エディットですよね。クリエーションじゃなくて。
ー 改めて、おふたりがお互いのものづくりに対してどんな印象をお持ちか聞きたいのですが、今野さんは〈….リサーチ〉についてどんなことを思っていますか?
今野:学生の頃から着ていたブランドで、すごく思い入れも強いです。印象的だったのが、ハンティングジャケットだけを集めて1冊の赤い本をつくられてましたよね。いまでもそれを手に取るくらい、さまざまな発見にあふれていて。本当に奥行きのあるヴィンテージのコレクションをお持ちなんだなと。これだけ古着に精通して真摯にものづくりしているのは、ぼくの知る限りでは小林さんと〈N.ハリウッド〉の尾花くんくらいじゃないかなと思います。ふたりともベクトルがちがって、小林さんはひとつ対象を決めたらとことんそれを深く掘り下げていらっしゃる印象です。

今野:小林さんのやられていることは、自分の目指すスタイルでもあって。服に限らずむかしのものはすごくいいものが多いので、それを知らないとよりよい服はつくれないというのがセオリーとしてあると思うんです。そうしたことも含めて、ぼくにとっての正しい姿勢を見せてくれるブランドですね。
小林:ぼくはもともと靴屋だから、プロとしての教育を受けたのは靴だけなんですよ。服はまったく知らないではじめちゃったから、実際にモノを買ってきて、サイズ違いや、なんなら洗ったものとデッドストックも集めて比較してみて、それをバラしてみないとなにもわからない。最終的にはパタンナーの人たちが解説者になってくれて、ようやく服の構造について知ることができるという感じなんです。できれば初期のものから中期のものとかも集めたりして…それはつまり、変遷がわかるものを買って比べてってことなんだけど、そうなふうに集めたものを自分でつくる服のフッテージにしていく作業しかやりようがなかったんです。フッテージはそのままにしておくと自分の手元にしか残らないから、あえて印刷物にしてお客さんにもわかってもらう、っていう。一緒になって見ることができるっていうのが嬉しいんですね。
ー ブランド名にもそれが表れてますね。
小林:そうそう、“リサーチ”ですから。それがついているのは、ぼくがひとえにプロじゃないからっていう(笑)。なにをはじめるにしても、まずはリサーチしないとはじまらない。
今野:ぼくは小林さんがつくられた厚手の靴下にものすごく感動したのを覚えてます。そのクオリティーがよすぎて、自分のブランドで厚手の靴下はつくれなかったです。

小林:子供のときに履いていたソックスがしばらくすると外側にロールしちゃって、それがすごくイヤだったんですよ。だからなにがなんでもそうならないようなつくりを目指したんだよね。うちでつくってるTシャツも、ぼくはその上からボタンダウンのシャツを着るんだけど、第二ボタンの位置がどれだけ高いところにあっても首元からネックがのぞくTシャツが欲しかった。洗濯し続けてもハンガーにかけても首回りが伸びないやつね。ファッションとはちょっとちがうポイントで落とし前をつけたかったっていうか。
ー 小林さんは〈ネクサスセブン〉に対してどんな印象をお持ちですか?
小林:今野くんのところは長いですよね。〈ネクサスセブン〉っていう名前はよくみかけていたんですが、実際に袖を通したことはな未だないです。沖嶋くんから今野くんが来るっていう話をもらったときに、慌てて(笑)。いろんな人に聞いたら、古着のマスターだってみんな話してて。すごい溜め込んで調べたりしてるんだろうなと思ったら大当たりだった!
ぼくの場合はタッチ・ザ・フューチャーみたいな感じで服の世界に入ったんですけど、今野くんは古着の縫製だとか、いまだと再現できないような部分にまでどんどん入っていっている。生地や人とコネクトしてどんどん掘り続けてゆくっていく感じが今野くんはするんだけど、ぼくの場合はなにかの欲求が満足するとそこから先はもう掘らないからね(笑)。今野くんをヴィンテージ通とすれば、自分はただの古物好きものって感じですかね。わかったようなことばかり言ってるヤツって具合かな?(笑)。でも、そんな違いもおもしろいのかもね。

ー いろんなアプローチがあるということですね。
小林:そうですね。今回こうして声をかけてもらってすごく楽しかった。〈ジェネラルリサーチ〉のとき、釣りのポケットを沢山つけたショーツを出したんだけど、釣りのベストからポケットを全部はずして、それをどの位置につけるかっていうのを両面テープ使いながらやってたことがあるんです。こういった切って貼っての作業は、服の教育を受けた人からすれば違うんだろうけど、ぼくにとったら本当におもしろいことで、これぞ原初のポイントなんですよ。クリエーションとは全然ちがうんだけど、すごい興奮するし、一方ではすごい集中できる作業だったりもして。
ー すごく自分本意である意味ではあるべき姿ですね。
小林:エディットですよね、クリエーションじゃなくて。やっぱそれが好きなんだと思います。切り貼りのパンクな感じを、もうちょっと収めどころを気にしながらやる感じとでも表現したらよいかな。
今野:ここ最近のコラボレーションって、一緒にものづくりをするというよりも、もともとあるモデルをベースにアレンジをするじゃないですか。だからこうしてゼロに近い状態からスタートして一緒にやっていただけて、本当にぼくも楽しかったです。
小林:飲み屋で飲んでるよりも楽しかったよ(笑)。