PROFILE

1975年生まれ、大阪府出身。1999年に自身がディレクターを務める〈モーティブ(MOTIVE)〉をスタート。ブランドを休止後、2009年に拠点を大阪へ移し、ファッションブランドの集合体である〈ザ ユニオン〉を始動。現在も大阪で同ブランドの舵取りを行うとともに、様々なカルチャーを発信している。
今回はダブルネームではなく、ぼくはあくまで監修という立場。
ー 〈アニエスベー〉と牧田さんという組み合わせに、意外性を感じました。
牧田:そうですよね。ぼくもそう思いますもん(笑)。連絡が来たときにビックリしたんですけど、すぐにやりたいという話をしました。ものづくりの観点でめちゃくちゃ好きなブランドだったんです。
ー ものづくりの観点というのは?
牧田:アートとの接点もそうだし、普遍的なボーダーTやカーディガンプレッションをずっとつくり続けている。ずっとスタイルが変わらないですよね。そういうアティチュードというか精神性にすごく惹かれるんです。

ジーンズのヒップポケットにつくフラッシャーは、デニムの切れ端を再利用してつくられた紙を使用している。
ほんのり青味がかっているのはそのため。
ー なるほど。今回どうして牧田さんにお声がかかったのでしょうか?
牧田:実は、知人が〈アニエスベー〉と仕事をしていたということもあって、ぼくのことを紹介してくれたんです。〈アニエスベー〉はワークウェアも継続してつくり続けています。そうしたところにぼくとの接点を見出してくれたのかもしれません。本当のところはぼくにもわかりませんが…。それですぐに資料を送って、一度サンプルをつくることになったんです。
ー いきなりサンプルをつくられたんですね。
牧田:そうなんです。実際に自分の考えをモノに反映させてからのほうが伝わりやすいかと思って。ぼくは有名人でもないし、モノを見てみないと分からないだろうなという気持ちがありました。最初にジャケットも含めて8型つくって送ったところ、とても喜んでくれて。そこからはトントン拍子で進んでいきましたね。

ー ジーンズは普遍的なアイテムのひとつですが、牧田さんにとってこのアイテムはどんな役割を果たしていますか?
牧田:デニムは皮膚みたいなものだと思ってます。人間と同じように、穿き続ければくたびれたり劣化するし、ケアすれば喜んでいい色になってくれる。自分の後輩とかには、皮膚みたいなもんだから、きちんと向き合えばいい色落ちもするし、シルエットも自分の体に沿ったものになるという話をするんです。服のなかでは一番好きですね。一生つくり続けたいと思ってます。
でも、普遍的だからこそつくるのが難しいというのもある。それだけに、きちんと自分の考えを反映させないと、間違ったものができ上がってしまうと思うんです。
ー シンプルがゆえの難しさ。
牧田:そうですね。ルールや形が決まった上で、格好いいものをつくらなければならない。なおかつきちんとした主張もないとダメですし。

ー 今回監修するにあたって気をつけたのはどんなことですか?
牧田:今回のアイテムはダブルネームではなく、ぼくはあくまで監修という立場です。なので〈アニエスベー〉のお客さんのことを一生懸命考えました。ブランドの物語とフィロソフィーをしっかり学んで理解して、そのなかで自分の経験と知識を使って、お客さんたちを喜ばせたいなと。
ー 先ほど「ずっとスタイルが変わらない」というお話がありましたが、〈アニエスベー〉というブランドに対してどんなイメージを抱いていますか?
牧田:ぼくが高校生のときに、大阪のアメ村にお店があって。そこで働いている人たちも知ってたし、当時みんなボーダーTとかカーディガンプレッションを着てたんですよ。ストリートアートとも接点持ってたりして、他のフレンチブランドとはなんか違ってた。そこがぼくは好きでしたね。それと、みんな〈アニエスベー〉のこと知ってるでしょ。おじさんでも、おばさんでも、若い子でも。それがすごいなって思いますよね。

ー 認知が広いからこそのプレッシャーみたいなものは感じませんでしたか?
牧田:もちろん難しさは感じましたよ。自分のブランドだとターゲットが絞られますが、今回はそうじゃない。だからこそ自分のエゴを捨てなければいけませんでした。広くお客さんのことを考えると、自ずとどんどんシンプルになっていきましたね。
ー でも、仕上がりを見るとやっぱり “アニエスベーらしさ” がありますね。
牧田:そうそう、やっぱり〈アニエスベー〉やなぁってぼくも思いました。それが表現したかった最大のことなので、そう感じてもらえるのは嬉しいですね。