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牧田耕平が監修したagnès b. JEANSのすべて。

牧田耕平が監修したagnès b. JEANSのすべて。

1975年の立ち上げからフレンチカジュアルを追求し続ける〈アニエスベー(agnès b.)〉。守るべきものは頑なに守り、一方では柔軟に新しいエッセンスを取り入れ、両者を上手に共存させながら独自のアイデンティティを確立してきました。そんなブランドの姿勢を表すアイテムとして満を持して発表したのが「agnès b. JEANS」です。監修したのは、大阪を拠点にものづくりをおこなう〈ザ ユニオン(THE UNION)〉の牧田耕平さん。兼ねてからワークウェアをつくり続けてきた〈アニエスベー〉がどのような経緯で組んだのか、発売に合わせて上京した牧田さんに製作の裏話を聞きました。

  • Photo_Shota Kikuchi
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Muramatsu

シンプルだけど、穿いてみるとめっちゃいい。

ー 実際の作業はどのように進んでいったんですか?

〈アニエスベー〉ジーンズ レギュラー ¥28,000+TAX

〈アニエスベー〉ジーンズ スリム ¥28,000+TAX

牧田:グレーのステッチやシルエットなど、〈アニエスベー〉からの要望がありつつ、生地はこちらでいくつか提案して決めてもらいました。基本的にはブランドのやりたいことを主軸にして、それを格好よく表現するためにどうしたらいいか? というのを考えてやり取りしました。お互い譲れない部分があるときは、何度も同じことを話し合って理解を深めていったんです。

ー 今回のアイテムのひとつの大きなポイントとして、セルビッチデニムを使用している、というのが挙げられると思います。これは牧田さんの提案なんですか?

牧田:そうです。ストレッチ素材も含めていくつか提案したなかで、「セルビッチでいきたい」という返答をいただいて。個人的にもいままたセルビッチを穿きたいという気分になっていたので、「アニエスベー、アツいなぁ」って思いましたね(笑)。

ー これは岡山・児島で織られている生地ですよね。ここでしか織ることができないものなんですか?

牧田:正確に言うと、生地を織るための力織機がここにしかないんです。オーダーの数が想像を超えてあったということも後押しして、今回のためにオリジナルの生地をつくって、それを製品にしてますね。

ー どうしてセルビッチをプッシュしたんですか?

牧田:打ち込みがいいんですよ、セルビッチは。ほとんどの人は “耳” に注目すると思うんですけど、注目してほしいのは生地そのものなんです。打ち込みが甘い生地だとデニムでもフニャっとしてるんですけど、セルビッチは組成がしっかりしてます。でもそれがずっと続くわけではなく、穿いていけば柔らかくなる。穿きこむことによってどんどんよくなっていくのがセルビッチのよさで、最初はジャストサイズで穿いて、3日間くらい経つと自分の形になってきているのが分かると思います。

ー 先ほど仰っていた “皮膚” のように。

牧田:そうですね。打ち込みがよくて、編みがグッと詰まっているからこそできることなんです。組成がしっかりしているからこそ、時間をかけてじっくり伸びていく。すると、そこに空気が含まれていってじわじわと生地が柔らかくなってゆく。そうして育てる楽しさを分かってもらえると嬉しいですね。

ー このジーンズを “アニエスベーらしく” させている要因のひとつに、グレーのステッチというのがあると思うんですが。

牧田:そうかもしれません。これはリクエストでした。正直なことを話すとぼくは最初、「なんでグレーなんやろ?」と疑問があったんです。でも、それを格好よく見せるのが我々の仕事なんですよ。それでサンプルをつくってみたら「意外とええやん」ってなったんです(笑)。その後、〈アニエスべー〉から「ステッチをもっと目立たせてほしい」という要望がありました。

牧田:でも、ぼくらとしては糸を太くすると見た目のバランスが崩れるから、ステッチ幅を広げることでそれに対応したんです。すると「ステッチが太くなっていいですね」っていう返事がきて。太くしてないのにそう見せられたというのがおもしろい。自分の思っていることと相手の要望を、デザインの力で上手にマッチングできたかなと思います。

ー シルエットに関しても、要望があったんですよね?

牧田:レギュラーとスリムでこういうパターンでお願いします、というのが先に送られてきました。ただ、それをそのままつくってしまうと穿き心地の部分で納得いくものができなそうだったので、そこから修正を加えていきました。このやり取りがいちばん苦労した部分なんですが…。

ー 苦労したというのは?

牧田:何度も何度もやりとりが続いたからです。〈アニエスベー〉のやりたいことを尊重して進めつつも、「ここはこうしたほうがいい」というぼくのアイデアとの折り合いをつけるのに時間がかかりました。数ミリの差についても話し合ったりしてたので(笑)。でも、やっぱりそれによってぼく自身も知識がついたし、ジーンズもよくなったと思います。

  

ー それはフランスのデザインチームとのやり取りなんですか?

牧田:そうですね。日本にもパタンナーさんがいるので、その方を通してのやり取りでしたが。だから板挟みのパタンナーさんが一番大変だったでしょうね…。シルエットって大事だし、ぼくも理想を導き出すプロセスが好きなんですよ。ジーンズをつくるときも、足が長く見えるようにっていうのを常に考えているので。そういう細かなこだわりみたいなものは反映できたし、自分が培ってきたものを発揮できたと思いますね。

 

ー はじめから〈アニエスベー〉の考えを尊重しようという姿勢があったからこそ、根気強くやり取りができたのでしょうか?

牧田:そうだと思います。可能な限り自分の姿は消しながら、知識だけを盛り込むっていう。それをやって面白かったし勉強になりました。〈アニエスベー〉もずっとジーンズをつくりたかったみたいなんですけど、そのこだわりを表現するのに適したデザイナーがいなかったそうなんです。さっき話したように数ミリのこだわりを理解できる人ってあんまりいないと思うんですよ。そうした些細だけど大事なこだわりについて、きちんと話し合えたのがよかったんでしょうね。ぼく自身も楽しんでできましたし。

ー 実際にできあがりをご覧になられたときは、どんなことを思いましたか?

牧田:えらいシンプルなものができたな、と(笑)。でも穿いてみると、めっちゃいい。いまはもう育てる気満々ですね。1年後にどうなっているかが楽しみ。それでみんなに見せたいです。

INFORMATION

アニエスベー

電話:03-6229-5800
www.agnesb.co.jp

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