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ウルフズヘッドと福禄寿。コラボレーションを通じて感じ取る、実店舗でモノを買うべき理由。
WOLF’S HEAD × FUKUROKUJU

ウルフズヘッドと福禄寿。コラボレーションを通じて感じ取る、実店舗でモノを買うべき理由。

インターネット全盛の現代では、必要な情報もモノもすぐにスマホ経由で手に入る。そんな時代に逆行するかのように、あくまで実店舗での接客と販売にこだわっている人たちがいます。緻密でオリジナリティ溢れるスタッズワークで知られる〈ウルフズヘッド(WOLF'S HEAD)〉の幹田卓司氏と、ブーツに特化したリペアショップ「福禄寿」の奥山武氏です。そんなふたりがタッグを組んで完成した〈ウルフズヘッド〉×〈キーストーン〉のスタッズバイカーブーツは約半年〜1年という納期に加えて浅草の「福禄寿」まで足を運んでオーダーする必要があるにも関わらず、既に予約が殺到しているそう。そんなブーツフリーク垂涎の1足が出来上がる舞台裏について語って頂きました。

“ブーツ”と“バイク”と“ヴィンテージ”という、共通の価値観のもとで作られたコラボレーション。

ー 奥山さんが10年以上かけて修正に修正を重ねて〈キーストーン〉のブーツを作ったことを考えると、きっとコラボも難産だろうと推測していたのですが、トントン拍子で完成に至ったのも意外でした。

幹田: やはり根本的に好きなものが一緒だからじゃないですかね。スタッズのデザインを考えるのも凄く楽しかったですよ。最初にブーツを見せてもらって奥山からスタッズを打ってほしいと言われたときに、すぐに完成像がイメージできましたし、結果的にほぼ最初に思った通りの形に仕上がりました。

奥山: ぼくからはヴィンテージにありそうだけど絶対に無い感じにして欲しいとだけリクエストしたんですが、幹田さんはブーツを手にしてすぐに「来た!スタッズのパターンが見えた!」って言ってましたもんね。きっとスタッズとブーツという、お互いにずっと手を動かして作って来た土台があったからこそ、早かったのかもしれません。とは言え、幹田さんには結局2回も茨城のファクトリーまで来てもらいました。

幹田: コラボレーションが決まった時、とにかく盛り上がったので、ぼくから「一度ブーツができる現場を見たい」って奥山に言ったんですよね。本当はぼくが工場に行く必要は無いんだけど、コラボの仕様を決めるときも工場のみんなと一緒にふざけて大笑いしたり、急に真面目にやったりしながら作っていったのが楽しかったですね。そうやって楽しみながら作ることが大事だし、最終的な仕上がりにも反映されるんだと思うんですよ。

奥山: 幹田さんが工場に来たときに遊び半分でインソールに〈ウルフズヘッド〉の焼印をたくさん打ちはじめて、それがすごくカッコよかったから本番のブーツでも採用したり、試しにひとつだけ真鍮とシルバーをコンビづかいでスタッズを打ったらやたらカッコ良かったから採用したり、そうやって遊んでるうちに出来たアイデアも盛り込んでありますもんね。

幹田: でも奥山はまだ納得できない箇所があるようで、スタッズの位置を微調整しています。僕はいまの状態が気に入ってるんだけど、奥山が納得できるまで付き合うつもりです。

奥山: 微調整してほしいって言うかどうか、1週間ぐらい悩みました(笑)。普通は幹田さんぐらい先輩になると「ここを直してほしい」って言っても「知らねぇよ」で終わると思うんですよ。だけど、快く修正を引き受けてもらえたのはありがたい限りです。

幹田: 快くというか、ヴィンテージっぽさを出すために狙いでやってるのも説明したし「なんか文句あんの?」って感じだったけど。この間、奥山から「修正してもらったやつ、すげー良い感じです!!」って電話かかってきて……、お前それだけ言うためにわざわざ電話して来たの、って(笑)

奥山: すげぇ興奮しちゃって、誰かに話したかったんです。もうウチの奥さんですらブーツの話を聞いてくれませんからね(笑)

ー 実際に出来上がったブーツをみて、感想はいかがですか?

奥山: 前後左右のどこから見てもカッコ良いように作られているし、本当に想像以上の出来ですね。ブーツを脱ぐ時に引っかからないようにスタッズの位置も配慮されていたり、バイクに乗った時に反射材代わりになるようにジュエルスタッズの位置も計算されていたり、ヴィンテージも知っていてバイクにも乗る幹田さんにしかできないスタッズワークだと思います。

幹田: 30年代のエンジニアブーツはビスポークに近い作り方だったせいか、ヴァンプが細身でカッコ良いけれど日本人の足に合わなくて履けないものが多いんですが、奥山が作ったキーストーンのエンジニアは30-40年代風のシャープなラストだけど、履き心地は圧倒的に良い。ぼくが自分のブーツをカスタムする時はスタッズをぎっしり打つことが多いのですが、今回はブーツの良さを活かしてシンプルに仕上げています。

奥山: 普通の職人はアッパーから底付けへと上から順番に靴作りを習っていくんですが、自分の場合はソールの修理から靴業界に入ってオリジナルブーツを作りはじめたので習得した順番が全く逆なんです。修理を通じて色々なブランドのブーツの内部構造をみてきて、ずっと「こうやって作れば良いのに」と思っていたアイデアがキーストーンのブーツにはたくさん盛り込んであります。それが履き心地にも反映されているんです。

幹田: 絶対に有り得ないことだけど、仮にヴィンテージのデッドストックでこのブーツがアメリカで見つかったら、2500ドルから3000ドルで取引されてもおかしくないと思いますね。あ、ちょっとすみません…。奥山、ちょっと来てくれる?

対談を中断し、「ウルフズヘッド」に来店したお客さんとともに和やかな雰囲気で3ショット写真を撮る幹田さんと奥山さん。確かにウルフズヘッドは緊張感のあるショップではあるが、ただ単に怖い店というわけでは無いようだ。

幹田: いまのは地方からウチの店に来てくれたお客さんなんだけど、午前中に「福禄寿」に寄ってコラボのブーツを注文してからウチに来てくれたみたい。ウチに来たらまた奥山がいるもんだからビックリしてたよ。

奥山: 「ウルフズヘッド」と「福禄寿」をハシゴしてくれるお客さんはすごく多いですね。業態が全然違うのに、そうやって足を運んでもらえるのは嬉しいです。

幹田: 千駄木と浅草だから近いとはいえ原宿のショップを何軒か回るのと訳が違うし、これも良い形でコラボレーションできた証拠だよね。

ー それにしても、お店を訪れることを目当てに上京するお客さん達がいるのはショップ冥利に尽きますね。

幹田: だけど、ネットが普及する前は古着でも何でも自分の足で探すのが当たり前だったじゃない。どれだけ探しても見つからないから余計に欲しくなるし、見たことないものに出会える価値を感じるから、わざわざアメリカやイギリスまで買い付けに行くわけです。ネットで下調べしただけで知った気になってるのは、正直僕にはまったく理解できないですよ。

奥山: 自分もブーツを売る時は同じ気持ちですし、愛着を持ってちゃんと履いてもらいたいからこそ、最初にサイズを計測する時は来店してもらっています。キーストーンのブーツは価格帯も履き心地もブーツを散々履いてきたベテランはもちろん、今までブーツを履いたことがない若者にも興味を持ってもらえるように作っています。手に取ってもらえれば良さは伝わるので、このブーツをきっかけにネットで買うだけじゃなくてショップを訪れる楽しみを味わってもらえたら嬉しいですね。

Wolf’s Head ×Keystone Studs Biker Boots ¥128,000+TAX
リブテープを使わずにすくい縫いをおこなうことでソールの厚みを減らしつつ返りの良さを圧倒的に向上させる、Keystone Flexible Goodyear製法によって抜群のフィット感を実現したキーストーンバイカーブーツ。ウルフズヘッドとのコラボレーションモデルでは幹田氏がスタッズワークを担当し、アッパーとヴァンプに合わせた5種類のバリエーションをラインナップ。8月1日から受注開始で、納期は約半年〜1年。「福禄寿」にて限定発売。

INFORMATION

福禄寿

電話:03-3871-8262
hukurokuju.com

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