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フイナム政経塾VOL.1 ポストコロナのお金の話。
Interview with TAKURO MORINAGA

フイナム政経塾
VOL.1 ポストコロナのお金の話。

政治や経済のニュース。大事なことだと思いながらも、とっつきにくい専門用語ばかりで、いまいちわかったようなわからないような。フイナム政経塾は、そんな人たちに向けた学び舎です。いまさら聞けない基本のことも、すこし理解するのが難しい話も、わかりやすく解説していきます。第一回目は、経済アナリスト・森永卓郎さんに聞いた、ポストコロナのお金の話。

コロナでもらったお金は、将来の税金でそれ以上もっていかれる!?

2019年12月に1人目の感染者が見つかった新型コロナウイルス。そこから数ヶ月で感染者は300万人以上に拡大しました。世界中が大混乱に陥っていますが、ここ日本でもアベノマスクや医療崩壊の話など、連日コロナにまつわるニュースが報じられています。なかでも気になるのはお金の話。先日決まった「ひとりあたり10万円給付」の話には、喜んだひとも多いと思います。けれど、目先のことだけに一喜一憂していてはいけないみたい。どこからそのお金はやってきて、将来、誰がそのツケを払うのか、森永さんに聞いてみました。

結局のところ、コロナの補償はどのくらい?

コロナにまつわる補償に、約25兆円の予算が当てられると決定しました(2020年4月30日現在)。その内訳は全国民への10万円給付に13兆円、中小企業と個人事業主の給付に2兆3000億円、予備費に1兆5000億円。そして地方への臨時交付金として1兆円などです。最初に森永さんが語ってくれたのは、この臨時交付金の1兆円について。

「いろいろ気になる点はありますが、地方への臨時交付金が少な過ぎると思っています。これは休業要請に応じた事業者へ使われるものですが、足りるわけもないですよね。都道府県のなかでも東京都は最もお金持ちなので、国の予算とは別に8000億円以上のコロナ対策費用を注ぎ込めるからまだいいですが、お金のない地方自治体はそうもいきません。臨時交付金をもっと増やさないと、地方の企業はどんどん疲弊していきますよ。その影響はいろんなところに波及するだろうと思っています。ただ、そこに関して財務省がものすごく抵抗していますよね」

アメリカでは300兆円(追加予算含む)がコロナ関連の補償に注ぎ込まれています。ドイツは倹約大国として知られていますが予算無制限で補償する方針を決めました。そのなかで日本は25兆円で、休業補償は1兆円。いかに少ないかがわかると思います。ではなぜ、そんなにもお金を出し渋っているのか。

「『DNAだから仕方ない』と言っているひともいますけど、とにかくどんな場合であれ、税収は1円でも多く、支出は1円でも少なくという風に財務省は考えます。入省以来、そういうトレーニングをさせられてるんです。だから緊急事態であっても、絶対に、必要最低限以上の金額はださない。緊縮財政を常に優先する生き物なんです。わたしは財務省のビョーキだと思っています。要するにケチ過ぎるんです」

緊縮財政というのは、政府のお金を使わないようにする動きのことです。消費税の税率をあげたり、年金を受け取れる年を65歳から70歳に引き延ばしたりなんかもそのひとつ。

補償するためのお金はどこからやってくる?

お金をもっと出せばいいのに、と誰もが思いますが、ずばり言うと、そんなお金は日本にありません。税金でまかなえるもはずもない。なので国債を増発するんです。国債とは国の借金のこと。

日本の国債はいま1300兆円ほどです。さらに、年間50兆円ずつ借金を増やし続けています。それに加えてコロナの補償です。ちょっと不安になりませんか? 借金があり過ぎて破綻するんじゃないかって。ですが「国債がどれだけあっても、日本は破綻しない」と森永さんは言います。「MMTという新しい経済理論があります。昨年から注目されている『新しい貨幣の考え方』です。Modern Monetary Theoryの略で、日本語にすると現代貨幣理論と言います。この考えを用いれば、経済破綻は起き得ません」

MMTはどういうことかを簡単に説明します。日本のお金を発行しているのは日本銀行ですよね。そして日本銀行は、日本政府の子会社のようなものです。だから緊急事態になれば、日本政府はいつでもお金を刷る命令を出すことができる。これがMMTの概略です。

逆にユーロ圏の国々は、自国で勝手に通貨を発行できないので、ギリシャのように破綻してしまうんです。MMTについては次回しっかりと解説したいと思います。

そして、もうひとつの破綻しない理由が、国債の金利を見ればわかると言います。

「ギリシャが財政破綻したあとに、ギリシャ国債の金利が最大40パーセントほどになりました。100万円の借金に対して、40万円の利子がついていた計算。ところが、日本とドイツはいま、国債の金利がゼロなんです

考えてみてください。1300兆円という莫大な借金がありながら金利がゼロなんです。普通に考えれば、そんな借金まみれの国にお金なんて貸したくないですし、貸すとしても信用ができないから高い利子をつけるはずです。ここからわかるのは「日本はいざとなれば金が刷れるし、破綻しない」と他国から見られているということなんです。

コロナ税を払う若いひとたち。

財源は国債(借金)だということを解説しましたが、次はそれをどう支払っていくかについてです。

「東日本大震災のあと、復興特別所得税というものが設立されました。みなさんも、所得税が2.1パーセント上乗せされて、復興税として納めています。2013年からはじまっていて2037年まで続く予定です。なのでコロナのあとも、コロナ税という形で、復興税と同じことをやってくる可能性は十分ありますね」

月収30万円(ボーナスなし、単身)のひとが月に支払う復興税は約180円。年間で2,160円で、それを24年払うことになるので約5万円を納付する計算です。コロナ税が導入されたとしたら、最大6パーセントが上乗せられ徴収されるのではないかと森永さんは予想しています。そうするとコロナ税の納付額は年間6,000円。仮に20年続くとすると12万円です。給付される10万円よりも多い計算になります。

復興税もそうですが、あくまで所得税から差し引かれるので、大部分の年金暮らしのひとたちは払わなくていいことになっています。なので、いちばん支払い額が多いのは若者ということになるわけです。

「それはあくまでも財務省の考え方で、先ほどのMMTの理論で考えれば、将来の増税はまったく不要だと私は考えています。あと、かすかな希望を抱いているのは、今回安倍首相は、財務省が反対していたにも関わらず、その意見をおさえこんで一律10万円給付に変えたんです。国民の怒りが届いたからか、なにか弱みを握られたのか。とにかく今回はちょっと意地を見せたので、次の選挙で安倍首相は消費税凍結を掲げて戦う可能性が少しでてきたと思っています。そうすれば自民党が圧勝できますからね」

アフターコロナの世界はどうなる?

マスクはいまでも品薄が続いています。観光地はどこも閑散としています。それは、製造のほとんどを中国に頼っていたからだし、海外の観光客に頼っていた証です。

そうしたことから、コロナ前と後では、人々の生活スタイルも変わっていくと森永さんは言います。

「ベルリンの壁が崩壊してからいままで、グローバル資本主義が世界を席巻してきました。働いて金を稼ぐんじゃなくて、金を動かして金を稼ぐひとが大儲けをする仕組みです。そこが今回一気にストップしました。大損したひともたくさんいましたよね。なのでまた、真面目に働いて金を稼ぐ時代がくるんじゃないかと思っています。あと、都市の一極集中も緩和されるんじゃないかと見ています。結局、東京の基本的な経済構造って、ものすごい富裕層がいて、その10倍や20倍もの召使いがいる状態です。家賃も高いですしね。そうしたことがおかしいぞって気づくひとたちは既に増えていて、ふるさと回帰支援センターの問い合わせが激増しているんです。いままでのあらゆるトレンドが大逆転するでしょうね」

都市部には仕事もモノもなんでもあります。しかし今回のコロナ騒動で、都市がいかに災害に弱い場所かも身にしみて感じたはずです。これまでも地方は注目されていましたが、その流れが一気に加速していきそうです。

そして、ここまでのコロナ騒動で学んだのは声を上げる大切さです。声を上げていなければ、現金の給付なんかじゃなくて和牛券だったかもしれません。ひとりにつき10万円の給付もなかったでしょう。平時よりも多くのひとが政治に興味を持って、政治家の発言に耳を傾けていたから実現したことです。これからも関心を持ち続け、間違っていると思えば声を上げることが、コロナ収束後の世界をよりよくしていくために必要なことかもしれません。

森永卓郎

1957年生まれ。経済アナリスト。日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局等を経て、1991年から(株)三和総合研究所(現:三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング)の主席研究員を経て、現在は獨協大学教授。