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ウルフズヘッドと福禄寿。コラボレーションを通じて感じ取る、実店舗でモノを買うべき理由。
WOLF’S HEAD × FUKUROKUJU

ウルフズヘッドと福禄寿。コラボレーションを通じて感じ取る、実店舗でモノを買うべき理由。

インターネット全盛の現代では、必要な情報もモノもすぐにスマホ経由で手に入る。そんな時代に逆行するかのように、あくまで実店舗での接客と販売にこだわっている人たちがいます。緻密でオリジナリティ溢れるスタッズワークで知られる〈ウルフズヘッド(WOLF'S HEAD)〉の幹田卓司氏と、ブーツに特化したリペアショップ「福禄寿」の奥山武氏です。そんなふたりがタッグを組んで完成した〈ウルフズヘッド〉×〈キーストーン〉のスタッズバイカーブーツは約半年〜1年という納期に加えて浅草の「福禄寿」まで足を運んでオーダーする必要があるにも関わらず、既に予約が殺到しているそう。そんなブーツフリーク垂涎の1足が出来上がる舞台裏について語って頂きました。

PROFILE

幹田卓司

1969年生まれ、東京都出身。91年に地元の千駄木で「ウルフズヘッド」の前身となる「ダウンタウンロッカーズマート」をオープンし、95年からスタッズ製作を本格始動。オリジナルのスタッズアイテムや珠玉のヴィンテージウェアを取り扱うほか、盟友〈ワコマリア〉や〈GM〉をはじめ〈コム デ ギャルソン〉や〈ラミダス〉、〈ガボール〉とコラボレーションをおこなうなど、スタッズワークの第一人者として精力的に活動をおこなっている。

PROFILE

奥山武

1979年生まれ、三重県出身。修行時代を経て、02年にブーツのリペア&カスタムショップ「福禄寿」をオープン。Made in USAブーツ修理のスペシャリストとして活躍する傍ら、国産ブーツブランドの底付けや海外ブランドの公式リペアにも携わっている。10年以上の構想期間を経て、修理を通じて得たブーツに関する知見を盛り込んだオリジナルブランド〈キーストーン〉を2019年に立ち上げる。

緊張の初対面から約20年を経て、コラボレーションが実現。

千駄木の団子坂のふもとにある路地裏の一角に店を構える「ウルフズヘッド」。決して広くない店内には珠玉のヴィンテージピースが陳列され、オーナーである幹田卓司氏のスタッズ作品をオーダーするために都内のクリエイターや著名人はもとより全国から足を運ぶ人も多い伝説的な名店です。そして、靴製造の本場である浅草・日本堤の路地裏でブーツリペア工房を営む「福禄寿」。代表の奥山武氏はブーツのソール修理を日本で普及させた中心人物でもあり、靴業界で知らなければモグリと言える職人のひとり。

ともにファッションタウンから離れた場所に店を構え、孤高の立ち位置を築いている両者ですが、奥山氏がブーツ修理で蓄えた知見を盛り込んだブーツブランド〈キーストーン〉を立ち上げたことをきっかけに、コラボレーションが実現。20年近く親交を結びつつもまったく別の分野で独自の道を歩んできたふたりですが、コラボレーションとして結実するまでの経緯は一体どんなものだったのでしょうか。

ー まず、おふたりの出会いから教えてもらえますか?

奥山: 幹田さんは共通の友人を介して知り合ったと思ってるかもしれませんが、実は「福禄寿」を立ち上げる前の2000年頃に、友達と一緒に千駄木の「ウルフズヘッド」に行ったことがあるんです。

幹田: マジで? ちゃんと店に入れた?(笑)

奥山: なんで客として来てるのにすっげー睨まれてるんだろうって(笑)。友達がスタッズのリストバンドを欲しがってたので一緒に見に行ったんですが、緊張し過ぎて結局何も買わずに帰りましたね。

幹田: 基本的にぼくはずっとカウンターでスタッズのパターンを考えたり作業をしているので、集中してる時に接客しなきゃいけないと面倒臭いんですよ。別に喧嘩売ってるつもりはないけど「なに?なんか用?」ってなっちゃうんです。だからと言って誰か別の人に接客を任せるわけにもいかないし。

ー きっと「ウルフズヘッド」に来るお客さんは幹田さんのキャラクターを理解しているし、その緊張感も含めて買い物を楽しんでいるんですよね。

幹田: そういう人しか来ないですよね。大体みんな店に入る前にノックしますから。ぼくらが若者だった80年代頃は古着屋でも怖いショップがいっぱいあって、接客は怖いけどやっぱりあそこで買いたいんだよなぁ、ってことがあったじゃないですか。

奥山: いっぱいありましたね。バイク屋も凄かったですよね。店に入っても1時間ぐらい何も喋ってくれないとか当たり前で。

幹田: 1時間ずっと居たの? 店の人も逆に迷惑だったでしょ(笑)

奥山: 息もいつすりゃ良いのか分かんない状態で、じっと話しかけられるまで待ったりして。帰っていいのかもわかんないし(笑)。それにめげずに何回も通って、やっと話しかけてもらえてすげぇ嬉しかったり。いまはもう、そういうお店も無くなっちゃいましたけど。

幹田: バイク屋もずっと作業をしてるから、きっと客が来ても「何? いま忙しいんだけど」って感じになっちゃうんだよ。ウチは狙ってやってるわけじゃなくて自然とそうなっただけなんだけど、そういうお店は少なくなったね。

ー 「福禄寿」も実店舗を訪れて足のサイズを測らないとブーツを買えないところは「ウルフズヘッド」と一緒ですが、かなりユルい雰囲気ですよね。

幹田: 「福禄寿」はアットホームで良いよね。ぼくの場合は「忙しいんだよ」って言っちゃうけど、奥山はどんなに忙しくてもキチンと接客するから。またそれがハマっちゃって長引いたりするんだよ。

奥山: 説明しているうちに、逆に自分がノッてきちゃったりしますからね(笑)

ー ある意味でキャラクターが正反対のおふたりがコラボしたのは、意外なようにも思います。

奥山: 実は最初にお店に行った後で、あらためて知人を介して幹田さんを紹介してもらったときに「いつかオリジナルブーツを作ったらスタッズを打ってください」って言っていたんです。

幹田: まったく憶えてない…。その頃はブーツのリペアで奥山の仕事ぶりも知ってたし、コイツならいつか絶対に良いブーツを作るだろうって思ってたでしょうね。それに、コラボするために無理やりブーツを作ったんじゃなくて、10年以上かけて奥山が自分で納得できるブーツを完成させた時に自然な流れでコラボできたのも良いですね。

奥山: 自分もブーツがちゃんと完成するまで、幹田さんに見せられなかったですからね。たぶん途中経過を見せていたら「ココがダメだね」って指摘されていたと思います。

INFORMATION

福禄寿

電話:03-3871-8262
hukurokuju.com

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