PROFILE

コロンビアスポーツウェアジャパン所属。駅伝の名門、佐久長聖高校出身。高校卒業後、早稲田大学に進学するも箱根駅伝は目指さず、走ることを楽しみたいという想いで陸上競技同好会に所属。東京・柴又100Kで5位入賞を果たし、現在のスポンサーであるコロンビアスポーツウェアにスカウトされトレイルランニングを始める。 デビュー戦となったレースでは大会新記録で優勝。続く2戦目は国内で最も権威ある大会、「日本山岳耐久レース」で6位入賞。その後数々の大会で優勝し、記録を更新している。 2016年はアメリカで開催された100㎞レースを大会新記録で優勝。スカイランニングと言われるより競技性が高く、標高の高い山で行われるジャンルのU-23世界選手権で優勝など、海外でも結果を残している。2019年は「スカイランナー・ワールドシリーズ」において見事優勝を獲得し、ワールドチャンピオンとなる。
日本のレースでは味わえない、かなりハードな大会。

「シーズンを通して順風満帆とはいえず、ライバル選手たちと僅差で最終戦を迎えた中で、最後に2位の選手とは12秒差でレースを制することができました。彼がいたからこそ展開がドラマチックになったと思うし、そのぶん喜びもひとしおでしたね」
2019年の「スカイランナー・ワールドシリーズ」。その最終戦のゴールシーンを振り返りながらそう語るのは、その世界的な大会において見事優勝を果たした上田瑠偉さんです。彼はフランス生まれのカーブランド〈ルノー〉のアンバサダーを務めるほか、さまざまなブランドからスポンサードを受けるプロのランナー。その世界では日本人としてはじめてワールドチャンピオンの座を獲得した人物です。

「スカイランナー・ワールドシリーズ」は世界11カ国でおこなわれる年間15個のレースと、その中で好成績を獲得した者だけが参加資格を得る最終戦の計16レースで争われます。通常の15のレースの中にはボーナスレースが4つ存在し、そこでは2倍のポイントが加算されます。順位はそのポイントで競われますが、加算できるのは15のうち4レースのみ(そのうちボーナスは2つまで)。最終戦では2.5倍のポイントが付与され、最終順位が決定します。」
選手たちは自由にエントリー可能ですが、走りすぎれば体力が削られ、逆に的を絞りすぎても好成績が出なかったときに上位に残ることが難しくなります。つまりは自己分析と戦略が必要な頭脳戦でもあるわけです。

「強豪選手が出場しなさそうな穴埋めのレースに出れば自分の勝率が上がっていいポイントを獲得できるし、逆にライバルが出場するレースに自分もエントリーして勝てば、彼らのポイントを減らすことができる。陣取り合戦みたいな趣きもありますね。ぼくは全部で7つのレースにエントリーしました。短いレースは20キロ程度で、長いものだと70キロを超えます。とはいえスカイランニングは標高の高低差も関係してくるんです」

今回上田さんが優勝をしたのは“スカイランニング”の大会。いわゆるトレイルランニングは国際陸上競技連盟が管轄する競技で、砂漠や海岸沿いもそのフィールドに含まれます。一方スカイランニングは国際山岳連盟が運営し、基本的に山を走ります。「標高の高い山や、斜度が20%とか30%の急勾配の場所もあります」と上田さん。
「今回のレースは足場のテクニカルさを求められたり、高低差が激しかったり、あとは傾斜がきついところもありました。そうしたコースは日本のレースでは味わえない、かなりハードな大会ですね」