PROFILE

1976年生まれ、東京都出身。セレクトショップにて販売や企画、店舗のディレクションを経験後、2009年に自身のブランド〈ヴァイナルアーカイブ(VAINL ARCHIVE)〉を立ち上げる。2018年に恵比寿西にギャラリー兼コンセプトショップのSALT AND PEPPERをオープン。同年SSシーズンには〈リーボック クラシック(Reebok CLASSIC)〉とコラボをスタート。これまでに「CLUB C」と「DAYTONA DMX」のデザインを手がけ、2020年に〈リーボック エイティワン(Reebok eightyone)〉を発表。
自分のブランドとはちがうマーケットでデザインがしたかった。

大北さんが〈リーボック エイティーワン〉のデザイナーに就任した経緯を教えてください。

もともと〈ヴァイナルアーカイブ〉で2度コラボレートをさせてもらって。もっと奥行きのあるデザインをしてみるのはどうですか? とお話をいただいたんです。自分自身、そうしたことをやったことがなかったので、やってみたいなということでスタートしました。



以前された2度のコラボレートは「どうしても外を知りたくてはじめた」と過去のインタビューで語られていました。

知りたいことを知りたい、わからないことをわかりたい。自分のブランドとは価格帯もちがうし、お客さんも異なりますよね。そういう好奇心が背中を押してくれたと言うか。〈ヴァイナルアーカイブ〉はマーケットの一部の層を狙って服をつくっているけど、〈リーボック〉クラスのグローバルブランドになると、マーケット全体と範囲が広いんです。

なるほど

自分のテンションをキープしながら、それをどう広げるかということに興味があって。自分のブランドをやっていると、どうしてもイメージや見え方が固まってきます。でも、それとは違うことをやってみたいと思ったんです。

話が来たとき、即決で決めたんですか?

いままで2回コラボレートして、その担当の方がすごく信頼できる人だったんです。なのでありがたくタッグを組ませて頂くことにしました。
「どうしよう、どうしよう」ってずっとピンチの状態が続いていた

いままではスニーカーでしたが、今回のコレクションはアパレルがメインというのが驚きでした。

めちゃくちゃ大変でしたね。自分の許容を超えるルールがたくさんあって。

ルールとは?

アイテムに対しての生産のアプローチの規模が全然ちがうんです。もちろんそれによって単価のコントロールというのもあるんですけど、普段はできるだけ生地の値段とか気にせずに好きなモノいいモノを追求するやりたいことを表現しています。でもそのやり方だと普段の〈リーボック〉のアイテムの価格帯には辿りつかない。つくる生地の種類に対して量のバランスや価格帯に対してのアプローチ「これがグローバルブランドか」と思い知らされましたね。

〈Reebok eightyone〉ウーブンジャケット ¥14,000+TAX

〈Reebok eightyone〉ウーブンパンツ ¥11,000+TAX

今回もグローバルでの展開なんですか?

アジアがメインですね。契約も「リーボック アジアパシフィック」なんです。主要なマーケットは日本、中国、韓国、香港、台湾、東南アジア諸国、オーストラリアがメインで、それ以外の地域、アメリカ等でも展開します。

やはりデザインするときは、そうしたマーケットを意識するんですか?

意識しましたね。上海に本部があるんですけど、そこで展開しているマーケットと、日本で売れているものが少しちがうのかなって。日本ももちろんアジアなんですけど、自分のブランドは海外での流通がほとんどないし、アジアっていうことをそんなに意識してなかったんです。だからこそ、意識する必要性を感じたというか。
向こうはお店のつくり方もちがって、上海はもっとモール文化なのかなと。個店というよりもマスマーケット。日本ってなんでも揃ってるって言われますけど、向こうもなんでもあるけど、その意味合いが変わってくるというか。普段自分たちがいる場所が特殊であるということを認識しました。


〈Reebok eightyone〉ロングスリーブTシャツ ¥6,690+TAX

そうしたマーケットの考えが今回のコレクションにも反映されていますか?

してますね。でも、つくっているときいろいろと悩みました。最初考えていたものから二転三転はしてます。おととしの暮れくらいにプロジェクトが始動して、1年を通してつくっていたんですけど、〈ヴァイナルアーカイブ〉は区切りが半年じゃないですか。だから自分のタイムリーな気分をぶつけられるんですけど、今回はそうじゃないので1年を通したバランスの着地に時間がかかりました。

はじめは正直いろいろ困惑する部分もありました。先ほど話したように生地がちがえば、工場の背景もちがうのでその工場さんの癖や仕上がりが読めなかった。それに合わせてデザインを考えると変に悩んでしまい広がりがまったく見えなくなって。服の色もリーボックらしいカラーパレットを意識しながら、あえてダークトーンにしたんですけど、1年を通したものづくりやコンセプトの一貫を考えると今度はそれに縛られて動きづらくなってしまったり。でも、〈リーボック〉のインラインとは差別化しないといけないし。「どうしよう、どうしよう」ってずっとピンチの状態が続いていました。

〈ヴァイナルアーカイブ〉っていうブランド名がついていれば、それに則したデザインができるんですけど、今回はそうじゃないので、いままでとはちがう脳の使い方をしました。

〈Reebok eightyone〉ジャージジャケット ¥12,000+TAX

〈Reebok eightyone〉ハーフジップジャージ ¥9,900+TAX

〈Reebok eightyone〉ジャージパンツ ¥9,900+TAX

コレクション名にある「エイティーワン」というのは日本の国際番号から取ったそうですね。

はじめは別のコンセプトネームで聞いていました。でも、なんかちがうなということになって、パッと浮かんだのが「エイティーワン」でした。意味合いとしては似てるところがあるんですけどね。東京っていろんなカルチャーがあって、それをみんなそれぞれ自分なりに掘ってエディットして表現しているじゃないですか。そういうリミックス感みたいなものを出したいなということで名前をつけたんです。トータルで東京っぽくなればいいかな、という感覚なんですけど。