PROFILE
1989年生まれのトラックメイカー/MPCプレイヤー。2016年4月、縁のあるアーティストをゲストに迎えて制作した1stアルバム『Pushin’』を発表し、ロングセールスを記録。また2018年9月には、国内外のアーティストをゲストに迎えて制作した2ndアルバム『Eutopia』をリリース。自身の作品の制作と並行して、他アーティストのプロデュースやコラボレーション、CM楽曲の制作等をおこなっている。
stutsbeats.com/
PROFILE
1990年生まれ神戸出身。中学時代から音楽活動を開始し、高校3年生の時に国内最大のテクノイベント「WIRE」に史上最年少で出演。 その後「水星feat.オノマトペ大臣」がiTunes Storeシングル総合チャートで1位を獲得。メジャーデビュー以降は、森高千里、の子(神聖かまってちゃん)、藤井隆らとのコラボレーションや、映画『寝ても覚めても』の主題歌・劇伴を担当するなど活躍の場を広げている。2020年は、3月にデジタルミニアルバム『TBEP』をリリースした。
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今回はすごくパーソナルな作品になった。(STUTS)
ー STUTSさんのミニアルバム『Contrast』がめでたく発売となりました。今回の対談相手としてSTUTSさんから名前が挙がったのがtofubeatsさんだったのですが、なぜでしょうか?
STUTS: トラックメイカーとして活動されていて、なおかつご自身で歌も歌われているじゃないですか。トラックの制作からボーカル、そしてマスタリングまでひとりでやられていて、そのスタンスをシンプルにリスペクトしているので、今回一緒にお話をしたいなと思ったんです。
tofubeats: そんな、褒めるのやめてくださいよ(笑)。
ー おふたりはそもそもお知り合いなんですか?
tofubeats:
ちょいちょい現場では会ったりしてたんですけど、昨年VaVaちゃんの『Biscuit』という曲のPV撮影で一緒になって、待ち時間とかにけっこう喋ったりして。その流れで家に行ったりとかさせてもらったりしましたね。
STUTSさんの音楽はむかしから知っていて。トラックメイカーというよりも“ミュージシャン”っていう印象なんですよね。ぼくは生っぽさというのにあまりこだわりがないんですけど、STUTSさんにはそれがあるというか。たとえばトラックメイカーとしてJ Dillaとかものすごく好きなんですけど、自分はあんな風にできないっていうのがあって。でもSTUTSさんにはそういうバイブスを感じるんです。
もともとMPCプレイヤーとして活動をスタートして、いまではいろんな楽器操ってるのがすごいなって。ぼくと同じトラックメイカーとして見られることが多いと思うんですけど、似ているようでお互い全然ちがうっていうのがおもしろいですよね。
STUTS: わぁ、うれしいです。ありがとうございます。
ー たしかにおふたりは同じトラックメイカーですけど、楽曲の毛色が全然ちがいますよね。でも、一方では共通点などを感じたりしますか?
tofubeats: 『Contrast』ではミックスまで全部やった曲もあるんですよね? そういう意味では共通点はあるかもしれません。
STUTS: そうですね。僕もミックスは基本的に自分でやることが多いのですが、ボーカルは今回初めてなので。tofuさんにはボーカルからマスタリングまで、一人で全部完結していてすごいなぁという思いがあります(笑)。
ー 本来なら、トラックメイカーおよびプロデューサーとしての役割はトラックをつくって、そこに適切なヴォーカリストやラッパーをフィーチャリングして、マスタリングエンジニアに音質を調整してもらうというのが一般的ですよね。でも、おふたりともそれをすべて自分でおこなっていると。
tofubeats: 結果的に全部自分でやるようになったという感じですけどね。
STUTS: そうですよね、わかります。ひとりで全部やりたいという気持ちがどんどん高まっていった感じです。tofuさんはファーストアルバムとセカンドアルバムを経て『FANTASY CLUB』でそうした気持ちの比重が重くなっていったのかなと、ぼくなりに勝手に解釈をしていて。そうした心の動きに勝手に共感してたんです。表向きはトラックメイカーなんだけど、ヴォーカルをやったり、マスタリングをやるようになって、その枠からはみだしてしまったというか。
ー 「ひとりで全部やりたくなってきた」という“心の動き”とは、具体的にどういうことなんでしょうか?
STUTS: すごく言い方が難しいんですけど、人の作品に参加する時は、自分の「こうしたい」って願望をいい具合に抑えて制作することができるんですが、自分の作品をつうるときはどうしてもそこが抑えきれなくて、特にフィーチャリングの方を呼ぶとそこのバランスを取るのが難しくなるんです。
tofubeats: そうですよね、めちゃくちゃわかります。自分の曲をつくっていると、自分のこだわりみたいなのが高まってきちゃって、他人と意見をすり合わせながら製作することがめんどくさくなるというか(笑)。コミュニケーションを取りきれなくなったりするんです。それで崩れるくらいなら、下手でもいいからとことん自分で納得のいくまでやったほうがいいかなって。でも自分は歌が下手だから、やっぱり人に頼んだほうがいいかなっていう葛藤もあったりはします(笑)。
STUTS: ぼくの場合、フィーチャリングでつくりたい曲もたくさんあるんですけど、そうじゃない曲も発表してみたいなという思いは昔からあって。でも最初から自分ひとりでつくろうしたという感じよりはつくっていくうちにそうなってしまったというのが正しいかもしれません。セカンドアルバムの『Eutopia』をだしたあとに、「次はこういう作品にしよう」と思い描いていたものとはちがうものになっていて。それが自分でコントロールできなくなってきたところはありますね。
tofubeats: 今作を聴かせてもらって、すごく驚いたんですよ。1月のワンマンライブに遊びに行かせてもらって、バンド編成でSTUTSさんもシンセを演奏されてましたよね。だから次はバンドのアルバムになるのかなと思って聴いたら、全然ちがくて。すごくパーソナルな作品だなって思ったんです。時期的なものももしかしたらあるのかもしれませんが。
STUTS: 曲自体はコロナで大騒ぎになる前からできてたんです。でも、それを作り込んでいく過程はまさに世間的にもそういう状況になっていたので、ある程度は時期的なものも反映されているかもしれません。ぼく自身も今回はすごくパーソナルなものになったなと思ってます。
ー 1月のワンマンライブはバンド編成でやられていましたね。そうした経験は今回の作品づくりに活かされていますか?
STUTS: そうですね。4、5曲目の「CONTRAST, Pt.1」と「CONTRAST, Pt.2」はそのときのライブの音源を素材として使っています。
tofubeats: そのつくりかた、おもしろいですよね。これまでの作品とちょっと違う雰囲気があるのには、この曲も一役買っているような気がします。
STUTS: そうですね。こうしたやり方ってこれまでになかったような気がして。ライブの熱量を伝えられたらと思ったんです。
tofubeats: 今回の作品はSTUTSさんらしさが全面にでているというか、とくに自分で歌っている曲があるじゃないですか。これはもう個人の好き嫌いの話になっちゃいますけど、自分で全部やっている曲ってめっちゃ好きなんです(笑)。
STUTS: ありがとうございます(笑)。
tofubeats:
ここ2年くらい自分の中で考えていることがあって。ポップスというのは、人がたくさん関わることによって強くなると思うんです。たとえばひとつのプロジェクトにいろんな人が関わって意見をだし合えば、そりゃ多くの人に好まれる作品ができあがると思うんですよ。一方で、ひとりで全部やるとなると超絶リスキー。でも、そっちのほうがパーソナルでおもしろい作品ができあがるんですよね。
ぼく自身はやっぱり後者のほうが好きなんですよ。なんかレッドブルが主催する大会で、オリジナルの乗り物に乗って、スピードとか乗り物の創造性とかを競うコンテンストあるじゃないですか。新幹線みたいにいろんな人が知恵を絞りだしてつくった超ハイテクな乗り物よりも、レッドブルの大会みたいに誰かが超個人的につくったおもしろい乗り物のほうが惹かれるみたいな(笑)。
今回、「Vapor」っていう曲でSTUTSさんラップしてるじゃないですか。あれをライブで聴いたときに「おぉぉ!」って思ったんです。まさにパーソナルな曲だと思うし、あの曲が入っていることによって、他の曲も聴こえ方が変わってくると思うんですよ。