をいただき、一般的な取次を通した委託販売でなく、買い取りをして売ってくださっているのはすごく嬉しいことです。

買い取りは委託と違い、店にとっては仕入れのリスクがあります。それでも、いい本だと思って買ってくれたお店は、がんばって売ってくれる。そういう緊張感を「あたりまえ」のものとして、僕たち雑誌を作る側も常に持っておこうと。そういうふうに共感して、大切に売ってくれるひとたちと一緒にやっていけたらいいなという気持ちも強くなりました。

ー 海外での反響はどうですか?

井出:現状、アメリカを中心に、カナダ、中国、イギリス、ドイツ、イタリア、スウェーデンで販売を始めています。実際の読者の反響はまだ分かりませんが、関わったスタッフは喜んでくれているのでよかったなぁと。全ページをバイリンガルで発信しているので、海外の方が英語できちんと読めるという点ではいいのかなと思いますね。

作る段階から海外のスタッフにも関わってもらって、広がりのある雑誌作りができたらというのは当初からありました。そうすれば、読んだ海外のひとからもまた情報をもらえるし、そこから徐々に広げられたらいいなぁと。2号の山内武志さんの記事や、創刊号の「折り紙ファニチャー」の笠松榮さんについても、おそらく英語で詳しく記事化された初の媒体としての資料的な価値があるのではないかと思います。

ー 今後の目標はありますか?

井出:『Subsequence』には、今のところ編集部という場所自体も存在していませんし、雑誌全体を見ているのもまだ僕1人なら、デザイナーも1人。アシスタントすらいません。すごく小さな、個人的なつながりのサークルで作っている状況です。マスに届くものではないかもしれないけれど、その分、自由に楽しく作っているものが、届くべきところに届いてくれたら嬉しい。

今後も、試行錯誤しながらより良い雑誌づくりのための体制を作ったり、環境を少しずつ整えたりしていければと思っています。そのために、まずは続けることが目標ですね。自分たちがやりたいことができる場所があったらいいと感じている人と一緒に、時間をかけてコツコツ、小さい船から少しずつできることを増やしていけたらいいなと思います。

INFORMATION

Subsequence

「Arts & Crafts for the Age of Eclectic」をタグラインに、オフィシャルウェブストア、〈visvim〉〈F.I.L. TOKYO 〉各店ほか、〈代官山 蔦屋書店〉〈青山ブックセンター 〉など、全国の書店やセレクトショップで発売中。誌面に掲載した作家の作品などを紹介するポップアップ「Subsequence BAZAAR」は、2019年11月24日まで表参道「GYRE」2階の〈ビズビム〉で開催。オリジナルグッズも。

subsequence.tv

Volume.02(2019-2nd)/260 × 372mm、164ページ、¥3,800(税別)

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