“ヘドラ感”を再現するためには、発泡プリント一択でした。
ー 最近の下田さんの活動では、絵本という新しい一面も加わっていますよね。
下田:絵本もやらせてもらってますが、自分で絵本を描いていても、子どもの気持ちがわからなくて。もう子どもに合わせないでいこうと思っているから、絵本作家としてやっていくのはたぶん無理ですね。一番新しい『死んだかいぞく』という絵本は主人公がぶっ殺されるところから始まる(笑)。もともとは20代の頃に描いたものなんです。当時は出版社の人たちに「こんなもの出せるわけねえだろ」と怒られて諦めたんだけど、50歳を過ぎてからやりたいなと思って見せたら、興味を持ってくれて。年をとると怒られないからいいなぁと思いました(笑)。
川上:『死んだかいぞく』の展示、すごく素敵でした。
下田:深海の話だから、展示空間を暗くしてもらって。目が慣れてくると絵が見えてくる。
川上:カーテンが閉まった暗い空間だからこそ、海の青がよりキレイに感じました。

取材時に川上さんの私物に即興で描かれたアートワーク。
ー 『死んだかいぞく』の表紙にガイコツが描かれていますけど、今回のコラボアイテムにもガイコツのモチーフが使われていますよね。
下田:昔から妙に骨が好きなんですよ。そこのガラス棚に飾ってあるガイコツのフィギュアも、子どもの頃に買ったものばかりなんだよね。主役よりも敵が多いってすごくない?

川上:悪役に惹かれるものがあるんですかね。
下田:なんでだろう。一番大事にしているヘドラ(注:特撮映画『ゴジラ対ヘドラ』などに登場する架空の怪獣。別名「公害怪獣」。)は何回も再販されているんだけど、ぼくが持っている最初のやつは値段が相当上がっているらしいよ。配色がかっこいいんだよね。
ー 川上さんは今回のコラボにあたって、下田さんに何かリクエストを伝えたんですか?
川上:ブランド名はどうしても描いてほしかったんです。いま下田さんが着ているTシャツのロゴがそれなんですけど、すごくかっこよくないですか。この溶けている感じを出すために、シルクスクリーンではなく発泡プリントにしたんですよ。

ー この生々しさにはヘドラを感じますね。
下田:ほんとだ(笑)。ぼくは洋服のことをあまりわかっていないので、川上くんにいろいろと教えてもらって。お茶を飲みに行ったときに目の前でノートに落書きしたんだよね。ぼくは褒められると弱いの。似顔絵も褒めてくれるから嬉しくなって描きたくなる。
